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→新婚さんいらっしゃい 2

「おやすみなさい」


あかね達が結婚して二ヵ月ほどしたある日。
いつもは二人一緒に寝室に向かうはずのあかねと乱馬にもかかわらず、
今日はあかね一人だけが立ち上がりさっさと居間からでていってしまった。
「あら、乱馬、いいの?」
居間に残ってぶすっとした顔でテレビを見ている乱馬にお茶をすすめながら、のどかも驚いている。
「喧嘩の原因はなんなのよ?」
同じく居間でテレビを見ていたなびきが乱馬に尋ねると…

「はあ!?」

…その原因を聞いたなびきは、思わず居間のテーブルを「ちゃぶだい返し」さながら引っ繰り返しそうな勢いでさけんでしまった。
あかねと乱馬の喧嘩の原因。
それは…


「おかえりなさいのキスをあかねがしようとしたのに乱馬くんがたまたまそれを拒んだからって…バカじゃないの?あんた達」
なびきがため息まじりにそう言うと、
「なっ…い、いいだろ別にッ」
乱馬は耳まで赤くなりながら、
「今日はその…理由があって…」
「何よ理由って」
「その…あかねがキスしようと近付いてきてくれた背後にお義父さんがいて…ニコニコと俺とあかねのコト見てたから…何か遠慮というか気が引けたというか…」
「くだらない…」
乱馬の話す理由になびきは大きなため息をつくと、
「く、くだらなくねぇよッ。やっぱり結婚したとはいえ、娘が目の前で熱烈なキスをしてるの見るのはお義父さんだってあんまいい気がしないだろ!?」
「じゃあ熱烈にしなきゃいいだけの話でしょーが」
「いや、するからにはやっぱり…」
耳まで真っ赤にしてもごもごしている乱馬に、
「…アホくさ。犬も食わないわよ、そんな喧嘩。さっさと仲直りしてきなさいよ。今からしてやればいーじゃない。どーせ、いってらっしゃいだろーがおかえりなさいだろーが、いつもそれ以外にもいっぱいやってんでしょ」
なびきがあきれ顔でそう言うと、
「そ、そうだよなッ今からでも遅くねえよなッ」
乱馬は急に顔をぱっと輝かせ、
「じゃ、俺もう今日は寝るからッ」
そういうが早いか居間から飛び出てしまった。


「もう、怒る気にもなんないわよ。全く。だからさぁ、かすみお姉ちゃん。今日、お姉ちゃんの部屋で寝てもいいかなぁ?」
なびきが、飛び出していった乱馬の妙に嬉しそうな背中にため息をつきながらそう呟く。
「あら?どうしたのよ、珍しい」
そう尋ねるかすみに、なびきは、
「あの様子じゃ、今晩はかなりご盛んなことになりそうだから、いつもにも増してさぁ。とてもじゃないけど隣の部屋でなんて寝てらんないわよ」
なびきはさらっとそう言って肩をすくめてみせた。
かすみを始めその場にいたのどかも玄馬も、
「なるほど…」
と頷いていた。



「…」
そして。
乱馬が二人で使っている部屋(元はあかねの部屋)に入ると、真っ暗い部屋の中、あかねが壁ぎわに身体を寄せて既に横になっていた。
乱馬がさっそく布団に潜り込み、そんな寝ているあかねの身体に手を伸ばすと、あかねが無言でその身体をよじって乱馬の手から逃れた。
「まだ怒ってんの?」
乱馬はそんなあかねの身体を、今度は簡単に逃れないようにしっかり捕まえた。
「…」
あかねは何も言わないが乱馬と目をあわせようとしなかった。
「だから…あんとき説明できなかったけれど、あかねの後ろにお義父さんがいて俺たちを見てたから…」
「…」
乱馬が説明しようとしても、あかねはご機嫌ナナメなのかやっぱりそっぽを向いている。
「あかね」
「…」
あかねは、乱馬の問いかけに全く反応しない。
…起きているのは、分かっている。
なのに、謝っても体を引き寄せても全くあかねは自分に対して反応してくれない。

