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→SECOND TIME(サイト公開vr)

学校が休みの日は、何となく時間を持て余す。
それは、家族が留守だったり友達との予定がなければ尚更だ。
「…」
こういう日に限って、いつも騒がしい家族は誰もいない。
それはあの乱馬とて例外ではなく、
『ちょっと出掛けてくる。』
家族みんなが出かけるときに一緒に、出て行ってしまった。
何でもクラスメートの家で、
あの乱馬にしては珍しく『勉強』をしてくるそうだ。

…家の中で一人きりになるのは、久しぶりだな。

とある日曜日の午後。 あかねは、妙にがらんとした居間の中で一人、そんなことを思っていた。
いつもは所狭しと肩をしぼめて座る居間のテーブルも、一人きりだと何だか広すぎる。
いつもは乱馬や姉のなびきにテレビの前を占領されて、
「それじゃあたしがテレビ、見えないよー!」
好きな番組も、満足に見せてはもらえないあかね。
一人ならばなんの気兼ねもなくテレビもみれる…と、さっそく新聞でチェックした番組をテレビで付けて見るも、
「…」
…パチン。
すぐに、消してしまった。
「…」
何だか、気が散って集中できないというか、いつもよりも画面も大きく見えて、まるで大きな映画館を一人で借り切って、映画でも見ているかのようだった。
「…」
…久しぶりに一人でいるんだし、わざわざ見たくもないテレビなんて見ている必要もないか。
あかねはそんなことを思いながら、ゴロン、と畳の上と横になった。
そして、規則正しい木目を並べて広がる天井を見つめながら、ふっ…とため息をつく。


…ちょっと前までは、一人で過ごすことに抵抗なんてなかった。
それが、一人でいること事態が、最近は少なくなった。
その原因は至ってシンプル。
あかねが、乱馬と付き合い始めたからだ。
ただの、形だけの『許婚』ではなく、いわゆる『彼氏と彼女』の関係になったということ。
そうなれば必然的に、一人よりも二人きりになりたいと、そう思うのが普通だ。
実際にそうなることは多いし、あかねとてそうやって過ごすことに抵抗がなかった。
でも…
「…」
せっかくの、家族の留守。
それがわかっていて、乱馬はわざわざ、友達の家へと行ってしまった。
それは果たして偶然なのか。
「…」
いや、あかねにはそれが偶然とは思えなかった。
勿論それには根拠がある。
「…」
…ここ一週間ばかりだが、
『ある日』をきっかけに、乱馬は急に、あかねと二人きりになっても何だか落ち着きがなかったり、
そして今日だって、二人きりになるとわかっていて、家を出て行ってしまった。
それまでだったら、絶対にこんな風に二人きりになる日は、
「二人っきりになれたなー」
…なんて。その恵まれたシチュエーションを大喜びするはずなのに、今日はそれもない。
それに加えて、
「時々は一緒に寝るからなっ」
少し前までは、頼みもしないのに勝手にそんなことを言っては蒲団に潜り込んできて、朝までずっとくっついて寝ているような乱馬だったのに、
この一週間、実は、一日も一緒に眠っていない。
「…」
一週間前の、『あの日』。
そう、それはすなわち、あかねと乱馬が初めて結ばれた日のことだ。
初めて結ばれた日から、今日はちょうど一週間目。
それなのに、
「…」
…なぜだろうか。
初めて結ばれたあの日以来今日まで、二人は満足にキスさえもしていなかった。


