サイトマップwebclap!RSS

CONTENTS

SEARCH

キーワードやタイトルでサイト内小説を検索したい場合はこちらからどうぞ。使い方が分からない場合は、上記の「How to use Search」をご覧下さい。

→Novel目次へ戻る

夜伽絵図

 

「…でな、ヒロシがそこでさゆりに謝って、事なきを得た、と」
「うんうん」

俺の腕の中で、あかねがニコニコしながら、俺の話に相槌を打つ。
妙に楽しそうに、そして妙に、嬉しそうに。
学校にいる時の、気丈な感じのあかねじゃなくて、そこにいるのは、「俺が知っている」あかね。
素直に頷いて、直ぐに笑って直ぐに泣く。
それで、直ぐに甘えたがる、あかね。
今夜だって、俺の、何の事はない普通の話に対して、あかねはこうやって真面目に聞いては相槌を打ってくれる。
聞いてないわけじゃなくて、時折、「それで?」と催促とか混ぜたりしながら、ちゃんと話に乗ってくる。

…かわいーよなー。

「…それで…」
「うん」
あかねの頭を、片方の手で撫でながら。
俺は、素直にそう感じていた。
洗ったばかりの、いい香りがする髪。
そして、柔らかくて猫っ毛の髪。
手で触れるたびに、あかねはなんだか気持ちよさそうな顔をする。
そんな顔をされると、ますます俺は嬉しくなるわけで。
あかねが、愛しくてたまらなくなる。
でも…
「…俺の話、面白いのか?」
ふと。
俺は、話すのをやめて、あかねに尋ねてみた。
内容的には、ホントにくだらない話だし。
こうして、一緒に寝ながら語るような内容でも…ない。
それを、どうしてこんな風に一生懸命聞いてくれるのか。
俺には、それが不思議でならなかった。
「面白い」
…すると。
あかねは一言そういって、腕の中から俺の顔を見上げた。
「…面白いの?」
その言葉に、俺は一瞬パアっと表情を明るくするが、
「うん。それにね…」
そして、ふあああ…と軽くあくびをすると、
「乱馬の声をこうして聞いてると、安心する…」
そういって、俺の身体にぎゅっとくっつきながら目を閉じた。
「子守唄かよ」
何だそれ。
俺が、そんなあかねの頭をもう一度撫でながらそう呟くと、
「子守唄じゃなくて…ああ、ほら小さい子が夜寝る前に、絵本を読んでもらったりするでしょ?あれと同じかも…」
そういって、くすっと笑った。
「何だよ、それは」
「だって、そうなんだもん。だから、乱馬に話をしてもらうの、好きなの」
「…それだったら、俺じゃなくてもカセットテープでも置いとくか?」
「こうして、くっついて話を聞かされるのが好きなの」
だから、どんな話でもあたしには面白いの。
あかねはそういって、俺の顔を見た。
「それって、俺は喜んでいいのかなー」
俺が、複雑な表情をすると、
「喜んでいいのよ、きっと。ふふ、夜伽してくれるだなんて、乱馬ってばお父さんみたいね」
あかねは、無邪気にそんなことを言って、笑う。
「お父さんじゃねえよ」
俺は、よっこらせ、とあかねの上に身体を持って来るように布団の中で動くと、
「お父さんは、こんなことしないから」
そういって、身体の下に組み敷いたあかねの手を、シーツの上に固定させた。
「夜伽の度に、コンナコトしてくるお父さんだったら、問題だわ」
あかねは、ちょっと照れたような顔をしながらそういって、目を閉じる。
「だろ?」
俺は、そんなあかねにそっと唇を重ねると、そのまま彼女の身体に抱きついた。
…同じ、寝ながら囁くのなら、
内容の薄いくだらない話なんかより、愛を囁く言葉のほうがずっといい。
「それが、大人の夜伽です」
俺があかねにそう囁くと、あかねは照れたような表情で一度、頷いた。

ページトップヘtopへ戻る