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背伸び
背伸びをして、ちょっとアイツと肩の高さを並べてみる。
…そうすると、決まってアイツはあたしの頭をぎゅっと抑えて「生意気な!」と笑い出す。
ちょっと背伸びをして、アイツよりも高い位置にあるものに手を伸ばそうとする。
…そうすると、決まってアイツはニヤリと笑って、「見栄はってんじゃねえよ!」と笑いながら、あたしよりも先にそれを取ってあたしに差し出す。
でも。
あたしがちょっと背伸びをして。
無理して大人ぶって、悲しいときも我慢して、辛いくせに無理して笑おうとしたりすると。
そういう時、アイツは決まって、
「何無理してんだよ?」
「何我慢してんだよ?」
「なんか言いたい事ねえのかよ?」
「一人で溜め込んでんじゃねえよ」
…どうしたの?
そうやって、あたしを心配そうに抱きしめるアイツ。
…アイツにこんな事を言われると、あたしはすぐにその言葉に甘えたくなる。
背伸びして大人ぶってなんて居られなくなるくらい、甘えてしまう。
一生懸命背伸びして、かすみお姉ちゃんみたいになろうとしていたあの頃と違って、
あたしがあたしらしくいられるアイツのすぐ側で、まだまだ背伸びなんてしたくないなッて、思ってしまう。
…だから。
「お前が背伸びしたら、俺がそれ以上に背伸びしてすぐに追い抜いてやる」
そういって笑っているアイツのその側で。
そんな無邪気な事言っているアイツの笑顔をずっと守っていきたいからって言うわけではないけれど、
でも、
そんなあいつの側にいたいから、あたしにはまだしばらくは…背伸びはしないでいようと思う。
ずっと、背伸びはしないでいようと、思うわ。