一週間前の、夜。
いくつもの偶然が重なって二人きりになった、それで迎えた日。
二人とも初めてで、でも一生懸命で。
何だか口では言い表せないような、満たされた心。
行為が終わった後も、どうしてだろうか、どうしても離れたくなくて、お互いの足を絡めあいながら抱き合っていた。
何度キスをしたかも、わからない。
気が付けばどちらともなく、唇を奪いあう。
「好きだ」とか、「愛している」とか。
そんな言葉を何百、何千と繰り返されるよりもたくさんの愛情を、あの日、あかねは感じたはずだった。
もちろんその日の思い出は、そうやって綺麗であり感動的な思い出だけが残ったわけでは無い。
心も体も結ばれて、幸せを感じた日。
でも、それに伴って発生した問題だって、多々、ある。
たとえばそれは…「痛み」。
今まで男性を、自分の中に受け入れたことがなかったあかねにとって、
初めてそれを受け入れた瞬間のその「痛み」を感じることは、避けては通れない道だった。
初めての日なんて、
漫画や小説で書かれているような、そんな官能的な「快感」なんて満足に感じる事なんて出来ない。
気持ちが満たされるのと、身体が慣れるのとは全くの別問題だ。
痛いものは痛い。気持ちだけではカバーできない痛みだって、ある。
身体自体が全くの「快感」を感じないわけでは無い。
実際、痛みこそ伴なうが、それまで感じた事のない「感覚」があかねの身体を支配した瞬間だってあった。
でも…その行為の最中、どちらを長く感じていたかといえば、
やはり初めての時は仕方がない。局部的に感じる鈍い痛みを、あかねは感じていた。
それを感じ取ったのか、その日の夜は乱馬も、「もう一度…」なんて、無理な事はあかねに望まなかった。
いや、乱馬自体は本当は、もう一回…なんて思っていたのかもしれない。それは、年頃の男の子だったら当然の事だ。
でも、あかねの様子…というか、身体の事を考えて、その日はぐっと、我慢をしてくれたのだ。
そんな乱馬の態度に、初めはあかねも感謝をした。
自分勝手な欲望だけではなくて、ちゃんとあかねの事も考えてくれているのか。
そう思うと、嬉しくて仕方がなかった。
でも、


「…」

…もしかしたら、それのせいなのかな。
この一週間、こうも何だか乱馬に「避けられている」ような気がして気になっていたあかねは、もしや乱馬が自分と二人きりになるのを避けている原因にそのことが関係あるのでは無いか。
そんな風に考えるようになっていた。
「…」
体を許す事にあまりいい顔をしない彼女より、自分の事を好きで、惜しげなくその体を提供するような女の子の方が、男の子は嬉しいのかもしれない。
そんな事を考えていたら、何だかあかねはそわそわと、落ち着かない。
「…」
…もしかしたら今日だって、「友達と勉強」なんていって出て行ったけれど、本当は他の誰かと遊びに行ったとか。

……
「うー…」
妄想をはじめると、それは果てしなく続いていく。
でも、こういう「悪い事」を考える妄想は、考えれば考えるほどドツボにはまるもの。
「…」
乱馬の、ばか。
不満があるなら言ってくれなきゃ、わかんないよ。
…あかねは、頭の下に敷いていた座布団を胸に抱え直すと、ギュッと抱きしめては何度もため息をついていた。



