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飛んだカップル
「あかね、お前そのスカート破けてるぞ?」
「え?」
クラスの仲良しグループで週末、
隣町のアミューズメントパークに遊びに行く事になったので、その時に着ていく洋服を前日の夜に早々と選んでいた、あたし。
そこへ乱馬が急にやってくるなり、いきなりそう言ってきた。
「…どこが破れてんの?」
あたしがそんな乱馬の言葉に驚いて、試着していたスカートに慌てて目をやったけれど、
「破れてないじゃない」
あたしが何度見ようとも、乱馬が言うように別に破れている場所なんて見当たらない。
「破れてるだろ、ほら、その横」
そんなあたしに乱馬は更にそう言って、あたしの履いているスカートの、横の部分を指差した。
「?」
あたしはその部分にゆっくりと目をやったのだけれど、
「…ふふ」
…あたしはその部分を見るなり、思わず吹き出してしまった。
「な、なんだよッ」
乱馬が急に笑い出したあたしを見てちょっとムッとした表情をした。
あたしはそんな乱馬に、
「ばかねー、あんた。これはスリットよ、スリット。わざと、こうやって切れているように見せてるのよ」
そう言って、スカートのサイドのスリット部分を指差しながら説明してやった。
「…そのスカート履いて、下に何か履くんだよなジーンズとか」
「履くわけないでしょうが。履くとすれば、ストッキングぐらいよ」
もう春だし、素足かもねー…と、あたしが軽い気持ちでそう言うと、
「…それ、履いていくなよ?」
…乱馬が、かなりブスっとした表情でそう呟いた。
「は?なんでよ」
あたしがキョトンとした表情をすると、
「なんでって…そんなの履いてたら足が見えんだろうがッ」
「足が見えるって…当たり前じゃない。スリットは入ってんだから」
「そんなに太い足、見せてどうすんだよ」
乱馬は悪びれもせずにそんなことを言い出したので、
メリッ…
「悪かったわねッ」
とりあえずあたしはそんな乱馬を床に叩きつけてから、
「じゃあ、見なきゃいいでしょッ」
あたしはそう叫んでそっぽを向いてやった。
…と。
「そんなの履いてたら、見たくなくたって、眼に入ってきちまうだろッ」
床からよろよろと起き上がりながら、乱馬が更に減らず口をたたき始めた。
「じゃあ、見えないようにあたしから離れてればいいでしょ!見えない位置にいればいいじゃないッ」
あたしも、そんな乱馬に負け時と言い返す。
「見えない位置にいたって見えちまうんだからしょうがねえだろ!」
「はあ!?なんでよッ。何で見えない位置にいるのに見えるっての!?全ッ然意味わかんないわよ!」
「だからッ…どこにいたって、居るってわかったら目で追っちまってるんだからしょうがねえだろ!」
…と。
乱馬がそう叫ぶや否や、いきなりあたしに抱きついてきた。
「ちょ…な、何よ」
今まで口喧嘩をしていたにも関わらず、あたしは一瞬ボーっとなってしまった。
「な、なによッ。あたしの足、太いとか言ったくせにッ」
そして慌てて乱馬を引き離そうとすると、
「太いから気になんの」
乱馬は、まるで駄々っこのような表情であたしに抱きつきながらぼそっと呟く。
「ど、どういう意味よッ」
あたしが頬を膨らませて乱馬の顔を睨むと、
「いいか、世の中は広いんだぞ?この広い世の中、太い足が好きなもの好きな野郎だって居るんだぞ?」
乱馬はそういって、あたしの膨らませた頬にそっと口つけた。
「…あんた、自分がめちゃくちゃ失礼なこと言ってるの分かってんの?」
あたしは、更にブスッとした口調で呟く。
「なによッ。どうせあたしはシャンプーみたいに色気もないし、女の時の乱馬見たいにスタイルだってよくないわよッ」
「色気がなくても、太くても、気になる足もあるんだよ」
すると乱馬は訳の分からない事をいって、あたしの履いているスカートの、スリット部分にさっと手を当てた。
「あ!何ドサクサにまぎれて人の足触ってんのよッこの変態ッ」
あたしがその手を離そうと暴れようとすると、
「あんま動くと、足丸見えだぞ」
乱馬はそう言って、「見えないように抑えてやってんだぞ、感謝しろよ?」と言ってはニヤニヤしている。
「あんたに抑えられてるくらいだったら、足が丸見えになる方がマシよ!」
あたしがそう言って乱馬から強引に離れると、
「へー。じゃあ、抑えないから見せてみろよ」
乱馬はにっと笑いながらあたしをじりじりと壁際に追いやり始めた。
「えッ…べ、別にそう意味で言ったんじゃ…」
あたしが、「しまった!余計な事を言った」と気がつくまでにそんなに時間はかからなかった。
「遠慮すんなよ、な?」
「えッ…ちょっと、あのね、乱馬」
…ジワリ、ジワリと追いやられ、ペタン…とあたしは壁際に背中をついてしまった。
乱馬はそんなあたしを「逃すか」とばかりに壁際に固定すると、
「だからな?さっきから言ってんだろ?世の中は広いんだから。色気がなかろーが、太かろーが…そういう足が見たくてしょうがねえもの好きな奴もいるんだから」
「見たことないわよ、そんな人」
「目の前にいるだろ」
そういって、にっと笑った。そして、
「頼むから、これ以上そんなモノ好き、増やさないでくれ」
そういうと、再びあたしに抱きついてきた。
…もちろん、ちゃっかりとスリット部分に手を当てて。
「…スケベ。変態。変わり者」
あたしがそんな乱馬にボソッと呟くと、
「そんな変わり者のことが好きなんだろー」
全く懲りずに乱馬はそう言って、あたしに抱きついている。
「…そんな変わり者を好きなあたしのことも、好きなクセに」
あたしが負けじとそう呟くと、
「じゃあ、結局二人二人とも変わり者なんだな。お似合いじゃねえか」
何だか乱馬は、ちょっと嬉しそうにあたしに向ってそう言った。
「やだなあ…そんな変わり者のカップル」
「そうか?意外と俺は、気にいってる」
オシャレに全く無頓着な乱馬。
自分が女装する時は、それが「オシャレ」と知らずにスリットの入ったチャイナ服を平気で着るくせに、
あたしがちょっとでもスリットの入ったスカートを履こうものなら、それこんな風に訳の分からない事を言っては、スリットの下の「足」をめちゃくちゃ気にする。
変わり者の彼と、そんな変わり者を好きな彼女。
あたし達は、変わり者同士の
どうやら「飛んだカップル」みたい。
