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→用意周到準備はOK

二人で出かける前の日は、色々と忙しい。
旅行もそうだけど、デートも準備をしている時は本当に楽しい。もちろんデート中だって楽しいは楽しいけど、それとはまた違うというか…
「うふふふ…」
明日は、電車で二駅ほど行ったところにある森林公園でのデート。
広いみたいだし、デートにも最適だって雑誌にも書いてあった。
久しぶりにのんびりできそうだ。
座る時に敷くレジャーシートに、お弁当をたべたあと使うタオル…あ、食べた後手を拭く為のウエットティッシュも忘れないように。そうだ、お姉ちゃんに借りたデジカメも…なんて。
あたしは鼻唄を歌いながら部屋で準備をしていた。
と、
「あかねー、お風呂あいたわよ」
ノックと同時にドアがあき、なびきお姉ちゃんが部屋に入ってきた。
「ありがと」
あたしが手にしていた荷物を床におき、お姉ちゃんに笑顔でこたえると、
「あんた達も物好きね」
「え?」
「デートで山登りだなんて。アクティブにもほどがあるわ」
お姉ちゃんがそんな事を呟いた。
「え?山登り…?」
森林公園にはいくつもりだけど、そこはただの公園だし、道だって舗装されてるから、山登りだなんて…?
あたしが首を傾げていると、
「あら違うの?乱馬君が用意しているところをみてたらてっきり…ポラロイドカメラも貸してあげたし」
「…ポラロイド?あたしがお姉ちゃんにデジカメ借りたの、知っているはずなんだけど…乱馬」
「さあ。その場で撮った景色の写真を出力して見たかったんじゃないの?」
「あの乱馬が…?」
「どの乱馬君か知らないけど」
「…」
一体、どういうことだろう?
あたしはお姉ちゃんにお礼を言って、とりあえず乱馬の様子を伺うべく乱馬の部屋へと向かった。
そしてこっそりと入り口から中を覗いてみると、部屋には乱馬一人だった。
どうやら、おじさまとおばさまは居間にでもいるらしい。
部屋の中の乱馬は、妙にニコニコしながら明日持っていくらしきリュックに荷物を詰めていた。
ニコニコしているのをみると、乱馬もあたしと同様楽しみにしているとは思うんだけど、
「…」
虫よけスプレーにビニールシート。それにお姉ちゃんが貸したって言うポラロイドカメラ。
タオルとポケットティッシュが二つ。二つと言うのがなんかやけにリアルだ。
更に、意味不明な短めのロープに、謎の小さな茶色い紙袋。
どこで購入してきたのか、制汗剤と汗ふきシートまで入っている。
ハンドタオルとか財布は勿論リュックに詰めているんだろうけど、ただのデートにしてはどう考えても荷物、多すぎないかしら。
それにこの荷物の種類というか多さというかこれはデートというより…
「…」
あたしが怪訝に思いつつじっとそれらの荷物をみつめていると、
「ん?どうした?」
あたしがのぞいているのに気が付いた乱馬が、さっと立ち上がり入り口までやってきた。
そしてあたしを部屋に引き入れ戸をさっと閉めると、素早く抱きついてきた。
見ている人がいないと分かると、すぐにこれだ。でも、嫌ではない。
あたしはそんな乱馬にきゅっと抱きつきつつ、
「あのね?」
「ん?」
「乱馬…どこにいくつもりなのかなと思って…」
あたしは腕の中から見上げるようにして尋ねてみた。
「どこにって?明日は森林公園にデートだろ?」
乱馬は不思議そうに答える。一応は分かっているみたいだ。
「そうだよね?」
「そうだよ?」
「…」
なのに、この荷物は何かしら。
あたしが乱馬の用意していた荷物をじっとみつめていると、
「ああ、これか?ほら俺は用意周到だから」
乱馬はあたしの額に軽く唇を押し付けながら言った。
「用意周到なのはありがたいけど…荷物多くない?」
「そんなことねえよ」
「ビニールシートはあたしも持ったよ?」
あたしが乱馬に尋ねると、
「座る分だろ?」
「うん」
「俺が用意したのは寝る分だから」
「…は?」
乱馬はにこやかに、でもハッキリした口調でそう言った。更に、
「山は虫も多いだろ?体中刺されたら困るし」
「…何で体中刺されるのよ」
「汗かいたまま服着るの、俺は良くてもおまえはなあ。だから、服がまとわりつかないように汗拭きシートで身体を拭くんじゃないか」
「…それ以前に、何で服を脱ぐ必要があるのよ」
「いや、全部脱がなくてもそりゃいいかもしれないけど」
「そうじゃなくて、あのね乱馬・・・」
ていうか、荷物の中のロープは何のために!?いや、そのポラロイドの意図は?!
謎の紙袋の存在とか、リアルなティッシュの数も気になる。
「…」
聞きたいことが多すぎてあたしが色々と言葉を選んでいるも、
「晴れるといいよなあ、晴れない場合は何とか木蔭で雨宿りをしながら・・・」
とかなんとか、あたしの心中をまるで理解していない乱馬は、ニコニコしながらあたしに身体を擦り寄らせている。
何だかあたしは急に頭痛を覚えた。
・・・用意周到なのはいいことかもしれないけど、先の先まで読んで行動しすぎるのもどうかと思うんだけど?
「・・・」
明日は、平穏無事にデートができるのかしら。
とりあえず、乱馬がお風呂に入っている隙にポラロイドとロープと謎の紙袋は荷物から抜いておこう…。
山の中の森林公園で、狼少年が野生に戻らないように祈りつつ、あたしは乱馬の腕の中でため息をついたのだった。

 

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