と、その時だった。


「ただいまー」
…そんな声と共に、玄関の戸がガラリと開く音がした。
「ん?」
何だか妙にご機嫌なその声に、あかねは思わず首を傾げる。
…この声は、乱馬だ。あかねにはすぐに分かった。
友達の家に勉強に行っていたはずの乱馬が、どうやら帰ってきたようだ。
「…?」
でも、ちょっと早すぎはしないか?
そんな事を思いながらあかねがふと時計をみると、皆が出掛けた時間から、まだ二時間位しか経っていない。
「?…」
勉強会にしては、随分と早いお開きだ。
あかねがそんな事を思って、横になりながら首をかしげていると、
「ただいま」
ズカズカと廊下を歩いてきた乱馬が、あかねの横になっている居間へと入ってきて声をかけてきた。
「おかえりー…早かったね」
あかねが起き上がることなく、座布団を抱き締めたまま入り口のほうを向いて乱馬にそう答えると、
「なんだ、眠いのか?」
そんなあかねの姿をちらっと横目で見ながら、乱馬は居間の戸を閉めてしまった。
「…別に。ただ横になってただけ。誰も居ないし、テレビもつまらないし」
居間の入り口の戸を閉められてしまった為に、居間の中は何だかちょっと薄暗い。
電気をつけようかつけまいか、でも起き上がるのがちょっと面倒くさいなあ…そんな事を思いながら、あかねは乱馬に答える。
「ふーん…」
すると乱馬は、何だか気のない返事をして一瞬黙るも、
「することないからお昼寝か。まあそれも悪くはねえよな。…俺も寝る」
最終的にはそう言って、
「よっと…」
あかねが横になっている隣に、それも、わざわざ横を向いているあかねと向かいあうような形で横になる。
「…」
…入り口の障子戸が閉められた薄暗い室内。
あかねと乱馬は、お互い向かい合うような形で横になっている。
テレビもついていない、殆ど無音の世界。
普段は気にならない程度の居間の柱時計が時を刻む音が、カチッカチッ…とやけに大きく耳に響く。
居間の奥にある台所の、電気ポットの自動沸騰している音までもが、微かに聞こえてきたり。
「…」
目の前には、一週間ぶりにちゃんと見る、乱馬の顔。
整った顔立ちと、真っ直ぐに自分を見つめている大きな瞳。あかねは何だか少し照れくさくなって、抱いている座布団で顔の半分までを覆ってしまう。
乱馬は、そんな風に目だけ座布団から覗かせて自分を見ているあかねを小さく笑うと、
「…」
すっ…と手の平をあかねへと近づけて、そのままあかねの頭に触れた。
そして、触れたあかねの頭を、優しく撫で始めた。
…見るからに太くて、そしてゴツゴツした指。
それなのに、あかねの頭や髪を撫でるタッチは、驚くほど優しいものだ。
あかねにとってもその指は、とても心地よい。
温かくて大きな手は、何だかあかねの寂しさをも拭い去ってくれるような気がする。
でも、
「…」
先程まで、乱馬に対して色々な事を思い巡らせていた事もあって、普段は撫でられると嬉しい頭も、何だか今日は、気恥ずかしい。
『二人きりになりたい』などと考えていたわりには、随分とおかしな話なのだが。

「…」
あかねは、そんな事を考えながら、「いやいや」と首を左右に振った。
「ん?どうした?」
乱馬がそんなあかねに首をかしげながら、頭を撫でていた手を止める。
「ん…えっと」
あかねは乱馬から目をそらしながらぎゅっと、一度抱いていた座布団を再び強く抱きしめると、
「乱馬、そんな居間の入り口で寝てたらさ、隙間風が入ってきて寒いでしょ?もっと奥で寝転んでいいよ」
「…」
「その…あたし、自分の部屋で寝るね。そしたらここ、空くし…」
…二人きりにはなりたかったけれど、いざ二人きりになったら、何だか乱馬よりもあかねのほうが、その空間を落ち着いてすごすことが出来なかった。
きっとそれもこれも、先ほど考えていたことであたまがぐちゃグチャしているからなのだろう。
だったらちょっと頭を整理するためにも、居間を出たほうがいいな。
…そう考えたあかねは、抱いていた座布団を乱馬へと引き渡して身体を起き上がらせ、そのまま立ち上がり、閉じられている居間の戸へと手をかけようとした。
が、

