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ご想像にお任せします
「なー、着て見せてくれってっ」
「嫌よっ」
ある日の夜。
あたしが昼間、友達と買い物に行って購入してきた新しい水着を乱馬に見せてあげたところ、
なぜか乱馬が執拗に、あたしにそれを着るようにとねだりはじめた。
…あたしが買ってきたのは、白いビキニの水着。
白のビキニなって、以前のあたしにはそんな大人びた物は着る自信なんてなかったのだけれど、
去年よりも少し、すこーし大きくなった胸があるゆえに思い切って試着してみた所、思うの他好評だった。
だから思い切って購入してみたのだけれど、
「夏になったら、嫌って程見れるわよっ」
「夏までなんて待てねえよっ」
…乱馬は、まるで「おもちゃを買ってもらえない子供」のようにジタバタと、あたしの前で駄々をこねてみせる。
「…」
本当はあたしだって、オニューの水着は乱馬に見せたい。
でも、こんな風に駄々をこねている乱馬に水着姿なんて見せたら、
「…」
…無事にそれだけで済むとは思えない。
人間は学習能力というものが身に付く、素晴らしい動物だ。
あたしは、自分の身に迫りつつある危機感を感じ、断固として申し出を断りつづける。
…と。
「…ちぇっ。じゃあいいよ。着てくれないなら、着ているところを勝手に想像するから」
あたしがなかなか折れないのに痺れを切らし、乱馬がため息をつきながらそう呟いた。
「想像するって?」
あたしが少しホッとしながら乱馬に尋ねると、
「だから、水着着たらどんなになるのかなーって」
乱馬はため息をつきながら、あたしの手から水着を引ったくった。
そして、
「…」
まずは、じーっとその水着を見つめていた。その後、
「…」
今度は改めてあたしのほうを見る。それを何度か繰り返していた。
「…」
…正直言って、何だかこう、背中がこそばゆいというか何というか。
ちょっと変な感じではあるけれど、でも着て見せて狼少年の餌食になるよりは増しなのか。
「…」
あたしはそんな事を考えながら、しばらく乱馬のその動向を覗っていた。
しかし。
「…へへ…」
その内乱馬が、なぜか妙に嬉しそうに…にへらっと笑った。
「…」
…何を想像しているんだろう。
あたしが怪訝な面持ちでその乱馬を見つめていると、
「…しょうがねえなあ」
とか、
「そんなカッコして…」
とか、
「ばかだなあ、そうじゃないだろー」
とか。
…乱馬は妙に嬉しそうな表情かつ、何だか一人で勝手に照れながらブツブツと呟いている。
「っ…」
ゾワゾワっ…と、あたしは自分の背中に大量の汗を瞬時に掻いた。
「きゃー!いやー!」
ドカっ。
…なので、あたしは思わずそんなの乱馬の頭を張り倒し、乱馬が手にしていた水着を奪い取った。
「な、なにすんだよっ。せっかく人が水着姿を想像してっ…」
もちろん、水着を奪い取られた乱馬はあたしに不服を申し立てるも、
「嘘つきっ。いやらしいっ。今、水着姿とは別の事も考えてたでしょっ」
あたしは、ブンブンっ…と水着を抱き締めながら頭を左右に振る。
すると乱馬は、
「…」
なぜか一瞬間を置いて、
「ば、ばかだなあ。そんなわけねえだろ。俺は純粋に、おめーの水着姿を…」
…と、あからさまに目を泳がせながら答えた。
「この…スケベ!何考えてんのよっ」
これじゃあ、素直に水着を着せ見せたほうが可愛げがあったわよっ。…あたしが水着をタンスの中にしまいこみながらそう叫ぶと、
「しょうがねーだろっ。おめーが素直に着てくれないからっ」
「だ、だからって、何想像してんのよっ」
「変な事なんて考えてねえよ。ちゃんと水着姿のあかねを思い浮かべたのに」
「ホントにそれだけ?」
「…最初は水着をな、着てたんだよ。でも急にあかねがなー…」
「あ、あたしが何よ」
「積極的に」
乱馬はそう言って、はー、と嬉しそうにため息をついた。
「あー!水着姿、とか何とか言って、裸を想像してたんでしょっ。エッチ!」
「ばかだなあ、裸だったのはオメーだけだぞ?いやあ、あれはいい脱ぎっぷりだった…」
「余計に悪いでしょー!」
何で、水着姿を想像してるのにあたしだけが裸なのっ。
ていうか、何勝手に想像で脱がしてんの!?…あたしが手当たり次第、そこら辺にあった物を乱馬に向かって投げつけてやると、
「なんであたしだけが裸なのって、そりゃお前決まってんだろ。二人とも裸だったら水着見せるドコロの話じゃすまねえだろうが」
「こ、この変態がー!」
ドカっ…
…あたしが投げた大きなクッションが乱馬の顔面に辺り、ボスっ…と乱馬がベッドに沈んだ。
「…ったく、もうっ」
これじゃあ、まだ素直に着て見せたほうが後腐れなかったわ。
あたしはそんな事を思いながら、大きなため息をついた。
もちろんそんなあたしは、
「まー、ホントに仲良しねえ。水着姿を撮れなかったのは残念だけど」
…部屋の外で、なびきお姉ちゃんがそんな事を呟きながら、
「あら、こんな所にカメラが…」
ドアに仕掛けたらしいカメラを、わざとらしい口調でそんな事を言いながら取り外していた事など、気が付きもしなかった。
