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→5.部活のない日

「ねえ、お姉ちゃん」
「なあに?」
「九能先輩って、剣道部がない日は何をしているの?」

別に、先輩の事がどうとか、知ったところで何があるとか、そういうのはなにもない。
でも、以前からどうしても気になっていた事だった。
だからあたしは、部屋で雑誌を読んでいたお姉ちゃんの元に出かけそんな質問をしてみた。
お姉ちゃんならば、他の誰よりも九能先輩の事を知っていそうな…そんな気がするものあってだけれど。
…人格には多少問題はあるけれど、先輩はお姉ちゃん達の学年ではかなりの成績優秀者。
それでいて剣道部の主将でもあるのに、これといって塾に通っているわけでもない。
大金持ちの九能家だから、家庭教師でも雇っているのか…とも考えたけど、あの家に長く勤めることのできる人格者がそうそう見つかるわけもないし。
スポーツは剣道以外とくと興味は無いみたいだし、先輩の私生活って実は謎だらけよね…。

「先輩は勉強ができるみたいだし、図書館とかで本でも読んでいるのかなあ?」
あたしは、あれこれと自分が考えていたことをお姉ちゃんに聞かせてみる。
すると、
「…知らないほうがいいと思うけど」
お姉ちゃんは、そんな興味深い発言をしながら、それまで読んでいた雑誌をパタンと閉じた。
「ど、どうして!?お姉ちゃん、何か知ってるの!?」
あたしが色めきたってお姉ちゃんに尋ねるも、
「あかね、世の中には知らないことがいいこともあるのよ」
「どういうこと?」
「そういうことよ」
お姉ちゃんはそれ以上はあたしには語らず、不気味な笑みを浮かべたまま、あたしを部屋から追い出してしまった。
「…」
…気になる。
あんな風に中途半端にはぐらかされたら、余計に気になって仕方がないじゃない。
先輩は、
九能先輩は一体何をしているって言うの…?
世の中には知らなくてもいいことって…一体何!?
「…」
まさか、人に言えないような闇家業を…!?
はっ、まさか通り魔とか!?ううん、明るく考えれば、実はもう一つ別の顔を持っていて、二重生活を送っているとか…

「…乱馬、相談があるの」
あたしは、ありとあらゆることを考えながら、自分の部屋へと戻った。
そして、あたしの部屋で一人勝手にくつろいでいた乱馬の側に腰を下ろし、真剣な表情で彼に相談をしてみた。
「どうした?子どもでも出来たのか?」
乱馬も、最初は笑顔でそんなことをあたしに返してきたけれど、
「九能先輩の事なの」
「先輩がどうしたんだよ。まさか、何かされたのか!?」
「あたし…先輩が何をしているか、気になって仕方がないの」
「な、なんでっ」
「何でって…気になるのよ。先輩の事が知りたくて仕方がないの」
あたしがため息をつきながら乱馬にそう迫ると、
「…浮気か?」
「え?」
「心変わりかっ俺は許さねえぞっ…いいか、それは間違いなく一時の気の迷いだ!」
乱馬はあたしの質問には全く答えずに、妙に取り乱しながらあたしに抱き付いてきた。
「浮気って何のことよ。あたしはただ、先輩のことがもっと知りたくて…」
「知ったところで何の必要があるんだよっ」
「何の必要って…だから、先輩の隠された日常に興味があって…」
あたしは必死に乱馬に説明するも、乱馬にはとうていあたしの考えが伝わらないらしく、
「何で九能なんかに移り気をっ…俺に不満か!?何が不満だ!は、そうか足りないんだな!?物足りないのかまだー!」
…とかなんとか言いながら、その夜はちゃっかりとあたしに抱きついて眠っていた。
どうやらこのことに関して、乱馬に相談をするのは無理のようだ。
結局あたしは、なびきお姉ちゃんからも情報を得られず、乱馬にもアイデアを貰えず、そして自分でも究明できぬまま、九能先輩の事はいつまでも謎と、考えるしかなかった。
そんなあたしは、

「ばかねー、あかねも。九能ちゃんが部活のない日にすることなんて決まってるじゃないの」
あんたと女らんまくんの写真収拾のために、あたしにまとわり付いていることくらいだわ。
一歩間違えばあんた達のストーカーみたいな行為なのに、そんなの知ってしまったらあんただって、何か嫌な気分でしょ?
妹の気持ちまで考えてあげるなんて、
「あたしって、本当に優しいお姉さんだわ」
…自分のしていることを棚に上げておいておき、
なびきお姉ちゃんが自分の部屋で、そんなことを言いながら自画自賛していたことなど、勿論知るよしもない。

 

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