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思うようには(Side-A)
ある日の夕食後のこと。
たまたまつけていたTVで、「親子特集」をやっていた。
若い母親と赤ちゃんが、ペアルックをしていた。
そのペアルックを、”デザイン”や”着こなし”などなど。
それぞれを自慢しあっては披露する…という番組だ。
「わー!かっわいいー!」
デニムやレース、カントリー風。
色々なバリエーションの洋服に身を包まれ登場する親子に、
「可愛いなあ…」
あたしは思わず、声をあげる。
「そうか?」
そんなあたしの横では、
乱馬が興味なさそうな顔でそんなことをぼやいた。
「そうよ!全く、夢ってもんがないわけ?あんた」
あたしはそんな乱馬を軽く戒めると、
「あたしもあんな風に子供とペアルックの洋服、着て見たいなあ」
「不器用なくせに」
「うるさいわねッ。いいの、かすみお姉ちゃんとかに手伝ってもらって、子供用の可愛いお洋服作るんだからッ。すっごく可愛い生地を売ってるお店は知ってるのよ?例えばね…」
…やれ、「あそこの商店街のあのお店は」とか。「デパートの生地売り場は」とか。
あたしは乱馬に色々と話を聞かせてあげているのにも関わらず、
「ふーん。あかねは子供とペアルックがしてえのか」
…乱馬は特にあたしのその「話」に反応する事もなく、妙に
「子供とペアルックね。ふーん子供と」
と、その部分だけ何べんも呟いた挙げ句、そのまま居間を出て行ってしまった。
(まーったく、もう。本当にオシャレとかショッピングとかに興味がないんだから)
あたしは、そんな乱馬に対して一人、ブツブツと文句をいいながらTVを再び見始めた。
…と、その時。
「あら?あかね」
ガラッ…
ふいに、居間の入り口の引き戸が開いて、なびきお姉ちゃんが居間の中へと入ってきた。
「あかね、あんたここにいていいの?」
「え?」
しかし。
なびきお姉ちゃんは、居間に入ってくるなりあたしにそんな質問をしてきた。
「なんで?」
あたしがそれを不思議に思って、なびきお姉ちゃんに聞き返すと、
「いや、ね?今さ、ここに来る途中で乱馬君とすれ違ったんだけど。”よーし!”とか叫びながら、階段を元気に昇っていったわよ。嬉しそうな顔をして」
「…は?」
あたしは、なびきお姉ちゃんの言葉に思わず怪訝な顔をしてしまう。
…乱馬の部屋は、一階。
二階にあがったって言う事は、イコール、あたしの部屋に向ったって事だ。
しかも、元気に階段昇った上に嬉しそうだったって……何で?
…
「あーあ。あかね、あんたあの狼少年を一体何て言って誘惑したのよ?」
「ゆ、ゆ、誘惑だなんてそんなッ。あたしはただ、TVをみながら”子供とペアルックしたい”って…」
あたしは慌ててなびきお姉ちゃんに弁明すると、
「…あんたねえ」
そんなあたしに対し、なびきお姉ちゃんは「フウ」とため息をついた。
そして、
「あのね?あかね。あの狼少年の前で”子供とペアルック”する夢を語るのはいーけどさ」
「うん」
「それってまずは、あんた…あんたに子供が居ないと話にならないわよね?」
「うん」
「てことは、あんたが子供を産むわけで」
「そうよ」
「誰の?」
「誰のってそりゃあ…あー!」
「…そりゃー、張り切るでしょうよ」
「だ、だって、そんなッあたし別にそんなつもりで言ったんじゃッ…」
「あら。あかねのその思いはまるで伝わってないみたいね、お気の毒。観念するのね、あかね。ま、程ほどにしておきなさい」
…なびきお姉ちゃんは、真っ赤になってワナワナと震えているあたしの頭をポンポン、と叩くと、
「じゃ、あたしは小1時間ばかりここにいるからね」
「…」
「がんばって」
そんな事を言いながら、ドサッ…とTVの前に陣取ってカラカラと笑っていた。
(あ、あ、あのバカ男ー!)
あたしは、ワナワナと震えたまま居間を飛び出し、まずは一度ため息をついた。
(そういや、やけに”子供と”の部分をなんべんも呟いてたっけ)
…全く、何でこんな事にだけ想像力が豊かなのかしら。あたしは思わず頭を抑える。
そして、
(あーあ、もう…きっと今更あたしが何を言っても聞く耳持たないんだろうなあ…)
…十中八九、あたしの部屋でニコニコしながら待っているだろうあの狼少年の姿を思い浮かべ、あたしはもう一回ため息をついた。
…あーあ、もう。
”子供とペアルック”なんて。
きっとステキな事なんだろう、と夢見てみたのはいいけれど、「今はまだ想像だけで楽しんで…」なんて。
そんな風に、都合のいい事ばっかりになんて、どうやら、あたしが思うようには行かないみたい。
