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→First Love 6

そして、翌日。
とうとう、乱馬とその初恋の人「環さん」が出会う当日。
「あら?あかねちゃん、もうでかけるの?」
「う、うん…」
…環さんに会う為に張り切って支度をしているかもしれない乱馬の姿を見るのは、あたしには耐えられない事だった。
だから、
乱馬が出かけるのよりも少し早く、家を出た。
別に行くあてなんてあるわけではなくて、
ただ単に、じっと部屋の中で考え事をしたりしているのが嫌だった。それだけだ。
あたしは、早朝でも開いているファーストフードの店へと足を運んだ。
そして、普段はそこで食べる事の無いいわゆる「朝メニュー」とやらを注文して、そのお店の二階へとあがる。
窓側の席へとトレーを運び、ゆっくりと腰をかける、あたし。
チラリ、と壁にかかっている時計へ目をやると、時刻は朝の八時。
乱馬が右京のお店で「環さん」と会う約束をしているのは、十時。
…まだ少し、時間がある。
「…」
あたしは、小さくため息をついた。
そして、食べるつもりの無い「朝メニュー」を見つめ…また、ため息をつく。


…昨日も、その前の日も。
「今日」という日が近づくに連れて、何だか食べ物が喉を通らない。
かすみお姉ちゃんやなびきお姉ちゃんは、
「あかねちゃん、具合でも悪いの?」
「あんた、またダイエットなんてしようとしてんじゃないの?」
なんて。そんな事を言いながらあたしに声をかけてくれたけれど、あたしは笑って誤魔化すしかなかった。
「ダイエットなんてしてどうすんだよ。小さい体をまだ小さくするつもりか?」
もちろん、あたしが乱馬のことで悩んでいるなんて気がつきもしない乱馬も、そんな事を言いながらあたしの事を心配 してくれていたけれど、
「別に…そんなのあたしの勝手でしょ」
「そうだけど。別に、ダイエットなんてしなくても平気だろ。そりゃちょっとは重いけど」
「よ、余計なお世話よっ」
あたしは、そんな乱馬に反発しては可愛くない素振を見せる。
「ったく、何だよ。人が心配してやってんのに」
「別に、乱馬に心配なんてしてもらいたくないもんっ」
「ちぇっ。ホントに可愛くねえ女」
乱馬は、そんなあたしを「やれやれ」とでも言いたげな表情でみては、ため息をつく。
あたしは、そんな乱馬に対して更に不機嫌そうな表情を見せては、後々一人、自己嫌悪に陥る。

…悪循環。
そう、面白いぐらいに悪循環だ。
ここ数日、なんだかそんな感じだった。


傍にいても、素直じゃないくて可愛くない女。
…もっと可愛くしなきゃ。
もっと可愛くしなきゃ、乱馬が離れていってしまうかもしれないのに。
姿かたちでは、叶わないもん。
女らしくないし、茶道の心得なんて無いし…だから、ちょっとでも可愛くしなきゃダメなのに、

「…」

そう考えれば考えるほど、あたしの心は卑屈になっていく。
あの、「環さん」の写真を見てしまってから、
どんどん、不安になっていく。
あたしに無いものばっかり持っている女性。
それが、乱馬の初恋の人だったら尚更だ。

「…」
あたしは、目の前のトレーに並べられた「朝メニュー」の飲み物へと目をやった。
カップの蓋があけられているせいで、中に入っている飲み物があたしの目には映っている。
いれたての、ホットティー。
モワっと沸きいづる湯気の合間に、あたしの目に映る茶色い液体。
ピンと張った表面に、カップを覗き込むあたしの顔が、映っている。
「…」
どうしてだろう。
表面はピンと張っているはずなのに、
何でそこに映るあたしの顔は、こんなに歪んでいるんだろう…
「可愛くない…」
歪んだ顔を見たあたしの、それが素直な感想だった。
可愛くない。
可愛くない。
全然、可愛いなんて思えない。
…あの写真に映っていた女性には、とうてい近づく事が出来ない。

