クレオパトラ。
正式には、クレオパトラ七世。古代プトレマイオス朝エジプト最後の女王で、楊貴妃・小野小町とともに「世界三大美女」としても有名である。
かの有名なユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)の愛人でもあり、カエサル死後はその部下・アントニウスと結婚する。
そしてそれとは別に、王位を守っていく為に実弟と結婚もしていたという彼女。
自らを毒蛇の牙にかけて自害するまでのその生涯は、いつも波乱に満ち溢れていた。
「もしクレオパトラの鼻が1cm低かったら、歴史は変わっていた」
そのあまりの美しさゆえにこのような名言も生まれたことは、二千年以上経った現在でも、有名な話である…。
「ねえッ。ねえ、乱馬。クレオパトラの鼻があと一センチ高かったら、どんな感じで世界は変わっていたと思う?」
…夕食後に見ていた歴史番組の影響か、テレビを見終わってあかねの部屋に遊びに行った俺に向って、あかねがいきなりそんなことを切り出した。
「別にどーにも変らないんじゃねえか?」
また、訳のわからない事を…と、俺が特に興味も示さずさらりとそう答えると、
「何言ってんのよ。クレオパトラの鼻があと一センチ高かった、歴史が変わってた…って有名な話なのよ。乱馬、そんな事も知らないの!?」
あかねはそういって、得意げな口調で言った。
「よく言うぜ。お前だってさっきテレビで見てて初めて知ったんだろ?」
だけど、俺がそんなあかねにニヤッと笑いかけながらそう突っ込んでやると、
「そ、そんな事ないわよッ。知ってたわよッ。あたし、文化人ですからッ」
…あからさまに知らなかった様子はありありなんだけれど、あかねはなおもそう言い張った。
「鼻が高くなったくらいで歴史が変わってたまるか」
俺がそんなあかねに対して更に冷めた口調でそう続けると、
「わかんないじゃない。クレオパトラの美しさにクラクラっときた色んな国の王が彼女を手に入れようとして、色々と仕掛けあって争い始めたかもしれないでしょッ」
あかねはそういって、自分の鼻をぎゅっと掴み、
「鼻が一センチ高くなるかならないかだけで歴史が変わるなんて、すごいなぁ。あたしの鼻があと一センチ高くなっても歴史なんて全然変んないのに…」
そんな事を呟いていた。
「あのなあ…当たり前だろーが」
俺は、訳の分からない妙なぼやきをするあかねの腕を取り、自分の方へ引き寄せると、
「あかねの鼻があと一センチ高かろうが低かろうが、歴史は変るわけねえだろ。ま、もっと別のもんが変わっていたら…世界の歴史はともかく、俺たちの周辺はかなり変ってただろう」
俺はそう言って、あかねを自分のあぐらをかいている足の上に座らせた。
「何よ、もっと別のものって?」
あかねは、俺のそんな足の上にチョコン腰掛けながら尋ねる。
「そんなの簡単じゃねえか?」
俺はそう言って、あかねの頭をゆっくりと撫でた。
「なんだろ」
あかねは、俺に大人しく頭を撫でられながら首をかしげている。
「だから、さ」
俺は、そんなあかねに対してにっと笑うと、
「…あかねがもっと素直だったら」
「え?」
「俺たちはもっと早くにこうなってたよな」
俺はそういうが早いか、素早くあかねの唇に軽いキスをした。
「なッ、何よそれッ」
あかねは、見る見るうちに顔を赤くして、
「あたしが素直になったらじゃなくて、乱馬が素直で優しかったらの間違いでしょッ」
そういって、俺の膝の上でばたばたと暴れだした。
「あかねが素直だったら、だって」
俺はそんなあかねを強引に抑えつけて静かにさせると、
「だーってさ。あかねがもっと素直だったら今ごろ…」
そういって、あかねの耳元へ口をつけ、
「…家族が増えてたかもしれないし?」
「なッ…何言ってんの、何言ってんのーッ」
…俺が「他にはー…」と色々とあかねの耳元で囁くたびに、
「いやーッ離せッバカーッ。どこ触ってんのよッ」
あかねは真っ赤になったりジタバタと暴れたりしていた。
クレオパトラ。
正式には、クレオパトラ七世。古代プトレマイオス朝エジプト最後の女王で、楊貴妃・小野小町とともに「世界三大美女」としても有名である。
かの有名なユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)の愛人でもあり、カエサル死後はその部下・アントニウスと結婚する。
そしてそれとは別に、王位を守っていく為に実弟と結婚もしていたという彼女。
自らを毒蛇の牙にかけて自害するまでのその生涯は、いつも波乱に満ち溢れていた。
「もしクレオパトラの鼻が一センチ低かったら、歴史は変わっていた」
そのあまりの美しさゆえにこのような名言も生まれたことは、二千年以上経った現在でも、有名な話である。
「クレオパトラって、毒蛇にかまれて死んだらしいぜ」
俺がそんな事を言いながらあかねの首筋に軽く噛み付くと、
「あたしは、オオカミにかみ殺されて死ぬんだわ、絶対」
あかねは耳まで真っ赤にしながらそう言って、俺をジトッと見ていた。
「本望だろ?」
俺はそんなあかねの額に自分の額をゴチッとぶつけながらそう尋ねると、
「…蛇にかまれるよりはね」
あかねはそう言って、悪戯っ子のように笑っている俺の鼻に軽く噛み付いた。
我が家の「クレオパトラ」はどうやら、毒蛇よりもオオカミ少年の方がご所望のようだ。