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おひとついかが?(Before)
「あ、この飴おいしー…」
…たまたま友だちのさゆりから貰った飴を口入れたあたしは、その予想以上の甘さというかフルーティな味わいに思わずそんな声を洩らした。
「俺にもくれよ」
そんなあたしの声を聞いて、夕飯前でお腹を空かせた乱馬があたしに手を伸ばしてくるも、
「もう食べちゃったわよ」
「ちぇえッじゃあしょうがねーなあ」
飴は元々一個しかなかったし、あたしがそれを口に含んでいる以上、もう乱馬はその飴を食べる事は出来ない。
「ごめんねー」
あたしが手を合わせると、
「あーあ、喰いたかったなあ」
乱馬が妙に残念そうに呟く。
「…」
その顔があんまりにもしょげて見えたので、
「しょうがないわねー、じゃあ、ほらッ。おひとついかが?香りだけでもッ」
あたしはそんな乱馬に、はあッ…と飴を舐めているその息を吹きかけてやった。
「あーッちきしょうッ。何だよそのフルーツの匂いはッ」
「ね、ね、美味しそうでしょ!?だから匂いだけでも味あわせてあげるわッ」
「せ、性格わりーぞッ」
乱馬は「やめろーッ」とあたしから逃げ回っては、あたしの発するその飴の美味しそうな匂いに苦しんでいた。
「仕方ないでしょッ。飴をわけてあげられない以上、こうでもしないと乱馬にもこの味が伝わんないし?」
「お、覚えてろよッこのッ」
…夕暮れ時の、学校からの帰り道。
そんなやり取りをしながら家への道を帰った、ある日の出来事。
