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出発確認
たまたまやった商店街の福引で、豪華ペア旅行を引き当てたあたし。
せっかくだからと、お父さんやおじ様、おば様に譲ろうとしたら皆予定が合わなくて、
結局はあたしと乱馬が二人で出掛けることになった。
普通、高校生二人の男女が旅行に行くとなると色々と問題が発生するものだけれど、
「旅行!いいじゃないか!」
「仲良くね」
・・・我が家はそれが異例というか。
許婚で恋人同士である二人が旅行をすることに、何故か家族は大賛成。
結果、あたし達は何の問題もなく、旅行に出発することとなったのだ。
しかも「旅行」となれば、もちろん泊まり。
「荷物、入りきれるかなー」
・・・普段修行に行くのに荷造りなんて慣れているはずの乱馬が、やけに楽しそうに謎の包みや袋を鞄につめていたのも気になりはしたけれど、
彼も楽しみにしているのかな、と思うとそれはそれで嬉しい。
そうこうしている内に、出発日当日を向かえ、あたし達は家族全員に見送られて家を出るべく玄関にでたのだ。
でも、
「バンザーイ!バンザーイ!」
「乱馬君、あかねをよろしくね!」
「ひゅーひゅー」
・・・
ただの旅行にも拘らず、家族総出で見送りに来こられると・・・何だか新婚旅行にでも出発をするかのようだ。
「乱馬、忘れ物はないの?」
「ねえよ」
「あかねちゃんに迷惑をかけちゃダメよ、貴方は男の子なんだからリードしてあげないとね」
「わかってるって」
早乙女のおば様は、乱馬にあれこれと気を使い声をかけている。
男の子はいくつになっても、母親の心配の種なんだろうな。
それに対して、めんどくさそうでも全てちゃんと答える乱馬が何だか妙に微笑ましく、
万歳で父親に送り出されてしまうあたしには、少し二人のやり取りが羨ましい。
それでも、
「あかねちゃん、気をつけてね」
「うん」
「お土産、忘れるんじゃないわよ」
「うん」
あたしには、お母さんはいないけれどお姉ちゃん達がいる。
あたしは、二人が声をかけてくれた言葉に丁寧に答えていった。
と、
「乱馬君もお土産忘れないでよね」
なびきお姉ちゃんが、あたしだけではなく乱馬にもそう、声をかけた。
どうやら、お土産は二人でまとめて、とか家族で一つ、ではなく一人ひとり個別に買ってこいということらしい。
「家族で一つでいいだろうが」
「二人行くんだから、それぞれが違うのを買ってくれば二種類楽しめるでしょ」
「楽しむのはおめーだけだろ」
「いいから、分ったわね?」
「しょうがねえな」
でも、何だかんだ言って、乱馬もなびきお姉ちゃんには逆らわない・・・というより指示に従う。
乱馬は、お土産の指示の他にも色々となびきお姉ちゃんから声をかけられてそれにイチイチ真面目に答えていた。
「あーそれから、乱馬君」
「何だよ」
「あかねに迷惑掛けるんじゃないわよ」
「かけねえよ」
「お金には余裕を持たせた方が男としてランクが上がるわよ。何なら旅行資金貸してあげようか?高利率で」
「結構だ」
「それと乱馬君、思い出は作っても子供は作って来ないように」
「・・・」
「カメラはフィルムよりデジカメの方が何かと便利よ。貸してあげましょうか?一日二千円で」
「ポラロイドは借りてきたから。そっちと使い分けるつもりだ」
「お土産は、ダサイ置物とペナント以外にしてね」
「注文が多いな」
・・・
「・・・」
ん?
乱馬とお姉ちゃんのやり取りを聞いていたあたしは、思わず首をかしげる。
なんか今、一箇所だけ返事をしないところ・・・無かった?
まあ、何故乱馬がポラロイドカメラを借りこんでいるのかも凄く気になるんだけど、
それよりも、どうして他の質問にはすらすらと答えるのに一つだけ答えなかったんだろう。
それとも、あたしに聞こえなかっただけなのかしら。
・・・
「ねえ」
「なんだよ」
「さっき、なびきお姉ちゃんと話している時にさ、答えなかった質問あったでしょ」
何となくそれが気になったあたしは、家を出発して駅まで向かう道の途中、乱馬に聞いてみることにした。
すると、
「あー、だってほら、守れないかもしれない確率の高いものは返事しない方がいいだろ」
返事をしたら嘘になるかもしれないしー・・・と、乱馬はニコニコしながらそれに答えた。
どうやら、あたしが聞こえなかっただけとかではなく、意図的に答えなかったようだ。
でも、その回答内容にはかなりの問題発言が含まれているのですが?
・・・
「何で守れないのよ」
「カミサマノオボシメシだから」
「どこが神様の思し召しなの」
「いいだろー」
「・・・作らないよ?」
「分からないだろ」
「分かるようにしなさいよ」
「いいか、あかね。ソウイウコトは人の意図とは関係の無い確率で決まっていることなんだぞ」
「はい?」
「生命の神秘というのはな、遥か古より運命確率を神様が・・・」
「あんたが言うと胡散臭いのよっ」
ゴスッ
あたしは調子の良い乱馬の頭を拳で思い切り殴ると、ため息をついた。
「せっかく色々と持ってきたのに」
「知りませんっ」
「ポラロイドだって借りてきてるんだぞ、すぐに撮ったものを見ることが出来るんだぞっ」
「あんたって人は・・・」
あたしは、そんな事をぼやいている乱馬に再び大きなため息をつく。
出発前の確認事項、彼が返事をしない項目は要注意。
