心が、共鳴する。
何十年も連れ添った夫婦が、「あれ」「それ」で会話が成り立つように、
心が通じ合う者同士は、すべてを口に出さなくても、不思議と心が共鳴して相手に言いたい事が伝わることがある。
それって、「恋愛」というシチュエーションでも充分言えることなのではないかと、思う。
…これは、理屈とか理論とか哲学とか、そういうのを考えるのが苦手な俺が、唯一自信を持って誰かに言えること。
…そもそも、そんな恋愛ってさ。
思う相手がいて初めて成り立つものなんだよな。
だって…あかね、知ってるか?
「戀」っていう字はな、
「いとしい、いとしいと言う心」。
そうやって、昔の人は書いてたんだぜ?
それって、誰かに対して「いとしい、いとしい」って言ってるって事だろ?
…って。
勉強嫌いな俺が、唯一なんかの本で見かけて、たまたま覚えてた事なんだけど。
心が通じ合うもの同士は、もちろん心は共鳴する。
じゃあ、今の俺たちはどうなんだろう?
…俺は、時々そう考える事がある。
俺たちはまだ、何十年も連れ添った夫婦みたいに心が共鳴しきれない部分も勿論ある。
だから、
そういう心が共鳴しきれない、俺たちに足りない部分は、ちゃんと「言葉」で、お互いの気持ちを確かめあわないといけないと思うんだ。
「あかね。俺の事好きか?」
…なので。
俺は、いきなり前フリもなく…突然、あかねにこんな事を聞く時がある。
もちろん、俺がいきなりこんな事を言い出すとあかねは大抵、
「はあ?あんた、熱でもあるんじゃない?」
…思いっきり、怪訝そうな顔をする。
「いいだろッたまには聞いたって」
「そりゃ、いいけど…どうしても答えないとダメなの?」
「ダメ」
俺が妙に真剣にあかねに迫るので、あかねもため息をつきながらもようやく承諾。
そして、
「言えばいい?」
コホン、と何故か咳払いをしながら言った。
「…出来れば、どのくらい好きか俺に分かるように」
俺はそんなあかねに更にこそっとそう追加して注文をすると、
「何、甘えた事言ってんのよッ」
あかねは、そんな俺の額をピンっと指で弾きながら笑って、そして…
そしてあかねは、そんな風にあきれながらもちゃんと、俺に答えてくれる。
「…好き」
ちょっと赤い顔をしながら、でもはっきりとした口調で俺に向って言う、あかね。
しかも、
「…乱馬にしか、言わないんだからね」
あかねはそう言って、自分からねだっといて真っ赤になっている俺の頬に軽くキスをした。
「…俺にしか言わないの?」
俺が思わず…というか、そんな事をするあかねの背中にすぐに腕を回して抱きとめると、
「…そうよ」
あかねはそう言って、黙って目を閉じた。
…なあ、あかね。
「戀」っていう字はな、
「いとしい、いとしいと言う心」。
そうやって、昔の人は書いてたんだぜ?
それって、誰かに対して「いとしい、いとしい」って言ってるって事だろ?
…って。
勉強嫌いな俺が、唯一なんかの本で見かけて、たまたま覚えてた事なんだけど。
何だかさ、まさに今、そんな気持ちなんだよな。
唇は、お前と重なってるから言葉を発する事は出来ないけれど、
でも俺の心はさ、何だかそんな事を言っているような…そんな気がするんだ。
「…」
俺がそんなことを思いながらあかねからふと唇を離すと、
「…」
あかねは黙って、俺の手を自分の胸へといざなった。
「えッ…」
俺があかねのそんな大胆な行動にちょっと焦ると、
「…言ってるでしょ?」
「え?」
「あたしの心も、言ってるでしょ?…乱馬と同じ事」
あかねはそう言って、顔を赤くしながら…笑っていた。
「…」
…俺は。
そんなあかねを再び自分のほうへ抱き寄せていた。
なあ、あかね。
俺、俺が今心の中で何を思ってたかなんて口に出して言ってなかったよな。
それが、何で伝わっちゃったのかな。
お前、本当は魔法使いか?
俺は思わずそんなバカな事まで考えてしまったが、でも何だかその事が凄く嬉しくて、自然にあかねに回す腕の力を強くする。
…心が通じ合うもの同士は、もちろん心は共鳴する。
じゃあ、今の俺たちはどうなんだろう?
俺たちはまだ、何十年も連れ添った夫婦みたいに心が共鳴しきれない部分も勿論ある。
だから、
そういう心が共鳴しきれない、俺たちに足りない部分は、ちゃんと「言葉」で、お互いの気持ちを確かめあわないといけないと思うんだ。
いけないと思ったから、言葉で確かめ合ったはずなのに…
「何で伝わったのかな」
俺があかねを抱きしめながらぼそっと呟くと、
「心の中でも、あんた、声が大きいのよきっと…」
あかねはそう言って、笑っていた。
…心が、共鳴する。
「いとしい、いとしい」と言う心が、俺とあかねの間を共鳴していく。
「心の中の声。俺、そんなに大きかったか?」
「うん」
「どれくらい?」
「そうね…乱馬の胸を突き抜けて、あたしの胸の中に飛び込んできたぐらいだから…相当大きい事は確かね」
「そっか」
俺は、そう答えたあかねの胸にそっと、耳を当てるようにして、目を閉じた。
俺の耳には、あかねの妙に早い鼓動がダイレクトに伝わってくる。
「ね?大きいでしょう?あんまりその声が大きかったから…あたしの心もビックリしちゃってこんなにドキドキしてるのよ」
あかねは、そんな俺の頭を優しく撫でながらそう言って笑っていた。
「そっか…」
俺は、そんなあかねの胸にもたれながらそう答えた。
…「いとしい、いとしい」と言う心。
そんな心に誘われるように、
俺とあかねはまた、強く抱き合った。
心だけじゃなく、今度はこの全身でお互いを共鳴しあえるようにと。
「…」
言葉も発することなく、ただただじっと、お互いに身体を預けあって抱きあう俺とあかね。
そんな俺達の心の中は、今、この瞬間も烈しく強く、共鳴しあっているんだと思う。
「いとしい、いとしい」という言う心。
俺とあかねの中で、共鳴しているそんな心。
その心こそが…本当の「戀」する心。
俺たちがこの瞬間にもお互いに抱いている、「戀」心。