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→2.王様

「ねえ、乱馬」
「ん?」
「なんか、ゲームでもしない?」


いつものように、あたしの部屋に勝手にやってきてはくつろいでいる乱馬。
しばらくはお互い好きな事をしていたけれど、やっぱり同じ部屋の中にいてそれぞれが別の事をやっているなんて、妙な感じだし勿体無い。
あたしはやっていた宿題が終わった事も手伝って、ベッドの上でコミックを読んでいた乱馬へとそう提案した。
「ゲームって?あ、例えばお医者さんごっことか?」
「それはゲームじゃないでしょ!」
ゴツン!
あたしは嬉しそうな顔をしている乱馬の頭をゲンコツで殴りつつ、
「そうじゃなくて、何かゲームとかしよう?」
「ゲーム…あ、いいのあるぜ?」
「何よ」
「ちょっと待ってろ」
乱馬はにっと笑いながらあたしを制止すると、その辺に転がっていたペンと紙を使って何やら作り始めた。
「?」
一体何をしているのだろう。
あたしが首をかしげていると、
「できた!さ、あかねどれか引いてみ?」
「え?これ?」
「そ」
乱馬があたしに背を向けて何かを作り始めてから、かれこれ三分ほどだっただろうか。
ようやく作業を終えた乱馬がそういって、あたしになにやら紙で作った「くじ」のようなものを差し出した。
「…」
意味も分からないままあたしがそのくじを引くと、
「三…?何、この数字」
あたしが引いた紙には、数字の三が書かれていた。それ以外には何も記されていない。
ますます意味が分からずにあたしが首をかしげていると、
「じゃあ次、俺な。お?ああ、俺は王様だ」
乱馬はあたしの質問には答えないまま、自分も自分で作ったくじを引いてそんなことを叫んだ。
そして、作った他のくじをベッドの枕の下へと隠してしまった。
「王様?」
王様って何よ。あたしが乱馬にそう質問すると、
「何って、ゲームしたいんだろ?」
「そうだけど…」
「だから、今かゲーム開始な。王様ゲームのスタート」
乱馬は妙に嬉しそうな顔をしながらそう言って、えへへ…と笑った。
「はあ?」
…王様ゲームって、あの良くテレビで見かける「合コン」とかでやる、ゲームでしょ?
何人かでやるゲームで、くじの中に混じった「王様」のくじを引いた人が、他の人に命令をして、命令された人はその指示に従わなくちゃいけないって、あれでしょ?
王様の命令は「絶対」というのがルールだから、
「抱き合え」とか「キスしろ」とか…コンパなんかでは盛り上がる為にも登用されているようなゲームだ。
何が悲しくて、そんなゲームを二人きりでやら無くてはいけないんだろう?
ていうか、なんで二人しかいないのに「三」なんて札があるんろう?そこからしておかしい気もする。
「ちょっと待ちなさいよ!あれは大勢でやるゲームでしょうが。二人っきりでやったってしょうがないでしょ!」
あたしは乱馬にそう忠告するも、
「これも一応ゲームだろ?他に思いつかないし、二人でやってみたら面白いかもしれないだろ?とりあえずやってみようぜ。あ、俺王様だから」
乱馬はその一点張りで、あたしの話など聞く耳持たない。
「もー…」
ゲームをやろうと言い出したのはあたしだし、乱馬もわざわざくじまで作って遊ぼうとしているのだから、一回位付き合ってやるべきなのだろうか。
あたしはしぶしぶと乱馬の提案を、飲んだ。
すると。
「じゃあ、さっそく命令な?初めに確認するけど、王様の命令は絶対だから。いいな?」
乱馬は、あたしに一応のルール確認をする。
「分かってるわよ、そんなの」
あたしがそれに答えると、
「よーし。じゃあ、命令な」
乱馬はそんなあたしに対し、なぜかにやりと笑って見せると、
「三番がー…」
「三番が?」
「王様に思いっきり甘えながらキスをねだる」
と、あたしにそう命令を下した。
「なっ…何よそれ!そんなの嫌よ!」
勿論あたしがそれを拒否しようとすると、
「さっきルール確認しただろ?王様の命令は絶対なの。ほら、早く」
