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あなたの夢を叶えましょう
「ね、ね、アレやりたい」
ある日の夜。
勝手にあかねの部屋でくつろいでいた俺に、それまで居間で出テレビを見ていたらしきあかねが戻ってくるなりそう言った。
そんなあかねは、身体のラインがくっきりと判るブルーのセーターに膝上のプリーツスカートといった出で立ちで、
それがニコニコと可愛らしい笑顔で俺に近寄ってくるとなると、俺としてはもう堪らなく嬉しいわけで。
そのあかねが、「アレをやりたい」と俺にねだる。
・・・
「・・・」
アレ、といったらやっぱり・・・アレか?
そうか、あかねの奴随分と今日は積極的に・・・俺はそんな事を思いながら、イソイソとズボンを脱ごうとしたが、
「違うでしょっ」
ゴスッ
あかねはそんな俺の頭を容赦なく拳で殴り、
「あれって言うのは、話題のCMのことよ」
「CM-?」
「そうよ。もう、何考えてんのよ、あんた。ほら・・・」
と、そこでようやく俺に状況を説明した。
「・・・」
ったく、だったら最初からそうしろよ、と本来ならば文句の一つもあかねに言ってやりたいところだが、そこは惚れた弱みなので仕方ない。
俺は大人しくあかねの話を聞いてやることにした。
・・・あかねが話した「CM」とは、今放映中の車のCMのこと。
彼氏と彼女がいて、彼女が「寒い」という。
彼氏がマフラーを貸してやろうとすると、「それよりもー」とか言いながら、彼女は彼のセーターの中にもぐりこむ。
で、彼女がぴっとりと彼氏に抱きついて、それを彼氏が抱きしめる・・・と、若者に人気の爽やかなCMだ。
テレビが大好きな俺も、そのCMはちょくちょく見かける。
俺なんかは、そのカップルよりもその背後に見えるメインの車の方が何となく興味はあるけど、あかねは違うんだなあ。
それが、男と女の違いか?何か面白れえなあ、それ。
「ふーん・・・」
俺はあかねの話を聞きながら、ぼんやりとそんなことを考えていた。
と、
「ね、ね、やろうよ」
あかねがそんな事を思ってる俺の傍に腰掛けて、ユサユサと俺の身体を揺らした。
これは、あかね特有の「おねだり」スタイルだ。コレをやり始めると、あかねは頑固。日頃の経験で俺はそれを体得していた。
「ったく、すぐにマネしたがるなんて子供だな」
・・・まあ、別にマネをした所で何が減るわけでも起こるわけでもないし。
頑固なあかねを無理に説得するよりは大人しく言う事を聞いてやったほうが、後々楽だ。
・・・
俺は、とりあえず身体を起こした。
そして、キラキラと目を輝かせて俺にねだるあかねの唇に軽くキスをした後、
「しょうがねーなあ」
「やった!あのCMね、前から憧れてたんだ!ほら、たくさんシリーズがあるでしょ?」
「・・・まさかそのシリーズ、全部やろうっていうんじゃねえだろうな」
「とりあえずは今のシリーズだけでいいわ。えへへへ・・・」
「・・・」
ったく、女って奴は。でも、無碍に却下できないのもやっぱり惚れた弱みって奴だ。
「・・・」
俺は心の中でため息を付きつつ、そんなあかねの願いを叶えてやるべく立ち上がった。
CMだと、二人は「立ったまま」くっついているからだ。
「えへへへ・・・」
あかねも、そのCMと同じシチュエーションにするべく、立ち上がって俺の隣に並ぶ。
そして、
「寒いー。乱馬、寒いー」
いかにもわざとらしく、そして何故か芝居がかった感じで、早速あかねが始めた。
「そうか、寒いのか」
あー、何やってんだ、俺は。
何となく冷めた自分がどこかにあるも、
俺はあかねに合わせてそう答え、とりあえずベッドの掛け布団を掴もうとするも、一瞬躊躇した。
本来ならば、マフラーを渡してやるのが正しいシチュエーション。でも今はマフラーは無いので、とりあえず布団で代用。
一応ここまでは、CMのシチュエーション通りだ。
えっと、この後は確か、あれだな。一つのセーターの中に二人で入ってくっつくんだよな。
CMどおりだと、俺のセーターだっけ?
