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仮想空間
「へー…今の建て売り住宅ってすごく沢山部屋があるのね」
…ある日曜日の昼下がり。
新聞に入っていた広告を眺めていたあたしは、そんな事をぼやいた。
あたしがたまたま見ていたのは、隣街に最近できた住宅地の売り出し広告。
そこにすでに建てられている建て売りモデルルームの写真を見ながら、あたしは思わずそんな事をぼやいたのだ。
うちは元々一軒家だし、道場が無ければいけないような環境だし、それに建て直ししなくても十分この家は気に入っているけれど、
「二階は三部屋もあるんだ。そしたら子供部屋、もしくはあたしの部屋って感じかなー…」
広告をみて好き勝手想像するのはタダ。
あたしは取り敢えず未来に自分がその家に住むと仮定して色々と想像しようとしたけれど、
「一階のダブルベッドが置いてあるその寝室、俺達の部屋な。あとは任せる」
「…」
何故かあたしが色々と考える前に、やっぱりあたしの横で同じようにその広告をみていた乱馬がぼそっと言った。
「…何よ、その『俺達の部屋』って」
あたしの仮想空間に入り込んで来た事よりも、その問題のある発言内容にあたしが早速反論すると、
「何ってお前…夫婦で別の寝室にでもするつもりか?それは断じて許されねえことだぞ?」
乱馬は妙に真剣な様子で、そんなことをぼやく。
「そうじゃないでしょっ。なんであたしが住もうと考える家に、勝手にあんたも一緒に住もうとしているわけ?」
あたしが乱馬にそう言ってやるも、
「だって、将来おめーが住む家を仮定して遊んでんだろ?だった俺も一緒に住むのなんて当たり前じゃねーか」
「…」
「あ、子供部屋は極力二階な。年頃になるとさすがに教育上問題がありからなー。家建てる時には建て売りでも壁、厚くしようぜ」
乱馬は怯む様子もなくそんなことを言って笑っていた。
「…」
それって、乱馬はあたしと結婚するつもりでいてくれているって事だよね?
その事はね、改めてこうして口で伝えてくれると嬉しいよ。
すごく嬉しいんだけど…
…一体どんな夫婦生活を営むつもりでいるんだろうか?
「…」
まず間違いなく、今以上に愛は溢れていそうだと想像できるがゆえに、
「…新居の心配するまえに、あたしの体力はもつのかしら…」
「ん?何か言ったか?それよりさ、防音加工だろー?あとベッドは当然ダブルだろー?あとは…」
…と、
まるでどこぞのホテルの一室にでもするかのように、ニコニコと意見を述べる乱馬に対し、あたしは若干目眩を覚えたのだった。