「くっ…あんた初めからそのつもりだったんでしょ!」
「そんなことねえよ。さ、ほら、ここ。ここに来て。な」
乱馬はにっと笑いながらそう言うと、壁際に背をつくように腰かけた。
そして、渋るあたしの手を引っ張り、側に引き寄せる。
「うー…」
…きっとここで、「ゲームなんてやめた」なんて言った所で聞く男じゃないことくらい、あたしだって良くわかる。
あたしはそっとため息をつきつつ、
「うー…一回でいいんだよね」
「俺は何回でも構わないけど」
「一回ね」
座っている乱馬の胸に、そっとしなだれかかった。でも、
「…」
キスをねだれ、なんて命令をされたところで、「チューして、チュー」…なんて、あたしの口からは照れてしまって言う事は出来ない。
「乱馬、あの…」
「何?」
「あの、あのね…」
楽しそうな表情をしてあたしの次の台詞を待っている乱馬と、どうしても「キスをして」とはねだれない、あたし。
「なんだよ、何か言いたいんだろ?」
「…だから、その…」
乱馬はあたしの頭をゆっくりと撫でながら、意地悪くそんな風にせかすも、あたしは時間が経てば経つほど照れてしまって、顔から耳から真っ赤にするばかりだ。
その内、
「…言えない」
どうしても「キスして」と言えないあたしは、顔を真っ赤にしたまま、とうとう首を左右に振った。
そして「王様の命令には従えない」と、しなだれかかったその乱馬の胸へと手を回して顔をくっつけてしまった。
すると。
「きゃっ…」
その胸にくっつけていたあたしの顔を鼻と顎を使って一瞬、自分の胸から引き剥がすと、乱馬は無防備だったあたしの唇に素早くちゅっ…とキスをしてしまった。
「な、何よー…。まだねだってないのに」
いきなりキスされたことと、先ほど異常なまでに照れていたことを思い出したあたしが、小さな声で乱馬にそう言うと、
「だって仕方ないだろ。あんな風な態度取られたら、ねだったと思われてもなあ」
乱馬はそう言って、くっついているあたしの身体にそっと腕を回し、
「そうかそうか、そんなに俺となあ。よし、ヨキニハカラエ」
偉そうに、どこで覚えたのか分からないそんな言葉を呟きながら、チュ、チュ…と真っ赤のままのあたしの顔に、何度何度もキスをし始めた。
「ちょっと!一回だけって言ったでしょ!」
あたしが慌てて乱馬から離れようとするも、
「だからー、あかねから俺に迫るのは一回だけって言ったけど、俺からキスするのは一回だけなんて言った覚えはねえ」
「は!」
「いやー、据え膳は食うためにあるもんだぜ」
しっかりとあたしの身体を捕まえた乱馬は、そんなことを言ってそのままそれを続ける。
結局あたしは、据えた覚えの無い「膳」を乱馬に食われる羽目になった。
そんなあたしは、
「…」
乱馬に抱き締められて押し倒されたベッドの上、枕の下からはみ出していた、先ほど乱馬が隠したくじを目にし、
「…」
…そういえば、乱馬はあたしにくじを引かせてその後に自分も引いたけれど、そのくじ、あたしに見せないまま他のくじを隠してしまったっけ。
その理由がようやく判明。
あたしが枕からはみ出したくじを見てみると、それには全て「三」と書かれていた。
乱馬の奴、初めから「三」と書かれた記事しか準備していなかったようだ。何で「三」にしたかは良くわからないんだけど。
あたしにばれないようにくじを隠してしまえば、自分が「王様」だといっても分からないわけだし。
全くこの男、呆れるほどの策士だ。
「ずるい奴」
あたしが、あたしを押し倒すように抱きついて服に手をかけている乱馬の、耳元でそう囁きながら軽く噛み付いてやると、
「へへ…またやろうな」
「嫌よ」
「したいくせに」
乱馬は「いて」と顔をしかめつつも、そんなことを言いながら笑っていた。
「…」
こりゃだめだ。あたしは心の中でそっとため息をつきつつ、観念して、上にのしかかって退こうとしない乱馬の身体へとそっと腕を回したのだった。

 

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