「…」
あたしは、カップから沸いている湯気が消え行くその瞬間までずっと、中に映る自分の顔を見つめては、ため息をつい ていた。





「ありがとうございましたー」
…それから、しばらくして。
あたしは、ファーストフード店の店員に声をかけられながら店を後にした。
時刻は、九時四十分。
一応はお店の中で一時間半以上も粘っては見たあたしだったけれど、約束の十時に近づくに連れて、どうにもこうにも落ち着かない。
目の前に並べられた食べ物にも手をつけず、ただただ時計とにらめっこ。
増えていくのは、店内のお客さんの数とあたしのため息の数だけだ。
座っていても、落ち着かない。
だったら、外でも歩いて気晴らしでもした方がいいのかな…なんて。
とりあえずそんな事を思って、あたしは店の外に出ては見た。
でも、
「…」
休日の十時前、ウィンドーショッピングするにしても店自体がまだ開いていない時間だ。
かといって映画館に行った所で、映画代を無駄にするようなもの。
「…」
…どうしよう。
あたしは、ふらふらと休日のまだ人がまばらな街の中を歩いていた。



こうやって歩いている間も、時間は刻一刻と進んでいる。
道路を歩いていたって、何だかふわふわしてその感覚はよく分からない。
まるで、雲の中を歩いているような…おぼつかない感じ。
足はアスファルトを踏みしめて歩いているはずなのに、それに対して確信が持てない。
距離は進んでいるはずなのに、それが何だか自分では良くわからない。
変な感じ。
変な感じ。
気が散っちゃって、歩いているのに歩いているような気がしない。

……


「…」
あたしは、ため息をつきながらふと腕にしている時計へと目を落とした。
時刻は、九時四五分。
お店を出てから、まだ五分しか経っていなかった。
自分では、もう大分時が進んだような気がしているのに、まだ五分。

こんな思いをしながら、あと数時間も、あたしはこうして待っていなければいけないの…?
「…」
そう思うと、自然と胃が…痛む。
シクシク、と、あたしの身体の奥深くにその痛みを刻んでいく。
「つっ…」
ここ数日、ろくに食事をしていないのも手伝って、その痛みはあたしを酷く、苦しめる。
「…」
とりあえずは、どこかに座って休もう。
そんな事を思いながらあたしは、ふらふらと近くの公園のベンチへと腰をかけた。
そして、ベンチに座りながらお腹を抱くようにして身を前へと倒す。
…空腹の上に、余計な事を考えすぎて胃が痛い。
そんな自分が、情けなくてしょうがない。
「…」
じっと黙って身を倒しているあたしの額に、じわりと汗がにじむ。
ただでさえ、なんだか頭の中がごちゃごちゃして何だか考えがまとまらないのに、お腹が痛いときって、どうしてこう更にそれが酷くなるんだろう。
シクシク、という痛みが、徐々にズグン、ズクン…と大きな痛みの波へと変化していく。
気を紛らわせよと思えば思うほど、痛みが増す気がする。
ぎゅっと収縮した痛みが、少し緩んだかと思うと更に大きな痛みを伴って、あたしの身体を駆け抜けていく。
…痛い。
そう、声に出す事もできないほど…身体に響いて…

