CONTENTS
SEARCH
キーワードやタイトルでサイト内小説を検索したい場合はこちらからどうぞ。使い方が分からない場合は、上記の「How to use Search」をご覧下さい。
彼女の寝相
…ったく、寝相が悪いったらねえぜ。
必ずと言っていいほど、一晩に三回は、あかねによってベッドの外へと蹴っ飛ばされる俺。
今晩に限っては二回目、しかも机の隅に額を強打。
(…くッ…気持ちよさそうな顔で寝やがって)
赤くはれた額をさすりながら、俺はベッドの上ですこやかな息を立てて眠っているあかねを恨めしそうに見た。
昔に比べたら、チッとは良くなった方だと思う。
でも、それでもこれだ。
えーい、枕でも蹴飛ばしてやろうかッ。
…思わずそんなことすらフツフツと考えては見る俺だけど、
それでも、布団の上で気持ちよさそうに寝ているあかねの顔を五秒も直視していれば、どんなに腹が立つことよりも、
「…かわいーよなー…」
…そんなぼやきへと代わってしまう。
あー、もう可愛いったらねえぜ。
これで寝相がよけりゃ最高なんだけどな。
いっそのこと、寝ながら暴れないように縛り付けて…
「…」
そんなことを考えてたら、何故か俺の顔は自分でも驚くぐらいかッと熱くなった。
(な、何考えてんだ俺はッ。俺って奴はッ…)
自分で必死にそんな風に戒めるも、何だかチラチラとあかねに目だけは奪われる。
俺の想像の中では、あかねはもう大変な事になっていた。
(邪念がッ…武道家には邪念は禁物!)
ガン、ガン、と壁に頭をぶつけるようにして邪念を振り払おうとしている俺だったが、そうやって必死に「無心」になろうとしているにも関わらず、俺はあかねから目を離す事は出来ない。
「あー…もう…」
頭では自分を必死で抑えているのにも関わらず、俺の手は、もうあかねを抱きしめる為にガシッ…ガシッ…と抱きしめる練習をしている。
寝てても、もうそんなの関係ねえ。
触れたい。
抱きしめたい。
側に引き寄せたい。
…止まらない。
「あかねッ…」
そして。
もうどうにも止まらない気持ちを抑えきれず、俺が眠っているあかねに飛びつこうとした、ちょうどその瞬間。
「うーん…」
ゴロン、とあかねが不意に寝返りを打った。
「あれ!?」
抱きしめる予定だったあかねの体が所定の場所から動いてしまい、俺はスカッ…とその手を宙に切らせてベッドに倒れこむ。
「くッ…あかねッ…」
だけど、それぐらいじゃ俺だって諦める事は出来ない。
懲りずに再びあかねに抱きつこうと体勢を立て直すが、
「うーん…」
ゴロン。
あかねは再び寝返りを打って、俺の手をすり抜けてしまった。
「や、やるなお主…」
俺はそんな事を呟きつつも、
「あかねッ…」
三度目の正直ッ…とばかりに再びあかねに飛びつこうとするも、
「うーん…」
それこそ、
二度あることは三度ある…あかねは絶妙なタイミングで寝返りを打ち、再び俺の手をすり抜けた。
…もしかして、本能的に「嫌だ」と思ってるのか?
「…」
そんなあかねの態度に、俺は若干不安になってきた。
でもそれでも諦めきれなくて、
「…」
あかねの姿を見下ろしながら「どうしようか…」と悩んでいると、
「う…ん?乱馬…」
ふと。
今まで気持ちよさそうに寝ていたあかねが、急に起き上がった。
「あ…わ、悪い。起こしちまったのかな…」
…そんなあかねに、とりあえず心配そうな声を掛ける、俺。
するとあかねは、
「ちゃんと寝ないと…明日起きれないよ。ねよ?」
寝ぼけた口調でそんな事を呟くと、
「寝よ、乱馬」
そのまま俺に抱きついて、布団に倒れこんだ。
「わッ…」
俺はよろよろとそんなあかねと共に布団に倒れこみ、
「…」
…再び規則正しい寝息を立てたあかねの顔を間近に見て、再びあかねの体を抱きしめながらベッドで眠る羽目になった。
…なーんだ。
初めから、あかねを起こせばよかったのか。
「なーんでえ。俺の心配損か。へへ…でもラっキー…」
俺はそんな事を思いながら、ニコニコとあかねを抱きしめて目を閉じた。
が。
その数時間後に、俺は再びあかねによってベッドの下へと蹴り出されてしまった。
「だー!こいつ、一人だけ気持ちよさそうに寝てやがってッ」
そして、またそんな事を叫んであかねの寝ている姿をベッドの脇から見下ろす俺。
…あかねの寝相が治らない限り、俺の苦労は続きそうだ。
