CONTENTS
SEARCH
キーワードやタイトルでサイト内小説を検索したい場合はこちらからどうぞ。使い方が分からない場合は、上記の「How to use Search」をご覧下さい。
負けてたまるか!
…あたしの許婚は、異常なくらいに負けず嫌いだ。
「格闘」と名前が付くものは何が何でも勝ちにいくし、一回負けても、自分が勝つまで何度でも相手に立ち向かって行く。
よく言えば闘争心ある意欲的な格闘家。
悪く言えば、欲しいおもちゃが自分の手に入るまでありとあらゆる手をつかってだだこねるお子ちゃまだ。
もちろん、そんな彼を嫌いになるわけはなくて、彼のそんな一面も好きなんだけど。
たまーに、この負けず嫌いの一面にあたしも呆れてしまうことがある。
それは…
「てめーッこの!このッ待ちやがれ!」
ドタ!ドタドタドタッ…
あたしが見ている前でその日もまた始まった、乱馬とPちゃんとの追いかけっこ。
あたしと乱馬が部屋にいるところに、久しぶりに帰ってきてくれたPちゃんがやってきた。
「お帰り!Pちゃん」
あたしはさっそくPちゃんを抱き上げた。
「ぶきーッ」
Pちゃんも嬉しそうにあたしの胸に飛び込んできた。
「…」
でも、乱馬だけは妙にぶすーっとした顔でそれを見ていて、「わざわざ今来なくても」とか「抱きついてんじゃねぇ」とか。
ぶつぶつ言った挙げ句に、Pちゃんがあたしにすりすり…と擦り寄った瞬間、
「くっ…この豚ッ」
バコッ…
乱馬が突然Pちゃんの頭に拳をおとした。
「あー!ちょっと乱馬!Pちゃんいじめないでよッ」
あたしが乱馬に向かって叫ぶも、乱馬はあたしの話なんて全然聞く耳もたず。
「てめーっこのっ正正堂堂と勝負しろッ」
あたしの胸にだかさってるPちゃんにそんな事すら叫ぶ始末だ。
「ぶきーッ」
PちゃんもPちゃんで、なぜかいつまでたっても乱馬になつこうとしない。
叫ぶ乱馬に、とても素早い身のこなしで飛び掛かってゆく。
「乱馬ッPちゃん!やめなさいってば…」
…で結局、
あたしが止めるのも聞かず、乱馬達は追っかけっこをして部屋からでていき…
「はぁ、はぁ…」
しばらくしたら肩で息をしながら一人、乱馬だけ戻ってくる。
「乱馬、Pちゃんは?」
「さぁ」
「さあって…」
あたしがそう言うと、
「さっき、家の近くをカツ錦が通ったから、大方一緒にいた良牙の彼女にでもついていっちまったんじゃねえか…」
乱馬はそう言って、あたしの方をじっとみた。
「そう…Pちゃん、あかりさんの所に遊びにいってしまったのね。せっかく帰ってきたんだから、もっとゆっくりしてけばいいのに…」
あたしがそんな事を呟きながらため息をつくと、
「あかね」
乱馬がそういって、急にあたしに抱きついてきた。
「ちょっと…何よ…」
どうしたの?
あたしがそういいながら乱馬の胸を押し返すと、
「お前さ…もうアイツと寝るのやめろよ」
乱馬は真面目な顔でそう言った。
「アイツって…Pちゃんのこと?」
あたしが「ほえ?」と聞き返すと、
「とにかく!豚は豚でもアイツは特別なんだから…」
「特別?」
「あー…その、なんだ。そう、アイツは雄なんだ。立派な男なんだぞッ」
乱馬はそう言って、ぎゅっとあたしに抱きつく力を強くした。
あたしは何だかそんな乱馬がおかしかった。
「もー…何でペットにヤキモチ焼くのよ」
あたしがそう言って、抱きついてきた乱馬の頭を撫でると、
「うるせーなッ」
乱馬は、ブスッとした表情でずっとあたしに抱きついてる。
「だって。Pちゃん可愛いんだもん。寝るときに抱いてるとね、ぬいぐるみみたいにじっとしてて…」
「じゃあ、俺がぬいぐるみの代わりに抱かさっててやるよッ」
「何言ってんのよッ。だいたいあんた、あたしに大人しく抱かされてることなんて無いでしょうが」
「いーのッ。あいつの分まで俺が抱かさってんのッあんな野郎に負けてたまるかッ」
…半分駄々こねっこと化した乱馬は、そう言ってその日は結局朝まであたしの部屋に居座っていた。
(全く。何でペットの豚にまでやきもち焼くのかしら…)
「俺が抱かさるッ」といっていたにも関わらず、結局はあたしが「抱かさる」羽目になったわけだけれど、あたしには、そんな乱馬がおかしくて仕方なかった。
…あたしの許婚は、異常なくらいに負けず嫌いだ。
「格闘」と名前が付くものは何が何でも勝ちにいくし、一回負けても、自分が勝つまで何度でも相手に立ち向かって行く。
よく言えば闘争心ある意欲的な格闘家。
悪く言えば、欲しいおもちゃが自分の手に入るまでありとあらゆる手をつかってだだこねるお子ちゃまだ。
もちろん、そんな彼を嫌いになるわけはなくて、彼のそんな一面も好きなんだけど。
たまーに、この負けず嫌いの一面にあたしも呆れてしまうことがある。
ねえ、乱馬?
別に、ペットのPちゃんにまでそんな闘争心剥き出しにしなくても…大丈夫よ?
Pちゃんはペット、乱馬は人間…そしてあたしの許婚なんだから。
比べる次元、全く違うでしょ。
…そうあたしが乱馬の耳元で囁いたところ、
「豚でもアヒルでもパンダでも、男は男」
乱馬からはそんな言葉が返ってきた。
「あんたねえ…」
これって、負けず嫌いなのか心配性なのか?
ヤキモチ焼きなのか、過保護なのか?
…しばらくの間は、あたしはこの負けず嫌いでお子ちゃまな許婚に手を焼きそうだ。
