…寝不足の日が続いていた。
家で一睡も出来ない分、授業中にそれを補っている俺だが、結局それだって満足に補いきれるわけでもない。
それでも、あかねのお許しのでる「二日後」までは、どうにかしてコンディションを整えておかなくてはいけない。
そう。
付き合い始めて、三ヶ月。
ようやく一緒に寝る事を許されて。
それだけでなくて、ようやく「お許し」が出るまで、後二日。
「あと三回くらい寝たら」という言葉を信じ、今夜も俺はあかねの寝床へと潜り込む。
今日は、ようやく「三回目」。
あかねと一緒に寝るようになって、三回目の夜を迎えようとしていた。
「…」
「…」
まずは、昨日と同じようにあかねのベッドに潜り込み、俺たちは並んで横たわっていた。
でも、
「…」
昨日、「第三ボタンまでボタンを外していい」とお許しを貰ったのもあり、
昨日は十分、今日は五分。
ただ並んで寝るのは、それが限界だった。
「…」
俺が、あかねの身体を後ろから抱き寄せる振りをしながら、さっそくパジャマのボタンを上から三つ外してしまうと、
「…もう」
あかねが、ちょっと困ったようた照れたような顔をしながら、頬を膨らました。
「だって、約束だったろ?」
俺は、そんな事を言いながら、「当然だろ」と言わんばかりに、パジャマのボタンが外れたままのあかねの身体を抱き
しめる。
…もちろん、角度によっては、隙間からあかねの身体が少し覗き見れるように抱きながら。
が。
そんな俺の「ちょっとした楽しみ」が、裏目に出た。
可愛い彼女が、自分の腕の中にいて。
しかも、5つしかないパジャマのボタンが、三つまで外れている。
挙げ句の果てに、少し頭を下げれば、そのパジャマの中の白い肌が、いとも簡単に見れてしまうのだ。
それに加えて、部屋は真暗。
辺りには、あかねの、いつもの風呂上りのいい香りが漂っている。
「…」
…ボタンを外して、抱きしめているだけで、事が済むわけが無かった。
「あかね」
俺は、後ろからあかねを抱きしめたまま、あかねの頬にキスをした。
そして、そのままその唇を滑らせて、強引にあかねの唇へと重ねてしまう。
「ん…」
あかねが、そんな強引なキスに小さく吐息を洩らした。
「あかね…」
俺は、そんなあかねの唇を奪いながら、するりとボタンのあいたパジャマの中へと手を滑り込ませ、あかねの肩に触
れた。
「やっ…だめだってば…」
ビクン、と大きく身体を震わせ、あかねがそんな俺の手をパジャマから取り出そうとするが、
「…」
俺はそんなあかねに再びキスをしながら、触れたあかねのその肩をゆっくりと撫でる。
「ん…だめよ、ボタン外すだけだって…」
あかねが、ビクン、ビクンと身体を震わせながら小さく呟くので、
「でも、肌に触れちゃダメだって言わなかったろ」
俺はそんな事を言いながら、そっとあかねから唇を離した。
そして今度は、あかねの首筋に舌を這わせるように、唇を滑らせる。
「やっ…んっ…」
あかねが、ビクン、と一度大きく身体を弓なりにそらせた。
俺は、その一瞬を見逃さなかった。
「…」
あかねが俺の腕から身体を浮かせたその瞬間、俺は肩に触れていた手を上手く動かして、あかねが着ていたその
パジャマを脱がせてしまった。
そう、ボタンが三つもあいていれば、肌を剥き出させることなど、実はいとも簡単な事だった。
それに加え、俺が先程から肩に触れていた事も有り、パジャマはもう脱げ掛かっていたということも、手伝っている。
「やんっ…ボタンを三つまで外すだけだっていったじゃないっ」
下着は付けているにしろ、暗闇でもはっきりと分かるような白い肌を両腕で抱きしめるように抑えながらあかねが呟い
た。