「…だめだよ」

戸に手をかけようとした瞬間、乱馬がそう言いいながら、戸に手を伸ばしたあかねの手首を、ガシッと掴んだ。
「えっ…」
手首を掴む力があまりにも強く、あかねがビクッと身を竦めながら乱馬のほうを振り返ると、
「…だめだよ」
乱馬はもう一度そう言って、今度はぐいっと、掴んでいる手に力を込めて、あかねを自分のほうへと引っ張った。
「きゃっ…」
急に強い力で引っ張られたあかねは、バランスを崩して畳の上に転びそうになるも、乱馬はそんなあかねの身体を、まるで抱っこでもするかの様にすっぽりと、膝の上へと抱えて座らせてしまう。
「…」
乱馬は、膝に抱えたあかねの身体を、後ろからぎゅっと、抱き締めた。
「あ…」
一週間ぶりに、きちんと強い力で抱き締めてもらえるその瞬間に。あかねの心はどきっと、鼓動した。
「あ…」
あかねが、自分を抱き締めているその乱馬の太い腕にそっと手を添えると、乱馬は、あかねの首筋に唇を付けるように、顔を落とす。
「きゃっ…」
不意に肌に触れられる、熱く柔らかい唇。
あかねはびくっと身を竦めた。
「…。乱馬…」
あかねは、震える声で乱馬の名を呼びながらゆっくりと後ろを振り返った。
すると乱馬は、振り返ったあかねの、その無防備な唇にちゅっ…と軽くキスをすると、
「…今日は、二人きりだから…」
「うん…」
「…誰にも気を使わなくても、いいから…」
「うん…」
「しばらく、誰も帰ってこないから…。だから…」
そういって、あかねの身体を再びぎゅっと、強い力で抱き締めた。
ドクン…ドクン…と、服を通してあかねの背中に、乱馬の胸の鼓動を感じる。
乱馬も、この状況に緊張というか興奮をして胸を高鳴らせている証拠だ。
「…思ってた」
「ん?」
「乱馬は…あたしと二人きりになりたくないんだって、思ってた」
その乱馬の胸の鼓動を感じながら、あかねはボソッとそう呟いた。
すると乱馬は、
「そんなわけねえだろ」
「だって…」
「この家は…壁に耳ありだから。それに…」
「それに?」
「…そんな状況なのにさ、俺…一緒にいるともう、我慢できなくなっちまってるから」
…そんな事を呟きながら、今度は先程よりも少しだけ長く、あかねにキスをした。
ぎゅっ…と唇を押し付けては離れ、そして又吸い付くように唇を重ねる。
きゅっと閉じられたあかねの唇に強引に舌を割り込ませては、お互いの体温の熱さをそこでも感じあうかのように舌を絡めあう。
「ん…んん…」
息をすることさえも、許してもらえない。
いや、すでにそんな事を考えようとするその思考力まで、奪い取られてしまう。
…そんな熱いキスを、二人は交し合う。
「はあ…」
ちゅ…と、唇を離す音までもはっきりと、薄暗い室内には響いていた。
唇が離れた後も、何だか頭がくらくらとして、身体もボーっとしている。
「…」
乱馬は、そんなあかねの身体を、改めてぎゅっと、抱き締めた。
あかねも、その乱馬の身体にぎゅっと、抱きつく。
…何だ、自分の取り越し苦労だったのか。
そう考えると、何だかさっきまでウジウジと考えていた自分がバカみたいだ。
そのことについては、あかねはホッと胸を撫で下ろした。
でも、それをクリアしたのはいいけれど、もう一つ問題が発生している事にも、あかねは気づかざる得なかった。
「…」
…乱馬は、あかねと二人きりのこの状況で、はっきりと意思表示をしている。
「したい」、と。
あかねだって、それまでの迷いや誤解が解けたから、気持ちの上では全く嫌では無い。
一度結ばれた二人が、それ以降また成り行きでこうしてお互いを求め合う事など、当たり前の事だ。
でも…
「…」
あかねには一つだけ…結ばれても構わない、という気持ちの隅にひっかかってしまうものがあった。
それは…

