「あかねって、色、白いよな」
「そうそう。白くて透きとおる肌って言うか…。ホント、お前がうらやましいよ」
ある日の体育の授業中。
グランドの反対側で行われている女子の授業風景を眺めながら、俺の悪友:ひろしと大介がそんな事をぼやいていた。
「触らせねえぞ」
俺がそんな二人に向ってぼそっと呟くと、
「分かってるよ。俺達だって、まだ死にたくねえよ。そんな事しようものなら、お前に間違いなく殺されるだろうし」
「そうそう。享年十六、はゴメンだ。でもなあ…それでも何か、すげえ惹きつけられるんだよなあ」
ひろし達は、太陽の光を受けて、さらに美しく映えるあかねの姿を見ながら、そんな事を呟いていた。
…太陽の光を充分に受けて、まるで今にも透きとおってしまうかのような、あかねの白い肌。
体操着から伸びるすらりとした腕と、そして足の部分しか見ることは出来ないが、たったそれだけの部分なのにも関わらず、おりからの自然な太陽光によって、更に輝きを増す。
「女の肌って、あんなに白くて綺麗に映えるもんなのか?」
「なあ…」
ひろし達は、そんな事をまたボソッと呟く。
「…」
お前らは中年の親父か?…俺はひろし達に思わずそう突っ込みたくなったが、そんなにひろし達が言うのなら…と、俺も、少しあかねの方を眺めて見ることにした。
…確かに。
改めて俺があかねを見ても、
太陽の光を浴びて元気にグランドを走っているあかねの肌は、
白い、というか透明というか…すごく映えて見えた。
ひろしや大介達だけでなく、
気が付けば、他の奴もあかねを目で追ってる奴もいたぐらいだ。
「…」
…でも。
でも、俺は知ってるんだ。
あかねの肌は決して「白い」だけではないこと。
たとえば子供が、誰も踏んだことのない新雪の上に足跡をつけて回ったり、
きれいに均されている砂場の砂を、めちゃくちゃに荒らしてみたり。
それと同じかように、
きれいな白い肌にはそれとは相反するような「印」をつけてやりたくなる。
そう、それは決して外からは見えない部分に。
「いいよなー、乱馬は」
「羨ましいよ、マジで」
再びそう呟くひろし達に、
「触らせねぞ」
もう一回釘をさすように、俺は笑いながらもはっきりとした口調で言ってやった。
…決して「白い」だけではない、その肌。
太陽の光に映えて、更に美しく映えるその肌が、
実は決して「白い」だけでない事は…俺と、あかねだけの秘密。