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メロンソーダ

 

それは、あたしにとっては不思議な光景だった。
…家族皆で、ファミリーレストランにご飯を食べに行った時に事。
「…えびドリアと、ハンバーグセットと…あとは、ドリンクバーを五つ」
「かしこまりました。ドリンクバーのグラスはあちらにご用意してありますのでご自由にどうぞ」
あらかた注文を終え、まずはドリンクバーを注文したあたし・あかね・かすみお姉ちゃん・乱馬君・早乙女のおば様の五人が、案内された場所へ飲み物を取りに行こうとした矢先の出来事。
「乱馬、飲み物取ってきてあげる」
「おう」
…確か、あかねと乱馬君は、それだけしか会話を交わしていなかった。
ファミレスに来る途中だって、あかねはあたしとずっと話をしていたし、乱馬君だっておじ様と話をしていた。
それなのにも関わらず、
「はい、乱馬」
「サンキュー」
…あかねは、乱馬君に「メロンソーダ」を入れて持ってきた。
ドリンクバーには、コーラも、オレンジジュースも、お茶も。
炭酸系のものだけでも数種類あるし、お茶系だって数種類ある。
それなのにも関わらず、だ。
あかねは乱馬君に、メロンソーダを持ってきた。
しかも、乱馬君はそれを嬉しそうに飲んでいた。
「?」
…あたしには、それがまず、不思議だった。
さらにその後、
「乱馬、ジュース入れてこようか?」
「おう」
あらかたご飯を食べ終わって、皆でおしゃべりをしていた時、
またあかねがそう言って席を立った。
その時もあかねは、乱馬君とそれだけしか会話を交わさなかった。
それなのに…
「はい、乱馬」
「サンキュー」
…あかねは今度は、「アイスティー」を入れてきた。
そしてまた、乱馬君はそれを嬉しそうに飲んでいた。
「?」
…あたしには、それがとても不思議だった。


何で?
何で、何も聞かなくとも相手の飲みたいものが分かるんだろうか。
もしかして、あたしが分からないうちにブロックサインとかしているのか?
右手を動かしたらメロンソーダ、左ならアイスティー。眉毛を上げたらコーラで、お下げをひっぱたらウーロン茶とか…



あたしがそんなことを考えてると、
「なびき、どうしたの?」
そんなあたしに、かすみお姉ちゃんが声をかけてきた。
「え、いや別に…」
「なびきは飲み物、飲まないの?あたし、持ってきてあげましょうか?」
かすみお姉ちゃんが笑顔でそう聞いてくれたので、
「うん」
あたしは、わざと何を飲みたいかを言わずに、コップを差し出した。
「何を入れてくる?」
「…普通はまず、そう聞くわよね」
「?」
「こっちの話」
あたしは、かすみお姉ちゃんと一緒に立ち上がり、ドリンクバーに向かって歩きながら、あかね達の話をした。
すると、
「ああ、きっとそれは仲良しさんだからよ」
かすみお姉ちゃんは、にっこりと笑ってそう言った。
「な、仲良しさん?」
「そう。ほら、結婚して長い夫婦とか、『あうん』の呼吸があるって言うでしょ?言葉で伝えなくとも、相手が何を思っているか分かってくるって言うじゃない。多分それと一緒よ」
「…」
そのかすみお姉ちゃんの説明に、あたしは、なんだか納得してしまった。
そういわれて気をつけてみていると、
「あらあら、お父さん。はい、これ」
「すまんな、母さん」
…早乙女のおじ様、おば様も、会話はあまり交わさなくともいつだって、スムーズなやり取りをしている。
それは、お父さんとかすみお姉ちゃんもそうだ。きっと亡くなったお母さんほどではなくとも、お父さんとはスムーズに やり取りをしている。
「…」
そうか、あかね達もそうなのね。
あたしは、ようやくそれで一連の事を納得した。
でも、
「…それぐらいお互いの事が分かってるなら、さっさと告白しちゃえばいいのに」
…それがなんだか不思議でしょうがない、あたしだった。


まあ、きっと…言わなくても分かってるんだろうけど?

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