「外してねえだろ」
「でもっ…」
「ボタンは三つしか外してないけど、パジャマって脱げるんだなあ。脱げちまったモンはしょうがねえ」
俺がそんな事を言いながら、そんなあかねに再び抱きつく。
「脱がしたくせに」
あかねが、恨めしそうな顔で、俺を睨んだ。
「しょうがねーだろ」
俺は、そんなあかねの鼻先に軽くキスをすると、
「ほら。手」
そう言って、身体を見せまいと必死にかばっているあかねの手を、強引に開いた。
「やっ…」
あかねは、慌てて身体を捩ろうとしたが、俺はそんなあかねの身体を足で挟んで固定してしまった。
そして、暗闇にボーっと白く浮かび上がっている白い肌を、ゆっくりと強く、抱きしめる。
…自分でも分かるくらい、心臓が鼓動していた。
ドクン、ドクン、と脈打つその音が、自分の、徐々に荒くなる呼吸に比例するかのように大きくなっていく。
俺は、ゆっくりとあかねの背中を撫でた。
いつもは洋服の上から触れているその場所は、柔らかく、そしてすこし温かくて…滑らかだ。
「んんっ…」
…俺が背中を撫でるたびに、あかねが、ビクン、と背筋を伸ばすような素振を見せる。
そのたびに、俺が少し目線を下にやれば、下着に覆われている胸の谷間が見えた。
そして、その下着に覆われている左右の胸の膨らみは、まるで今にも下着から零れ落ちてしまうかの如く激しく揺れ
動く。
…剥ぎ取ってしまおうか。
はっきり言って、邪魔だ。それに…剥ぎ取ってしまった状態で同じことをしたら…どうなんのかな。
…見てえな。
「…」
次第に俺は、そんな事ばかりを、考えるようになった。
「…」
俺は、片手では背中をゆっくりと撫で、そして片手では肩に掛かっている下着のヒモに手をかけながら、あかねに再び唇を重ねた。
チュ…と暗闇にはっきりと聞こえる程舌を絡ませたそのキスに、
「あ…」
あかねが、妙に艶のある声で息を洩らした。
「あかね…」
俺はそんなあかねに再びキスをし、そして首や、頬を優しく撫でながら、
「…いい?」
一日早いけど、いいよな?…と、あかねに意思確認をした。
が、
「…だめよ。今日はだめ…」
…何故かあかねはそう言って、首を左右に振ってみせた。
「なあ…何でダメなの?」
俺は、そんなあかねの耳元でそう囁きながら、わざと下着の上から胸に指を這わせる。
「だめなの…明日なの…」
「明日も今日も、一緒じゃないの?」
「違うの…あんっ…」
あかねは必死で俺の問に答えながらも、身体を弓なりに跳ね上がらせた。
下着の上から、あかねの胸の一部…くっきりと形が分かるほど堅くなった部分へと指が触れたのが原因だった。
「…これでもだめなの?」
俺が、あかねの首や頬に唇を滑らせながら、そのあかねの胸の堅くなった先端部分を指でゆっくりと撫で回すように
しても、
「あん…だめなの…だめ…」
撫で回せば撫でまわすほどくっきりと形をあらわし、そして堅くなっていくその部分とは対照的に、あかねは、途切れ途切れの声でそう言いながら、必死に身を捩ろうとする。
「あかね、なあ…」
でも、俺だってこのまま引き下がるのはままならない。
「あかね」
俺は、そんなあかねの身体を後ろからしっかりと抱きしめると、真っ直ぐに伸びているあかねの両足の間に、膝を割り
込むような形で片足を挟んだ。
横たわりながらにして、あかねは、俺の両腿の上に軽く腰掛けるような形になった。
「なあ、いいよな?」
俺はあかねの耳元でもう一度そう囁くと、再び下着の上からあかねの胸へと指を滑らせた。
「やっ…乱馬…」
あかねの、力ない声が俺の耳に聞こえてくる。
「あかね…」
俺は、そんなあかねの身体をぎゅっと自分の方へと抱き寄せ擦り付けながら、先程のように、少し堅さを帯びたあか