「…もう、痛くない?…」

…そう。
それは、あの時感じた「痛み」。
これこそ、何度か回数を重ねればなくなるものであって、
やがてその痛みの代わりに得る「快楽」のほうが強くなる事とて、あかねだって分かっていた。
でも、
今日はまだ、二回目だ。もしかしたら、またあの時みたいにずっと、痛い思いもするのか。
それをちらっと考えてしまうと、まだあかねは、素直に乱馬に身体を預ける事が出来なかった。
痛みから来る「怖さ」。
まだ、あかねは乱馬に身体を預ける時には身体を強張らせて、カタカタと震えてしまうのかもしれない。
乱馬の事は、好きだ。結ばれたのだって、それは自分も望んだことだ。
そして、それは自分にとってもとても、「幸せ」だと思った。
でも…初めての時は、「快感」と「気持ちを感じあえた幸せ」だけがあかねの中に残ったわけではなかった。
「…怖い」
カタカタと小刻みに震えながら、あかねが乱馬に小さな声でそう呟くと、
「おっ…俺!」
そんなあかねの身体を再びぎゅっと抱き締めながら、乱馬が急にそう叫んだ。
そして、
「お、俺、練習してきたから!」
…乱馬は、いきなり妙なことを叫ぶと、
「だから、平気だ!」
そのまま強引にあかねを床へと押し倒そうとした。
「なっ…ど、どこで何の練習をしてきたー!」
ドスっ…
初めは震えていたあかねも、そんな乱馬の妙な発言に気が付いたら、そのまま押し倒されるはずがない。
自分に覆い被さりまたがろうとした乱馬の胴体を思いきり突き飛ばすと、
「一体誰と何の練習をしてきたっこの…浮気ものー!」
ビビビビビンっ。
あかねは、容赦なく乱馬の頬に平手打ちを喰らわせてやった。
すると、
「ご、誤解すんなよっ。浮気なんてするわけねえだろ!俺はただ、ちゃんとした教材に基づいて…」
「きょ、教材って何よ!」
…というか、あんたは一体、外で何してるのっ。
あかねが更に平手打ちを食らわせようと、再び手を振り上げながらそう叫ぶと、
「だ、だから!その…どうやったら、その…痛くないかとかっ…」
「!」
「初めての時は痛いって、聞いてたから…だからっ、あかねもそうだたはずだしっ…」
「…」
「もしかしたらそれで、次も痛い思いをしたら嫌だなとか、思っちまってたら…可哀想だし…」
「…」
「俺ばっかり良くたって、そんなの…」
「乱馬…」
「だからっ…。痛くしないように俺、がんばるからっ・・・」
乱馬はそう言って、振り上げられたあかねの手をガシッと掴んで自分の手元へと引き寄せると、
「きょ、今日も俺、勉強してきたからっ…」
「え、今日って…あんたまさか、そんなことの『勉強会』に出かけたわけ…?」
「そ、そんなことって何だよっ。大事なことだろっ。だから、ヒロシとか大介と一緒に、色々ビデオとか見て…」
「び、ビデオ?!あんた、教材って一体何のっ…」
「と、とにかくっ」
乱馬はそう言って頬を赤らめた後、全ては語るまいとばかりにあかねに抱き付いた。
そして、
「…この間よりも、絶対に痛くしないから。絶対。…」
そういって、あかねの唇にぎゅうっと、自分の唇を押し付けるように重ねた。
「…もう」
…バカというか、素直すぎるというか。
それとも、単なるスケベなだけなのか。
あかねは、そんな乱馬の必死な姿が何だかおかしくて仕方がなかった。
「…もー。乱馬の頭の中は、そういうことでいっぱいだったの?」
あれから一週間。
あかねが乱馬にそう尋ねると、
「…うん」
乱馬は、何だか恥かしそうにそう呟くと、ばつが悪そうに笑っていた。
あかねも、そんな乱馬の顔を見て何だかおかしくなり笑ってしまった。