あれ?でも俺・・・まあ、なら仕方ないか。代用を立てれば済むことだし。
だとすると・・・
・・・
・・・・・・
ズボッ
「きゃー!?」
俺は掛け布団を手にするのをやめ、一瞬次の行動を考えるも、
次に動き出したときには、あかねが着ていたブルーのセーターの中へとすばやく、自分の頭を突っ込んだ。
「何っ何すんのー!これじゃCMと違うでしょー!」
勿論あかねはそんな俺の行動に驚いて、俺を自分のセーターの中から引きずり出そうとするも、
「しょうがねえだろ」
「何がしょうがないのよっ」
「だって俺、セーター着てねえし。お前がセーター着てるなら、お前の服の中に俺が入らないとシチュエーション通りにならないじゃないか」
代用、代用。俺はそう言いながら、セーターの中のあかねの肌にすりすりと頬を寄せる。
「あー、あったかい。ついでに柔らかくていい感じだ」
「いやー!この変態っ・・・あ、あたしはあのCMみたいに、彼氏に抱きつきたいだけなのにー!」
俺がくっつくのがくすぐったいのか、あかねは身体を捩り暴れながら、ベッドの上へと倒れこんでしまった。
「何だ、本心はくっついていたいだけなのか。じゃあ、夢を叶えてあげましょう」
勿論俺は、その台詞を待っていたとばかりに素早く、あかねのセーターから頭を出した。
そして、
「さ、どうぞ」
俺のセーター代わり・・・とばかりにベッドの掛け布団をシュルリ・・・と素早く自分の身体にかけ頭からすっぽりと身を隠すと、入り口をあかねのためにちょっとあける。
「何よ」
「ここに入れば、CM通りに彼氏に抱きつく事ができます」
「あ、あんたって人は・・・」
「さ」
俺は笑顔であかねを布団の入り口で出迎える。
あかねはそんな俺に対してため息を付きつつ、ノソノソと布団の中に入ってきた。
そして、中でニコニコしながら待っている俺にペットリとくっついた。
俺はそんなあかねの身体を自分の方へと引き寄せつつ、手際よく彼女の着ていたセーターを脱がせ布団の入り口から外へと投げ捨てた。
とりあえず、部屋の隅にセーターは飛んでいったのですぐに着用する事は難しいだろう。
・・・
「よしよし」
「なーにが、ヨシヨシ、よ」
「ほら、これでCM通りだろ。頭も撫でて身体も抱きしめて」
俺はそんなあかねの身体を改めてぎゅっと抱き寄せて、優しく髪や背中を撫でる。
「CMはこれ以上のことはしないのよ。だから、ずーっとこうしていてね。抱きついているだけだからね。それ以上のことしたら、だめなんだからね」
結局は身包みをはがれ、俺にやりこめられた形のあかねは意地悪くそう呟いた。
どうやらあかねの奴、それで俺と対等にやりあっているつもりらしい。
でも残念ながら俺は、そんなあかねの知恵に屈するような男ではない。
「CMは常に進化する。そしてその先を創造させるのが夢を与えるマスメディアだ」
「はあ!?」
「俺が創造する新しいCMは、放送禁止かなー。残念だ」
「なーにがマスメディア、よ。あんたが言うとうさんくさいのよっ」
「ナントデモイイタマエ」
「きーっくやしい!」
「あかねが最初に、やりたいって言ったんだからな。俺、お前の夢をかなえてやったんじゃねーか」
「あ、あんたって人は・・・」
「俺、すげえ優しい彼氏だよな。CM通りだよ」
俺はそんな事を言いながら、あかねの素肌をまだ覆っていた下着をすばやくめくり上げて、指で直接、顕になった柔らかい肌を触れ始めた。
俺のそんな様子にあかねも最後は観念したのか、
「滅多なことは頼むもんじゃないわね・・・」
「俺はいつでもいいけど」
「お断りよっ・・・はあ・・・」
そんな事を呟きながら、時折ビクン、ビクンと身体を竦ませながらも、俺にぎゅっと抱きついて目を閉じた。
一つのセーターに二人で入って抱き合うのもいいけれど、
出来れば俺は人肌で暖めあった方が・・・より愛を感じることも出来る気がする。
貴方がそれを望むなら、いつでもそれを叶えましょう。
アナタノユメヲカナエマショウ