「なあ…大丈夫?」

…と、その時だった。
あまりの痛みに耐え切れず、身を前に倒したままベンチから動けずにいるあたしに、声をかけてくれる人がいた。
「…」
額ににじむ汗が眼に流れてくるのも振り払えぬまま、あたしが声のした方へと目をやると、
「顔色も悪いようやし…もし辛いんやったら、救急車でも呼びましょうか?」
身を屈めるあたしを、心配そうな表情で見ている一人の女の人がそこにはいた。
「だい、大丈夫です…」
本当は、全然大丈夫ではないのだけれど。
だからと言って無防備に、
「実はお腹が痛くて」
…そんな事を言いながら、見ず知らずの人に身を委ねる訳にも行かない。
「こんなの、すぐ治りますから…」
あたしはそういって、その女の人を自分から遠ざけようとするも、
「すごい汗やし…」
女の人はそういって、自分の懐から取り出した白いハンカチであたしの汗を拭ってくれた。
どうやら、悪意があって近づいて声をかけた人では、ないようだ。
あたしは、痛みで頭がぼんやりとしてしまっているけれど、その女の人の姿を見上げた。
「…」
痛みで目がかすんで、その人の顔ははっきりとよく見ることが出来ないのだけれど、
あたしよりも少し年上のような。そんな印象がある。
「大丈夫です…少し休めば…」
あたしが「痛っ」…と顔をしかめながら再び目線を地面に落とすと、
「休めばって…こんな公園のベンチじゃゆっくり休められへんやろ」
女の人は、そういって前に身体を屈めるあたしの前へとしゃがみこむ。
「…」
…あたしの目に飛び込む、その女の人の足元。
白い、草履。
そして、ブルーの生地に黄色い小花があしらったような着物の…裾。
「…」
あたしは、胃の痛みを必死で堪えながら顔を上げた。
そして、目に流れ込んだ汗を拭い、あたしの事を心配そうに見つめているその女の人の顔を、今度はじっと見つめ た。
「大丈夫?」
よく考えて見ると、ずっと関西弁であたしに話し掛けてくれるその女の人。
太陽の光を浴びて、キラッと輝く美しい黒髪。
雪のように白い肌に、ふっくらとした唇。
腹痛で青白くなっているあたしの唇とは、対照的なぐらい真っ赤で艶やかな唇だ。
そして、きっちりと着こなされた和服に、微かな風でなびく、長くて柔らかそうな…髪。

「…」
…知っている。
あたし、この人の顔、知っている。


…ドクン。

胃の痛みで身体中に響いているその痛みとは違う「痛み」が、瞬時にあたしの身体に走りぬけた。
「あの…」
「どうした?やっぱり、救急車呼ぶ?」
「いえ…あの…」
「何か言いたい事があったら、遠慮なくいい?」
「お名前…何ておっしゃるんですか?」
「え?名前って、うちの?」
「親切にしていただいたので…」
あたしは、徐々に大きくなってくる胸の鼓動に飲まれないように、ぎゅっと握りこぶしを作りながら女の人に尋ねた。
「そんな、対した事してへんし。名前なんて別に…」
「いえ、とても私は助かりましたし…」
ぐっと握った拳から、ジワリ…と汗がにじみ出る。
女の人にそうやって尋ねるあたしの声は、明らかに震えていた。
「んー…そうか、それやったら…。うちはな…」
女の人は、再びあたしの額ににじみ始めた汗をハンカチで拭いながらそこまで言って、何故か一息置いた。
そしてちょっと考えたような素振をした後に、
「うちは、環や。あんたは?」
と、にっこりと微笑みながらそう言った。


…ドクン!


答えを聞いた瞬間、再び、あたしの身体の中に大きな痛みが走り抜けていった。
「そう、ですか…」
あたしは、ドクン、ドクン…とさっきに増して早鐘のように胸を打つ鼓動と、そしてその鼓動と比例するように増していく胃の痛みで、ボーっとし始めた頭を振り切るように、小さくそう呟いた。
…なんて、事だろう。
乱馬と環さんのことを考えて胃を痛くしているって言うのに。
それなのに、その痛みが増して辛い所をその環さんに助けられるなんて。
…何て事なの。
「…あたし、大丈夫ですから」
「え?」
「あたし、なんでもないですからっ…痛みも治まりましたっ」
あたしは、ぐっと握り締めていた拳を更に強く握った後、そう叫びながら突然、ベンチから立ち上がった。
もちろん、
「何でもないって…でもあんた、めっちゃ顔色悪いで?まだ」
それまで蹲っていたくせに、突然そんな事を言って立ち上がるあたしの姿に、環さんだって驚くわけで。
「とにかく、もうちょっと座っていた方がええんちゃう?」
今にでも走り出して公園から出て行ってしまいそうなあたしの腕を、慌てて掴んで身体を支えてくれた。
「…」
その瞬間、あたしの鼻先にフワリ、と柔らかな長い黒髪が触れた。
それと同時に、フっ…と一瞬、お香の匂いが漂ったような気がした。
とても、いい香りだった。