それから後。
二人はぎゅっと抱き締めあって、何度も何度も、お互いの柔らかい唇を重ねつづけた。
初めは重ねるだけだった唇も、次第にお互いを求め合うように押し付けあうようになる。
唇を重ねるだけでは物足りなくて、自然にお互いの舌を絡めあうようになって、お互いの呼吸をするそのタイミングさえも、奪い合おうとしてしまう。
「ん…ん…」
少しだけ苦しくて、あかねが小さな声を口から洩らしても、その声さえも乱馬は防いでしまうかのように唇を奪う。
そして、唇の裏側をちょん、と舌先で刺激される事で、あかねはその苦しさも忘れてしまうほど再び、そのキスに没頭してしまう。
あかねの身体には、息苦しさよりも、ゾクゾクと身体中を走り抜ける感覚のほうが現在勝っている。
時折背中をびくっと竦めるあかねの身体を、乱馬は決して離そうとしなかった。
抱き締めながら背中を撫で、そして背中から腰やウエストの辺りを撫で、乱馬はあかねの身体にずっと、ずっと触れている。
そんな乱馬はその内、
「…」
ぎゅっと腕に抱いていたあかねの身体を、ゆっくりと居間の畳の上に押し倒した。
そして、
「…」
あかねの上に覆い被さるかのようにポジションを取ると、片手ではあかねの髪や頬、そして耳や首筋を触れて、そしてもう片方の手で、あかねが着ているブラウスのボタンへと、手をかけて外し始めた。
「や…だめ…」
一つ、そして又一つ。
面白いくらい器用に、乱馬はブラウスのボタンを外していく。
徐々に下着姿が露わになってしまうことが恥かしいあかねが、少し身体を捩ってその姿を見せまいとすると、
「…いいの、これで」
乱馬は再び横を向こうとしているあかねの唇に指で触れると、
「…これでいいの」
再び、あかねの全ての感覚を支配するかのような長くて熱いキスを、した。
「あ…ん…」
…唇の内側を舌先で刺激されるような熱いキスは、まるで万能の媚薬のようだ。
それに加え、自分の肌が露わになっていることも手伝い、あかねの頭はぼーっと、ぼやけ始める。
「ん…」
恥かしくて、体を見せないようにしようとしていたのに。
そんなキスをされたら、抵抗する気力を奪われてしまう。
「ん…」
あかねが虚ろな瞳で乱馬を見あげると、乱馬はそんなあかねの瞼にちゅっと軽くキスをしながら、まだ外していなかったブラウスのボタンを全て外しきった。
そして、ボタンを外したブラウスを器用にあかねから取り外し、まんまとあかねを、下着姿にした乱馬であったが、
「…」
初めはその下着に手をかけようとした乱馬であったが、何を思ったのかふと、下着に触れようとしてその手を止めてしまった。
「乱馬…?」
…どうしたのだろうか。
それまで服を脱がせるために必死だったはずの乱馬だったのに、何をそんなにためらっているのか。
もしかして、下着が色っぽくないとか…。いやでも、今日はブラウスの色に合わせて白く可愛らしい模様のあしらったものをつけているし…。
「…」
あかねがそんなことを思いながら、乱馬の顔を下から見上げていると、
「…痛くないように、しなくちゃな」
…あかねの心配をよそに、乱馬はそんなことを言いながら、もう一度あかねに軽くキスをした。
そして、
「やっ…」
くっ…
あかねの下着の上から、今はまだ覆われている、白い乳房の先端部分を指の腹で押した。
「あっ…」
下着の上からとはいえ、不意に敏感なその部分に触れられ、あかねがびくん、と身体を跳ね上がらせると、
「…」
その反応を楽しむかのように、乱馬はゆっくりとその部分を、指の腹で撫でまわし始めた。
「あっ…あんっ…」
ゆっくり、布越しではあるがあかねの胸の先端部分を、乱馬の指が這いまわる。
そのせいで、
初めは柔らかくて押せばぺこんとへこんで肌に馴染んだその部分も、
そんな仕草を繰り返されれば、布の下からでもくっきりと、その形が分かるほど堅く盛り上がってくる。
「あっ…あっ…」
乱馬の指で触れられれば触れられるほど、その部分は固くなった。
「あっ…乱馬っ…」
執拗なほどの指での愛撫に、あかねが吐息交じりの声で乱馬の名を呼ぶと、
「あかね…俺、もうっ…」
乱馬はそんなあかねの問いかけに興奮気味の口調でそう答えると、強引にあかねがつけているその下着を剥ぎ取ろうと、肩紐の部分へとぐっと、指を滑り込ませた。
「っ…」
…脱がされる。
私、乱馬に…
「…」
そう直感したあかねが、思わずびくんと、その身を震わせた…ちょうど、その時。




