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→15.レッドアイ

「泣いてるッ」
「泣いてないッ」

TVを見ている時の、とある日のあたしと乱馬の会話。
『老人系・動物系・初めてのお使い系』に弱いあたしが、思わずそんなドキュメンタリーを見て、ほろりと涙を流していると、
「やーい、泣き虫。目まで真っ赤にして泣くことかよ」
「う、うるさいわねッ。これは涙じゃなくて…そう、青春の汗よッ」
「訳わかんねえよ」
…乱馬はいつだってあたしをからかって遊ぶ。
「あらあら、二人とも仲がいいのねえ」
そんなあたしと乱馬のやり取りを聞いている、かすみお姉ちゃんや早乙女のおば様は、
「あかねちゃんは、優しいのよね。だから涙を流すのよ」
そんな事を言って、にこやかに笑っている。
「単に泣き虫なだけだろ」
…そんな時、もちろん乱馬は
「お前は鬼か」
と思うほど冷たくあたしを突き放したりからかったりするので、
「いーッだ。乱馬にはあたしの優しさなんて伝わんなくて結構よッ」
「こっちから願い下げだねッ」
…結局、TVそっちのけであたしと乱馬はくだらない口喧嘩をする事になる。

「TVを見ているときにあたしが目を赤くしている」…そんな時は、
乱馬も、
そしてお姉ちゃんやおば様も。
「泣き虫」
「感動屋さん」
「優しくて涙もろい」
…それくらいにしか気にもとめない。
でも。
ふとしたことで喧嘩になったり、ちょっと不安になったり。
そんな時にあたしがちょっとでも涙を流すと、乱馬の表情は、面白いくらいさっと曇る。
「目、赤いじぇねーか」
そして、
そんな時は、絶対にあたしを突き放したりはせずに、ただただ黙ってぎゅっと強く抱きしめている。


「目、赤くして泣くなんて、うさぎみてえだな」
そんな事を言いながら、ぱくッとあたしの耳に噛み付く乱馬に、
「うさぎじゃないもん。それにこれは泣いてなくて…そう、青春の汗」
あたしが目をこすりながら、またそんな言い訳をしても、
「どこがだよ。それに…目が赤いなんてやっぱ、うさぎだな。うさぎ」
「うさぎじゃないもん」
「うさぎだって」
「違うもん」
「違くないね。狼に食べられる前のうさぎ、だな。そうだろ?」
乱馬はそんな事を言いながら、もう一度あたしをぎゅっと抱きしめる。
「あんまり不安にさせると、食べさせてあげないんだから」
こりゃ逃げられそうも無いかも、と泣きべそをかきながらもあたしがそう呟くと、
「そりゃ困る。飢え死にしちまうな」
乱馬はあたしの頭を優しく撫でながら笑っていた。


「乱馬と二人きりでいる時に、あたしが目を赤くしている」
…そんな時は乱馬の奴、あたしが泣き止むまでずっと傍にいて、泣き止んでもずっと傍にいて、
そして、
泣かせた原因は自分だというのを、覚えてるか覚えていないか分からないが、少なくともそれに対しての「アフターフォロー」は忘れない。
乱馬にとって、目を赤くしているあたしは、
「狼に食べられる前のウサギ」
…どうやらそんな印象らしい。


そして。
「あらあかね、あんた目が赤いけど、どしたの?」
…そんな風に、狼少年のウサギ狩りがあった翌日の朝は、寝不足で目を赤くしたあたしに、今度は、決まってなびきお姉ちゃんがそんな風に尋ねる。
「えッ…あ、何でかな…。えっと…花粉?」
しまった、今は秋だった…とあたしが慌てて誤魔化すも、
「寝不足になるまでとは、ご苦労様。狩の得意な狼だと、狩られる方も大変ね」
なびきお姉ちゃんは、そんなことを言いながら、意味深な笑いを浮かべ去っていった。
「…」
明らかに、なびきお姉ちゃんには、全てお見通しのようだ。
しかも、昨夜のあたしと乱馬の会話をさも、知っているかのように聞こえるのは気のせいだろうか?
「…」
…どちらにせよ、あたしと乱馬の「事情」を、なびきお姉ちゃんは知っているってことだ。
あたしは、真っ赤になっている目よりも更に顔を赤くさせて、思わず俯いてしまった。
「なびきお姉ちゃんの目に映る、目を赤くしているあたし」
きっとなびきお姉ちゃんには、鴨がネギしょって歩いてくるようなもんなんだろうか。



どちらにせよ、
あたしが「赤い目」をしている時は、その理由、人によってはいろんな風に、見えるらしい。

 

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