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→あと五分

「もー…、そろそろ起きなきゃ間に合わない…」
「あと五分だけ。な?」
「うー…」


その日は、今話題の映画を見に行く約束をしていた。
一回目の上映が、九時十五分。
話題の映画ゆえに、遅い時間帯になればなるほど混むということは直ぐに予想が出来た。
なので、一番早い朝の時間帯を狙って出かけるはずだった。
昨夜も、寝る前に何度もそれを確認した。
明日は早く起きなくてはいけないから…と、あかねは悉く乱馬にも言って聞かせた筈だった。
それなのにも関わらず。
「もう、だめだってばっ…今日はもう時間がっ…」
「あと五分だけだって…」
「や、もうっ…ダメだって…」
布団の中で、起き上がろうとするあかねの身体を掴まえた乱馬は、一向に離れようとしない。
それどころか、布団の中で露わになっているあかねの白い肌に、容赦なく顔を押し付けている。
イヤイヤ、と首を左右に振って拒む彼女を、楽しんでいるというか何というか。
決して「あと五分」で終わりそうもないようなその行為を、乱馬は楽しんでいるとしかいいようがない。
「映画、見に行きたいのにっ…」
「午後もやってるだろ」
「午後は混むからって、昨日言ったじゃないっ…あっ…」
「あと五分、な?」
「…」
拒む彼女と、聞き分けのない彼と。
結局最後は、彼の思う通りになってしまうのだけれど、
「あんっ…もう五分過ぎたもんっ」
それでも尚、彼の首に腕を回しながら、あかねが小さな声で叫ぶと、
「どれどれ」
乱馬は、あかねの身体に抱きついたまで、枕もとの時計に手を伸ばした。
そして、
「起きる予定は?」
「七時でしょ。あと五分だから、七時時五分」
「残念、まだ七時だ」
といって、実際には七時を十分近く過ぎているその時計の針を、七時まで戻してしまった。
「あー!そんなことしたら、ホントの時間がわかんないじゃないっ」
あかねが時計の針を戻そうと、時計に手を伸ばそうとすると、
「だから、あと五分なんだって」
乱馬は、ニヤッと笑いながらあかねのその延ばした手を、布団の中に抱き込んでしまった。
そして、
「俺の気が済んだ時間が、五分後ってことで」
そんなことを言いながら、あかねの額や、頬や、首、そして唇にキスをする。
「もーっ…」
…ああ、今日は映画、見れないかもしれないな。
何となくそんな予感があかねの脳裏に走り抜けるが、
「…」
…嬉しそうに自分に抱きついている彼を、引き剥がせない自分も、否めなくはない。
あかねはため息をつきながら覚悟を決め、もう一度彼の身体に腕を回して抱きついた。




起きなくてはいけない時間まで、あと五分。
でも、その五分後がやってくるのは…いつになるかは分からない。

 

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