女のあたしだって、たった一瞬嗅いだだけでそう感じた香りだ。
もしもこの香りを、隣の席に座られて長い時間嗅いでいたら?
きっと…
「大丈夫ですってばっ…」
…あたしは、環さんの身体から離れるように彼女の腕を、自分の身体から外そうともがいた。
そして、そうやってわざと大きな声で叫んで腕を振り切ろうとしたけれど、
「っ…」
「あ!ちょっと…大丈夫!?しっかりしい?なあ、あんたっ…」
…必死でもがき、腕をようやく振り払ったその瞬間。あたしの頭の中は真っ白になった。
そして、それと同時に目の前もサーっ…と白くなる。
そうなると、自分の意識など保っている事など出来はしない。
あたしは、環さんの腕を振り払って自由の身になったその瞬間に、地面へと倒れてしまっのだった。
「ちょ、ちょっと!しっかりしい!今、救急車呼んだるからなっ…」
「…」
「救急車…って、ああ?!あかん、ここの住所がわからへん!そしたらまずは…」
…意識が急速に薄らいでいくあたしの、そのすぐ近くで。
環さんが、そんな事を言いながら、どこかへ自分の携帯電話で電話をしている姿が、あった。
…右京の店にでも、電話かけているのかな。

ぼんやりとする意識と、意識は無いのに波を打つように身体中を走る痛み。
ズクン、ズクン、という痛みが身体中の全ての感覚を支配しているせいで、
「…でな、今店近くの公園におんねん。とにかくすぐ来てくれへん?…が…で…」
…そんな風に電話をかけている環さんの、会話の全てを聞き取る事は出来ない。
「…」
どうしよう。
どうしよう…乱馬に迷惑がかかっちゃう。
右京だって、今日の為に準備していたりしたのに…迷惑かけちゃう。
…それに…
「…」
いよいよ、すぐ傍でしていたはずの環さんの声まで聞こえなくなって。
そっと、目を閉じながら意識の残っている最後の瞬間まで…あたしは、思った。
…環さんだけには、助けられたくない。
そう思っていたのに。
楽しみにしていた幼馴染との再会の場をぶち壊して、
初恋の人にまで迷惑をかけて。
…最低、あたし。
こんなんじゃ、乱馬に嫌われちゃっても…文句何ていえない。
ごめんね、乱馬。
余計な事ばっかりして、ごめんね…。
「…」
乱馬。
意識が完全になくなる寸前、あたしは一言だけそう呟いて…・そのままそこで動けなくなった。





