「それでね、東風先生がね…」
…あかねが、かすみさんのお使いで東風先生の所へと行って帰ってきたその日の夜のこと。
何かにつけて、東風先生の話題を口に出す、あかね。
よっぽど、楽しい事でもあったのか。
楽しそうに、先生と話た事を俺に教えてくれようとする、あかね。
「…」
でも。
そんなこと、俺が楽しい気分で聞けるわけは無い。
いや、はっきり言って気に食わない。
「…」
何をそんなに、嬉しそうに話すんだ。
何がそんなに楽しいんだ。
「あのね、先生がねっ…」
…そうやって話すあかねの笑顔が可愛いければ可愛いほど、何だか無性に腹が立つ。
「どうしたの?機嫌悪いの?」
もちろんそんなことを思っていれば、鈍いあかねとて俺の異変に気がつく。
でも、
「…」
はっきり言って、こんな風に「気にいらない」と思っているのは俺の「ヤキモチ」なわけで。
「ヤキモチ」焼いているなんて、いくら俺でも中々口には出す事が出ない。
「…何でもねえよ」
あかねよりも何倍も大きな背中を、
あかねよりも何倍も小さく丸めながら背を向け俺がそう答えると、
「もー。どうしたの?」
あかねが、そんな俺の背中に笑いながらぎゅっと、抱きついてきた。
あかねの小さな腕で抱き締めるのには苦労するような大きな背中のはずなのに、あかねはいとも簡単に、俺の背中を抱き締めた。
「…」
こんな小さなあかねに、おれはすっぽりと抱き締められちまうのか。
…そう思うと、俺は何だか、自分がものすごく小さい男なんじゃないかと、実感する。
それに、俺の方が絶対にあかねに惚れこんじまってて、好きで、好きでたまらないような。
そんなことさえ、、思い始める。
俺だけだったら、どうしよう。
何だか、それが不安で不安で仕方がない。
「もー…どうしたのよー」
…でも、そんな俺の心配なんて露知らず、あかねは抱き締めている俺を見ては、笑っている。
そして、まるで子供をあやすかのようにゆっくりと、俺の頭を撫でた。
なあ、あかね。
俺、自分でもどうしようもないほどさ、すっげえ小さなことでもヤキモチ焼くんだぜ。
多分それを口にすれば、
「はあ?あんた何言ってんのよ、ばかばかしい」
きっと、そんな風にお前が思うような、それくらいの小さい出来事でも、だ。
でもさ、仕方ねええんだよ。
なあ、あかね。
だって俺…お前の事がすげえ好きなんだ。
誰かと順調に付き合えるって事は、お互いのその気持ちのバランスがちゃんと取れているからだって良く聞くけれど、
もしも、俺とお前が今、こうして順調に幸せに付き合っていることもそれに当てはまるって言うのなら、
あかね、お前さ…俺の事、ものすごく好きでいないと、それって成り立たないんだ。
でももしそうだって言うんなら…俺、すげえ嬉しいんだけどなあ。
…
「…」
俺はそんなことを思いながら小さな為息をつくと、
むぎゅっ…抱き締めてくれているそのあかねの胸にゆっくりと顔を動かして、思わず頬擦りをしてみる。
「きゃ!ちょっとっ…何で頬擦りしてんのよ!?」
いきなりそんな行動に出れば、あかねはくすぐったそうに顔をしかめて俺をを引き剥がそうとするも、
顔に感じる柔らかさも、温かさも。
そんな好条件な場所を、俺がそう簡単に手放すはずがない。
それに、
胸に顔を埋めたら、弾力を楽しむ為にも顔を動かす。それは、男の本能だ。
「だって、しょうがねえだろ」
「何がしょうがないのよっ。もうっくすぐったいってばっ」
「我慢してくれ。俺は幸せだ」
「ば、ばかーっ」
あかねはペチンペチン、とくすぐったさに耐えようとしながら俺の頭を叩くけれど、俺は怯むことなくあかねの胸に抱きついて離れることはない。
やがてあかねも観念したのか、
「もー…」
抱きついて離れない俺の頭を、ぎゅっと、強く抱きしめた。
俺は、そんなあかねの姿を受けてそーっと胸の部分に手を這わせると、ゆっくり、ゆっくりと着ている洋服のボタンへと手をかけていった。
俺と同じくらい強い気持ちで、好きになってくれてるのかな…。
そう思うと、何だかそれだけで心が熱くなる。
俺よりも一回りも小さい体で、俺の気持ちを受け止めてくれてるんだもんな。
「…」
そう思うと、何だか無性に気持ちがはやる。
…ま、ちょっとエッチで強引で、独占欲も強いけど、
それはお前も納得済みと、言う事で。
「…」
俺があかねの耳元にそう囁くと、あかねは小さく頷いていた。
…俺達の気持ちのバランスは、きっとつりあい取れている。