「あれー?鍵が閉まってるわ?」
「ええ?あら、本当だわ。やだ、じゃあ誰も居ないのかしらねえ…鍵、かぎっと…」


「い!?」
「あ…」
…この居間のどこかに、カメラでも仕込まれていたのだろうか。
乱馬があかねの下着へと手をかけようとしていたちょうどその瞬間。
なんと、玄関の戸をがちゃがちゃと動かす騒がしい音が聞こえてきたのだ。
玄関自体は、実は乱馬が帰ってきた時にちゃっかりと閉めてきたのだけれど、計算ではもっと遅い時間に帰ってくるはずのほかの家族が…声からして、のどかと、そしてなびきが…絶妙なタイミングで帰ってきてしまったのだ。
「あっ…」
もちろん、そんな二人にこの状況を見せるわけには行かない。
二人は慌てて離れると、あかねは畳の上に脱ぎ散らかしていたブラウスを羽織り、乱馬はがらっ…と、妙に熱気の篭っている居間の空気を入れ替えようと、入り口の戸を開けた。そのついでに、縁側のガラス戸も空けて風を通してみる。
「…」
ブラウスを羽織りなおし身を調えて。乱れてしまった髪を手櫛で整えながら、
「…みんな、帰ってきちゃったね」
あかねが、ばつが悪そうに笑いながらそう言って乱馬を見た。
「くっ…」
…湧き上がったままのこの感情のやり場を、一体どうしてくれようかと、乱馬はあかねに答えることなくため息をつく。
と。
「ただいまー…あら?あんた達居たの?玄関に鍵がかかってるから、出かけてるのかと思った」
「ただいまー。あら、乱馬も帰ってきてたの?ちょうどよかったわ。母さんみんなの分のケーキ、買ってきたのよ。皆でお茶にしましょうよ」
ほどなくして、スペアで持ち歩いている玄関の鍵を開けて家の中に入ってきたのどかとなびきが、
そんなことを言いながら、居間でぎこちなく離れた場所で座っているあかねと乱馬に、声をかけてきた。
「あ、ありがとございます…。私、お茶の準備、しますね」
そんなのどか達に対し、あかねが何事もなかったかのように装いながら、ぱっと席を立って台所から電気ポットや急須を持ってきたりするも、
「…」
一方の乱馬は、そんな風にはすぐ、気持ちを切り替える事など出来なかった。
「・・・はー…」
乱馬は、何度となく溜め息をついてはうじうじと、居間の隅っこで体育座りをしていた。
「なんなのよ、うじうじと。ケーキいらないの?」
そんな乱馬に、なびきが声をかけるも、
「…」
…ちゃっかりとケーキには手を伸ばすも、明らかに乱馬はガックリと肩を落としていた。
「まあ。乱馬ったら、どうしちゃったのかしら。ねえ?あかねちゃん」
明らかに挙動不審な乱馬に、お茶を飲みながら、のどかがこっそりとあかねに尋ねる。
「えっ、あ、どうしたんでしょうね…」
原因が分かっているだけに、あかねはしどろもどろにそう答えると、
そんなあかねを見ていてピンと来たのか、
「…悪い事しちゃったわねえ」
こういうことに敏感ななびきが、何とかしてのどかの質問を切り抜けようとするあかねに向かって、そんなことを呟く。
「今度から、帰る時は一本、電話を入れたほうがいいのかしら?」
そう言ってカラカラと笑うなびきに、
「おねえちゃんっ」
あかねは、のどかに気づかれないように、と慌ててなびきを制しようとする。
「乱馬君も、可哀想にねえ」
「し、知らないもんっ…」
あかねは、なびきの何でも見透かしたような視線から逃れるように、
「ほらーっ、おばさまが買ってきてくださったケーキ、食べようよっ。あたし、モンブランねっ」
「あ、ずるいわよあかねっ。ここのケーキ屋さんはモンブラン、有名なんだからっ」
「早いもんがちよっ」
…と、のどかが買ってきてテーブルに広げたケーキの箱から、お気に入りのケーキを取り上げてそう叫んだ。





とんだ所で邪魔が入ってしまって、中断してしまったけれど。
でも、あかねがここ一週間で悩んでいた事は全く持って無駄だった事が証明されただけでも、よしとするか。
「…」
…これなら、きっと次は大丈夫だ。
「…」
そりゃあ、まだちょっとは怖いような、そして痛みだって伴なう事があるのかもしれない。
でもそれは、あかね一人が悩んだり困ったりするのではなく、
「乱馬と一緒に、慣れていけばいいんだわ」
あかねはそう呟いて、うん、と頷いた。
そして、
「もー…あんなにがっかりしなくたっていいのに」
…そんなに、したかったのかしら。
居間で見るからにガックリと肩を落としていた乱馬の姿を思い出しては、悪いとは思いつつも小さく笑ってしまうほどの余裕が持てるようになったあかねが、そこにいた。

 

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