CONTENTS
SEARCH
キーワードやタイトルでサイト内小説を検索したい場合はこちらからどうぞ。使い方が分からない場合は、上記の「How to use Search」をご覧下さい。
全てのものには理由がある
「え、何で塗るの?」
「何でって・・・たまには良いじゃない」
「塗る必要、ないじゃん」
「えー・・・?」
とある休みの日。
久しぶりに見たい映画があったので、乱馬と一緒に出かけることになった。
隣町に新しく出来た大型の映画館。はじめて行く場所というのに加えて、久しぶりに出来る外での乱馬とのデート。
ずいぶんと前から楽しみにしていたあたしは、支度をしている今この瞬間も張り切っている。
でも、
鏡に向かって口紅をちょっと引こうとしているあたしの背後で、乱馬が不思議そうな顔でそんな声をかけてきたのだ。
「・・・」
せっかくのデートだし、普段塗っているリップじゃ味気ないかな?なんて思ったのに。
乱馬と一緒に出かけるんだし、おしゃれしたいし、「可愛い」とか言われてみたいと思ったのに。
塗る必要ないって、何でだろう。
おしゃれなんてしても、変わらないってことなのかなあ?
・・・そうだったらなんか、ショックだな。
「・・・」
あたしが塗ろうとしていた口紅を手にそんなことを考えていると、
「だって、どうせすぐ落ちるのに」
「落ち、る?」
「キスするたびに塗りなおしてたら、めんどくさいじゃねーか」
何回すると思ってんだよ、と、乱馬は妙に偉そうな口調でそういうと、鏡を見ていたあたしの背後からきゅっと、抱きついてきた。
「・・・じゃあしなきゃいーでしょ」
「無理だね」
「何でよ」
「だーって。俺も楽しみにしてるわけだし」
おしゃれとかされると身体が勝手に動いちゃうんだよなあ。乱馬はそう言っている側から、にゅっと唇を差し出してあたしの唇に重ねる。
どうやらさっきの発言、別に口紅やおしゃれに興味がなくてぶっきらぼうに口にしたわけではなく、
彼には彼なりの理由があってのことらしい。
「・・・」
あたしはもう一度、軟体動物のようにあたしに抱きついている乱馬と軽く唇を重ねると、
「・・・それじゃしょーがないよね」
塗ろうと思っていた口紅をそっと、鏡の前においてある小箱の中へとしまいこんだ。
「そーそー。第一今塗ったら、家から出る前に落ちるよ全部」
「もー」
「しょーがねーだろ」
そして、
最後にもう一度、今度は少し長めのキスをしてから乱馬と二人、休日デートへと出かけたのだった。
時には不思議な問いかけも、その真意は必ずある。
全てのものには理由がある。