…それから、どのくらい経ったんだろうか。
あたしがぼんやりと目を開くと、茶色い木目の天井がまず目に飛び込んできた。
井草の匂いと、何かに包み込まれるような温かさがあたしの身体をくるんでいる。
先ほど座り込んでいた公園のベンチに比べれば、あたしの身体自体も随分と「柔らかい」ものにその身を預けている ような気がした。
どうやら、和室に敷かれている蒲団に…あたしは横たわっているようだった。
そして、
「あ!目え覚ました!?」
「良かったわ…」
そんな風に自分の置かれている状況を把握しようとしていたあたしの耳に、その内高さの違う女の人の声が飛び込 んできた。
どっちも、聞き覚えのある声。
「…」
あたしは、ゆっくりと目線を声がした方へと向けた。
そんなあたしの目には、若い女の人が二人、飛び込んでくる。
一人は、青い着物に黄色い小花を散らしたあでやかな着物姿。
一人は、深い青色の和装に白い文字刺繍が散らしてある衣服。
両方とも髪は長くて、そして、…関西弁。
「右京…環、さん…」
そこに居る二人は、
右京と、
そして公園であたしに声をかけてきてくれた…環さんだった。
「公園に行って、びっくりしたわホントに!あかねちゃんが倒れているんやもんっ」
右京は、まだぼんやりとしているあたしの、蒲団の中の手をぎゅうっと握り締めながら、ホッとしたような表情をする。
「ここは…」
「うちのお店の二階やでっ。連絡貰ったあとすぐ公園に行って、あかねちゃんをここまで運んできたんよっ」
「…」
「公園で倒れているあかねちゃんを見た瞬間な、乱ちゃん、血相変えて。
 うちらなんてほったらかしで、すぐにあかねちゃんを抱き上げてなー…とりあえず寝かせてやらなって」
そして、
「とにかく、今乱ちゃん呼んできたるから」
右京はあたしの手をそっと離すと、そういいながら部屋を出て行ってしまった。
…そうなると、必然的に部屋に残るのは、
「それにしても、驚いたわあ。世間てホントに狭いんやねえ」
「…」
「まさか、これから逢う人たちの知り合いだったなんて。不思議な縁もあるもんやね」
そんな事を言いながら、柔らかい笑顔を浮かべている環さんと、
「…」
その柔らかい笑顔を、複雑な表情でみつめる…あたし。
「…ありがとうございました」
あたしは、まずはお礼を述べようと環さんへと声をかけた。
「困っている人を見たら助ける。そんなの当然やろ」
「…」
「それよりも、具合はどう?」
が、環さんは逆にあたしの身体を気遣いそう尋ねてくる。
「…」
あたしは、黙って一度頷いて見せた。
すると環さんはホッとしたような表情をして、
「ああ、よかったあ。それならええねん」
頷いたあたしの頭を優しく撫でた。
「…」
…そんな環さんの行為にあたしは、
「…」
「えっ…ちょ、ちょっとどうしたん!?いきなりっ…」
…大粒の涙を一筋、流した。
「…」
あたしは、驚いたような表情をしている環さんの、あたしに触れている手を、強引に蒲団をひっかぶるふりをして振り 払った。
そして、そのまま彼女へと背を向けて身を丸める。
「一体どうしたん?」
環さんは、自分に背を向けているあたしがかぶっている蒲団をポンポン、と叩いてそう尋ねてくるけれど、
あたしはそれには答えようとしない。
「困ったなあ。一体どうしてしまったんかなあ」
環さんは、訳も言わずに背を向けてしまったあたしに、少し困惑しているようだ。
…当たり前だ。環さんには、どうしてあたしがこんな態度を取るのか、見当もつかないのだから。
彼女にしてみれば、初対面。
そして、倒れてしまったのを親切にも助けてやった相手に、礼を言われるならまだしも、こんな風に拒絶されるいわ れは全く無い。
「…」
「なあ、どうしたん?」
「…」
それでも、必死にあたしに声をかけてくれる環さんに、あたしは何も答えず背を向け続けていた。

…と、その時。

「…あ、変ります?分かりました」
それまであたしに声を掛け続けていた環さんが、不意にそれまでとは違う口調でそう呟いた。
そして、
「何かよう分からんけど、はよ、身体治し?」
ぽん、ぽん。
最後に二度、あたしの被っている蒲団を叩くと、
「ほな、後はよろしゅう」
…そういって、あたしの傍から離れたようだった。
直後、トン、トン…と階段を降りていく音がした事を考えると、環さんは部屋を出て一階の店へと降りていっ たのかもしれない。
…と、言う事は。
「…」
あたしは、それまで頭から引っかぶっていた蒲団を、ゆっくりとはいだ。
そして、そのままゆっくりと…部屋の入り口の方を振り返る。
「…」
…あたしの予想通り、そこには、少し怖い顔をした乱馬が座っていた。

 

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