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幸せview

 

高校生だからお金もないし、それに前もって予約をするような段取りが良く決まった事でもなく て。
電車で出かけた、いつも住んでいる所よりもちょっと、離れた街…
デートをした後、どうしても家に帰る気分になれなくて、二人で初めて、その街のホテルに泊ま った。
そんな、二人だけで外泊をした翌日の朝。


「はい、これ」
「サンキュー」
清算をして外に出て、家に帰る前に腹ごしらえをしようか…と、ホテル街のすぐ近くのファース トフード店に入った二人。
それぞれが、朝食用のメニューを注文して向かい合って席につく。
ファーストフード店では、朝10時以前には「ブレックファーストメニュー」という通常のメニューと は違う、少し胃に軽めのメニューが用意されていて、
あかねは「ホットケーキとアイスミルクティー」セットを、
乱馬は、何やらソーセージと卵が挟んである「ベーグルサンドとホットコーヒー」セットを注文し ていた。
乱馬が注文するのを横で聞いていたあかねは、
「…あんた、コーヒーなんていつも飲んでたっけ?いいの?コーラじゃなくて」
注文した品を手にとり席へと向かう最中に思わずそう尋ねてしまうと、
「えっ…写真にコーヒーが映ってただろ!?だからあのベーグルサンドにはコーヒーじゃなき ゃいけねえと思ってっ…」
「ドリンクは下の枠の中からお選びくださいって書いてあったじゃない」
「なにー!?」
乱馬は、妙に悔しそうな口調でそんなことを叫んでいた。
…どうやら、注文する事になれていない事が災いして、自分の意図しないメニューを注文して しまったようだ。
「しょうがないわねえ。あたしのアイスミルクティー、飲む?」
「いい…コーヒーで」
甘い物は好きなくせに、甘い飲み物は余り好きではないらしい、乱馬。
今日はしぶしぶとホットコーヒーを飲むことで観念したようだ。
そんな乱馬の唯一の救いは、ホットコーヒーのみおかわりが自由、ということだろうか。

「さ。食べよう」
「そうだな。あー、腹減った。でも、外だとおかわりが出来ねえんだよなあ」
「コーヒーは自由よ」
「食いもんの話だ」
そんなことを言いながら、ファーストフード店の朝食メニューにかぶりつく乱馬と、
「あたしのを半分あげるわよ、ほら」
そんな乱馬に、笑顔で自分のホットケーキを半分分け与える、あかね。
乱馬はそんなあかねからもらったホットケーキを、シロップやバターもかける前にぺろりと平ら げてしまう。
あかねはそんな乱馬の様子を笑顔で見つめながら、自分の分のホットケーキにシロップと、そ してバターを塗りつけた。
焼きたてのホットケーキは、ジュワ…と乗せたばかりのバターを溶かし、その上からかけたシ ロップと、ジワリ、ジワリと融合させていく。
あかねは、滑らかに溶け合ったシロップとバターをナイフで小さく切ったホットケーキに充分と 絡めた。
そして自分の口へとゆっくりと運んでいくも、
「…」
その途中にふと、何気なしに自分達の周りの席へと目をやった。
…周りには、自分達と同じように若いカップルがちらほらと席についていた。
どのカップルも、仲良く朝食用のメニューを食べている。
その顔は誰もかれも幸せそうに見えた。
作ったような笑顔ではなくて、何だかこう…見ているこっちまで幸せな気分になれるというか。
向かい合って座って、楽しそうに会話を交わしては笑いあう。
「笑う」と表現するよりも、それは、
「微笑む」
そういう表現が、あっていると思う、そんな感覚だ。
「…どうした?」
と、その時。
周りを眺めていて、まだ一口しかホットケーキに手をつけていないあかねに気が付いた乱馬 が、声をかけてきた。
「あ、うん…別に」
「なんか気になることでもあるの?」
「ううん…ただね、周りにカップル、多いじゃない?」
「そうだな。ここの店、ホテル街から一番近いファーストフード店だし仕方ねえよ。それがどうか したのか?」
「うん、あのね、ほら…どんなカップルも幸せそうに見えるんだよね。何かそれに見とれちゃっ て」
あかねがそう言って乱馬を見ると、
「どんなカップルもそう見えるって事は、俺たちだってそう見えるって事だろうが」
「え?」
「俺らだって、他には負けてねえよ」
乱馬はそう言って、ごほん、と咳払いをした。そして、
「ほら、冷めちまうぞホットケーキ。食わねえんなら俺が食う」
そういって、あかねの目の前に置かれているホットケーキに手を伸ばそうとする。
「だめっ。さっき半分あげたでしょっ」
あかねは、自分の分のメニューを乱馬から必死で守ると、
「食べるもんっ。食べますーっ」
「そうそう、冷める前に食べなきゃ損ソン。冷めるとまずいぞ」
そう言って、食後のホットコーヒーをすする乱馬の目の前で、冷めかけて乗せられたバターとシ ロップが固まり始めたホットケーキを再び食べ始めた。
「まだおいしー」
「そりゃ良かったな」
あかねが冷めかけのホットケーキを黙々と食べるのを、乱馬は穏かな顔で見つめていた。
…きっとこの光景を、先ほどのあかねがそうしていたように、他のカップルが見つめたのな ら、
『ねえ、あのカップルも幸せそうね』
そう言うに、違いない。


大好きな人と、一緒にいて。
楽しく食べる、朝ご飯。
例え冷めてしまっても、それがまずい、はずがない。
朝日が差し込む店内に、点在しているカップルと、
それと同じ数だけ存在する、幾つもの「幸せ」。
ほんの些細な事だけれど、こうして二人で朝ご飯を食べているこの時間。
そして、幸せなカップルを眺めながら、
「自分達もああ見えるんだ」
そう感じる事ができる、ちょっとした幸せ。


外泊した朝に見る、ほんの些細な幸せview。

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