ねのその胸の先端部分へと触れる。
「あんっ…」
きゅっ、と少し指で刺激を与えれば、あかねはビクン、と身体を跳ね上がらせる。
撫でるように優しく触れれば、あかねは小さな吐息を洩らす。
「…」
初めは興味半分でそうして触れていた俺だったけれど、
しだいにどうすればどんな反応をあかねがするのか。…それが分かってきた。
何処に触れれば、どんな風に吐息を洩らすのか。
それを想像しただけで、俺の身体がカッ…と熱くなる。
…もっといろんなあかねを見てえ。
胸だけじゃなく、もっといろんな所に触れて、もっともっと色んなあかねを見たい。
あかねに夢中で触れているうちに、俺はそんな事を考えるようになった。
そして、
その為にも、いよいよ邪魔になってきたその下着を、めくりあげてしまおう…と、俺が何本かの指をあかねの下着と、肌の間に滑
り込ませたちょうど…その時だった。
「あらあら、Pちゃんじゃないの。どうしたの?こんな時間に」
…不意に、ドアの外から、夜も十一時過ぎだというのに、やけに大きななびきの声が聞こえた。
「あっ…」
その声に反応して、俺たちは慌てて離れる。
あかねは、脱がされたパジャマを慌てて羽織り、ささっと髪を手櫛ですくと、
「Pちゃん、帰ってきたんだって…」
そんな事を言いながら、俺と顔を合わせないようにしつつベッドを飛び降り、部屋のドアを開けた。
「あら、あかね。…と、よかったわけ?」
あかねがドアを開けた瞬間、部屋の中をチラッと覗いたなびきがそんな事を言っていたようだが、
「べ、別に…」
あかねはそんななびきと顔を合わせないように返事をし、
「おねえちゃん、Pちゃんは?」
「ああ、ほら、はいこれ」
なびきの手に抱かれていたPちゃん…良牙を受け取ると、そのまま部屋へと戻ってきた。
「…」
もちろん、電気もつけないくらい部屋の中では、今にも噛み付かんばかりの顔で俺を見ている良牙と、今にも八つ当たりをしそうな顔で良牙を睨んでいる、俺。
そして、
「今日は皆で一緒に寝るのね」
何だか少しホッとしたような…そんな顔をして暢気な事を呟いている、あかね。
「冗談じゃねえ!」
「ブキー!」
…無論、俺と良牙はその場ですぐに喧嘩になって。
結局、
「…」
「ごめんね、乱馬」
…なぜか、俺が一人、床に敷いてもらったあかねの布団で眠る羽目になった。
ベッドの中には、あかねと、ちゃっかりと豚になった良牙。
はっきりって、最悪の状況だ。
(良牙の野郎…次に人間の姿であった時、絶対に息の根を止めてやる)
俺が、床の上の布団でそんな事を思いながら悶々としていると、
「乱馬…」
ふと、あかねがベッドから降りてきて俺の枕もとへと座った。
「何だよ」
俺が、あからさまにいじけた表情で答えると、
「…ごめんね」
あかねはそう言って、きゅっと、布団の中の俺の手を握った。
「…」
あかねが下を向いたまま黙っているので、
「…明日はいいんだろ?」
俺は、むくり、と身体を起き上がらせてそう呟いた。
「ぶきー!」
…手を握り合っている俺達の様子に気がついた良牙が、俺に飛び掛ってきたけれど、
「おめーはちょっと静かにしてろ」
俺は、そんな良牙を枕で押しつぶして静かにさせると、
「あかね」
「…うん。約束」
小さな声でそう呟いたあかねの唇に、軽くキスをした。
あかねも、そんな俺の唇に自分から軽くキスをすると、
「約束よ」
もう一度、そう呟いた。
俺たちは、寝る前にもう一度だけ、お互いの手をぎゅっと握り合った。
そしてその日は…別々の布団で夜を越す事となった。
いよいよ「約束」を取り付けることが出来た、三回目の夜。
いよいよ明日が、四回目。