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→黙秘権

夜中にふと目覚めて横を見ると、あかねが気持ちよさそうに眠っていた。
さっきまで俺に塞がれてばかりだった、艶やかな吐息を洩らしていた唇が、今では健やかな息を吐いては震えている。
暗闇でもぼうっ…と白い肌。
だいぶマシになった寝相だけど、それでもかけ布団から無造作に足が飛び出している。
「・・・」
あーあ、もう風邪ひくっちゅーの。
俺は、何度かあかねに蹴り飛ばされながらも、
蒲団から飛び出した足を、丁寧にも蒲団の中に入れてやる。
全く、あかねの奴。下手に格闘技を心得ているから、寝ぼけていてもキック力が半端じゃねえ。
俺はそんな事を思いながらため息をついた。
すると今度は、
「んー・・・」
あかねがそんな声を洩らしながら、腕を蒲団の外に飛び出させた。
「・・・」
だから、風邪ひくっちゅーの。
足を入れたら手が飛び出るって・・・ヤジロベエか、お前は。
俺はその腕を蒲団の中にしまってやろうと、あかねに手を伸ばした。
が、
「わ!?」
ガバッ・・・
俺があかねの腕をつかもうとしたその瞬間、あかねが俺その手を思いっきり掴み、
「もー・・・どこ行ってたの、Pちゃん・・・」
そんな事を呟きながら自分のほうへと引き寄せた。
俺はそのまま、あかねの身体・・・胸のあたりへと顔を埋める。
もちろんそれは不可抗力の事故であり、俺が望んでそうしたわけではない。
でも・・・何故だろう。思わずそのまま顔を、動かしてしまう。
「しょうがねーなー・・・。俺はP助じゃねえっつーの」
俺は、しばらく両頬に感じる柔らかい弾力を堪能したあとに、ゆっくりとあかねの身体から離れた。
本当は、P助に間違えられた事に対しては不満で仕方がないのだけれど、
そのおかげでちょっと、いい思いも出来たわけだし。
それに、たとえあかねが起きていたって、正面きって胸に顔を埋めるなんてそうそうできる事でもない。
あかねが寝ぼけている時じゃないと、出来ないんだよな。
・・・

寝相が悪くても、俺と寝ているのにP助の夢を見ていても。
こんな特典というかおこぼれがあるんじゃ、あかねの事は怒れねえよなあ。

「乱馬、ごめんね。何か昨日、寝ぼけて乱馬のこと蹴っ飛ばしたような気がするんだけど・・・」
翌朝、そんな事を言いながらすまなそうな顔をするあかねに、
「気にするな」
蹴られた事よりも、その他の特典に満足な俺は、にこやかな笑顔であかねに接する。
「?あんた何か・・・隠してない?」
「何も」
「ホントにー・・・?何か、変だなあ」
勿論あかねは、怒りもせずにやけに紳士的で優しい俺に不思議そうな顔をしていたが、俺はあくまで、その事は秘密。自分の胸の中にしまっておく。



それは、あかねと一緒に眠る俺だけの、秘密。
たとえあかねに問われても、こればっかりは、言えねえぜ。
俺に与えられた特権は、
寝ぼけたあかねにするいたずらと、それを隠しつづける黙秘権。

 

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