…ならば。

「…」
乱馬は、一回大きく深呼吸をすると、自分に背を向けたままのあかねの顔を背後から触れた。
そして、
「…ッ」
あかねが少しだけ乱馬のほうを振り返った瞬間に、有無を言わさずいきなりそんなあかねにキスをした。
「ちょッ…やだッ…」
あかねが慌てて乱馬から離れようと、乱馬の胸を押し返そうとしても、乱馬はそう呟くあかねの言葉さえも遮るように、息もつかせぬようにキスをする。
「やめ…乱馬ッ…や…」
それでも初め、あかねは必死に抵抗していたけれど、キスをしながら片腕は自分の体をしっかりと抱きしめて離さず、そして片手は自分の頭を優しく撫でるその温かさに、
「…」
あかねも次第に暴れることなく、大人しくなった。
「ん…」
キスすることに抵抗をしなくなったあかねは、小さな吐息を漏らしながら、
自分を抱きしめている乱馬の体へとゆっくりと腕をまわした。

…あまりに夢中でキスをしていて、あまりに夢中で舌を絡めていて二人の頭の中の時間の感覚が狂う。

暗闇に響くのは、規則正しく時を刻む時計の針の音と二人の少し荒い吐息。
冷静さと理性を一瞬で吹き飛ばしてしまうようなその数少ない音は、
更に二人をその行為へと没頭させる。
…と。
「…」
ふと、唇が触れるか、触れないか…微妙な距離まで、乱馬が顔を離した。
「乱馬…」
あかねがそんな乱馬の顔を見つめると、
「…今のが、夕方出来なかったお帰りなさいのキス」
乱馬はそう言って、再び顔を近付けてあかねの唇に触れた。
「…お義父さんがいる前でこんなコトできないだろ?」
「うん…」
「納得したか?」
「うん…」
乱馬の説明に、あかねはようやくコクン、と一回頷いた。
「よしよし」
乱馬は、そんなあかねの頭を嬉しそうに撫でた。
そして、
「じゃあ…」
そう言ってあかねの体を再びぎゅっと力をいれて抱き寄せると、
「これからは、仲直りのキス」
再びあかねの唇に触れた。
「あ…」
…そのキスが、あまりにも「熱く」、そして長かったので、あかねは思わずそんな吐息を漏らしてしまった。
乱馬はそんなあかねを嬉しそうな顔で見ると、
「仲直りのキスは、何も唇だけって訳じゃないからさ…」
そういって、再びあかねの唇に触れて今度は舌を絡ませながら、器用な手つきであかねの衣服に手をかけていく。
「…あんまり見えるところに痕、つけちゃダメよ」
…夢中になって、暗闇に映えるあかねの白い肌に相反するような「赤い印」をつけてゆく乱馬にあかねが少し戒めようとすると、
「じゃあ、見えないところならいくらでもいいんだな」
乱馬は全く懲りない口調でそう言っては、あかねの肌に唇を容赦なく滑らせる努力を惜しまない。
「ちょッ…くすぐったいよ、乱馬…あッ…」
あかねがあまりにもそのくすぐったさに身をよじると、
「…あんまり大きな声だすと、隣の部屋のなびきに聞こえるぞ」
乱馬は悪戯っ子のような表情でそう言うと、あかねを組み敷くように上から見下ろし、
「ま、新婚さんだし…少しは大目に見てくれるよな?」
「何よ、大目って…」
「だってさ…」
そう言って、ボタンの半分外れたあかねの服に再び手をかけ全てのボタンを外すと、
「仲直りのキスをしたら、次は…な?」
そんな事を言って、服の下からチラチラと見え隠れするあかねの白い肌を指でそっとなぞりながら、にっと笑った。
「…もう」
あかねがそのくすぐったい感覚にビクッ…と身を竦めながらちょっと頬を赤らめると、
「ま、あかねが声を出さないように我慢できるなら話は別だけど」
乱馬はそう言って嬉しそうな表情で再びあかねに抱きついた。
「…わかんない」
あかねも、そんな乱馬の耳元でそう呟くと、再び、自分を抱きしめているその乱馬の身体へとゆっくり腕を回して目を閉じた。




町内で噂の新婚さん、
その喧嘩は、どうやら犬も食わないらしい。

 

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