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→いつの頃から

「…寒いねえ」
「もう四月だってのにな」


春が来て、満開だった桜がすでに葉桜へと姿を変えようとしているというにも関わらず、いまだに眠る時には毛布を手放すことが出来ない。
そんな今日この頃に対し、あかねも、そして乱馬も思わずそんなことをぼやいていた。
ふたりは今、自宅二階にある物干し台…ベランダにいるのだが、
何となく眠れなくて、その暇つぶしにこうしてベランダで外を眺めながら話をしているこの時間とて、四月とは思えない冷たい風が吹きすさんでいる。
そんな中、
「寒いなあ」
・・・そんなことを言いながら、乱馬がパジャマの袖に隠れているあかねの手を、ぎゅっと握ってきた。
「寒いわよ」
あかねもそれと同じくして、そっと乱馬に擦り寄って身を預ける。
「寒い、寒い」
二人はそんなことを言いながら、
はじめは二人隣に立って並んで夜の街並を眺めていたにも関わらず、しまいには折り重なるようにくっつき寄り添って、
「…」
あかねは現在、乱馬の腕の中にいる。
乱馬はあかねにしっかりと覆い被さって、そしてそんな乱馬はしっかりと自分の身体に、部屋から持ってきた毛布を被っている。
…なので、毛布の中は三重構造になっていた。
「あー、ようやく温かくなった」
あかねを腕の中に収めて、そしてしっかりと抱き締める事で満足したのか、乱馬がふとそんなことを呟いた。
もちろん、そうやってくっついているだけで事は済むはずも無い。
くっついて二人で過ごすその空間、毛布の中に顔を埋めては、あかねは何度、その唇を奪われただろう。
「…」
くっついているから、温かいのか。
それとも、そうやってキスをされるから体温が上昇しているのか。
ドキドキと胸を鼓動させながら、あかねはその心地のよい温かさに身をゆだねている。
そして、ふとそうやって身をゆだねている間に、あかねは思うことがあった。

…付き合い始めて、どのくらいの時期からか。
そう、一体いつの頃からだろう。 寒ければ、寄り添ってくっつきあう。
どちらからともなくそうして、時を過ごす。
そして、そんな風に二人でいる時間を、大切に思う。…いとおしく思う。
こんな風に考える事が、いつの間にか「当たり前」のように、あかねの心の中に溶け込んでいた。


乱馬とこうして付き合う前までは、自分以外の他人、とこんな風に自然にくっつき合ったり抱き合ったりする事はなかった。
それは、家族であっても、だ。
それが今はどうだろう。
たとえ許婚で恋人とはいえ、こんな風に無防備に、自分が相手に身を委ねる事…それに抵抗をもっていないなんて。
…そう考えると、あかねはそれが、何だか今が不思議でしょうがなかった。
でも、不思議ではあるけれど、
こんな関係が、こんな風に自然に身を委ねられる相手がいること。
それは、全然悪くは無い。むしろ、あかねにとっては心地がいいことだった。

「どうした?そろそろ部屋に帰る?」
「…ううん。もうちょっとこうしていたい」
そんなことを考えていたあかねに、乱馬が不意に声をかけてきた。
あかねは素直にそう答えると、
「…こうしているの、好き」
委ねたその胸の中で、そっと目を閉じた。
「俺も、こうされているの、好き」
乱馬は小さくそう呟きながら、そんなあかねの髪や、頬をゆっくり撫でて、そして再び軽くキスをした。
…うん、やっぱり心地がいい。

再び自分の唇に残った、彼の唇の感触を感じながら、あかねはそんなことを思い、小さく微笑んだ。
そして、今しばらくはこの温かさを感じていよう…そう思いながら、そっとそのまま目を閉じた。

 

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