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→2月 見習いキューピッドの矢

よし、決めた。
次にあの階段を降りてきた奴を、この矢で射抜くぞ。

…見習いキューピッドの俺・乱馬は、現在人間界で、一人前のキューピッドになるための「最終研修」を行うべくこうしてとある場所へとやって来た。
「最終研修」の課題は簡単。
誰か適当な人間に矢を打ちターゲットにして、その人間の恋路を叶えてやればいい。
たったそれだけの事だ。
まあ?もともと成績優秀な俺にとっては簡単な課題だから?
さっさと課題を済ませて元の世界へ帰りたいところだ。
と、その時。
パタパタパタ…と、俺が潜んでいる階段を降りてくる音が聞こえた。
「よし、チャンス!」
早速俺は意気込んで、階段の影からその降りてきた人物に向かって矢を構えるも、
「っ…」
自分でも驚く事に、躊躇してそのまま…矢を下ろしてしまった。
「くっ…」
もう一度矢を引こうにも、そう思う心とはウラハラに、身体が言う事を聞かない。そう、まるで身体が本能的にそれを拒絶しているかのように。
そんな俺の前を、その人物は慌しく走り去っていった。
長くて、綺麗な黒髪をなびかせて。
真っ白な肌を、少し赤く染めて。
走り去るその瞬間に、何だか「フっ…」とすげえいい香りを漂わせて。

「あかね、待ってよっ」
「もう、何言ってんの!走っていかないと次の授業に間に合わないよっ」
後から走ってきたもう一人の女に、そんな事を叫ばれながら、あっという間に俺の前を走り去ってしまった。
「っ…」
とりあえず俺は、「あかね」と呼ばれた女ではなく「あかね」を追いかけていた女に矢を打ち、とりあえず事なきを得た。
「研修対象」はとりあえず、確保。
でも…
「…」
何だか俺は、先ほどの自分の行動が自分で納得できずにいた。
女の顔を見た瞬間、何だか身体がビクっ…と動いた。
「だめだっ」
…何だか良くわからないけれど、そんな事を思った気がする。
「だめ」って何だよ。
俺はキューピッドだぞ?矢を打った人間の恋をかなえるのが俺の仕事だろうが。
それを、「だめ」とは何だ、「だめ」とは。
それじゃまるで、俺があの「あかね」って女の恋を叶えたくねえみたいじゃねえか。

…あーあ、優秀でもまだ俺はやっぱり「見習い」なんだなあ。
とりあえずは、あの「あかね」って女を追いかけていた奴の恋でも叶えて、
そっからあの「あかね」って女を観察してみるか。
俺が、元の世界に帰らなくてはいけない期限、ギリギリまで。

…変だな。
さっきまでは、さっさと研修済ませて早く元の国へ戻りたい一心だったのに。
この気持ちは、一体なんなんだ?

 

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