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(良牙までいなくなっちまうとすると・・・どうしたものかな・・・)
急襲してきた紫苑の手から逃げる途中に良牙とはぐれてしまった乱馬とムースであったが、とりあえずは城の厨房へ忍び込みお湯を手に入れ、兵の追跡を逃れつつ、必死で今後の策を練っていた。

・・・紫苑は、非常にやっかいな相手だった。
牙を立てたものの姿と記憶をコピーする能力を持つ紫苑は、乱馬達の目の前に、どのような姿で現れるかが全く予測できなかった。
実際にあかねや朝凪の姿でも現れたし、先程のように、メイドとして姿をあらわしたりもした。
(一体、どうすれば・・・・)
乱馬は、圧倒的なこの不利な状況をどう打破していくか良い考えが浮かばない自分に、憤りを感じていた。
・・・と。
「あれ?ここは・・・」
そんな事を考えながら移動しているうちに、乱馬とムースは、地下室のような場所の入り口へと差し掛かっていた。
薄暗い通路。
その両脇に、ぼんやりと灯る小さな灯り。
どう考えても、誰かの寝室・・・とか、人が普通に生活する場所へ続いているとは思えない雰囲気を醸し出していた。
(・・・)
乱馬とムースは一瞬顔を見合わせたが、このままただ引き返しても兵達に見つかるだけなので、とりあえずはその通路を奥へ、奥へと進んでいく事にした。

乱馬達が気を引き締めながらその薄暗い通路を進んでいくと、その突き当りには、重々しい鉄の扉があった。
無用心にも鍵がかかっていないその扉には、「jail」と書かれていた。
「jail・・・牢屋じゃな」
ムースが、眼鏡を動かしながらぼそっと呟いた。
「牢屋・・・」
・・・どうやらここは、城の中に進入したものや罪人を投獄する牢のようだ。
なるほど、それならばこんな薄暗い場所にあっても納得がいく。乱馬は一人納得した。
乱馬は、ゴクリと一度息を飲み込んだ。
・・・乱馬達には、他に逃げる場所もない。
それに、 まさか追っ手から逃げている者が自ら自分達を投獄するための牢に飛び込むことなど、追いかけている兵士たちも夢にも思わないだろう。
「入るぞ」
「ああ」
乱馬達は、その鉄の扉をゆっくりと押し開けた。
・・・ 重い鉄の扉を開けると、そこにはヒンヤリとした空気が漂っていた。
両脇に空の牢が並び、真ん中には石畳の通路。
扉の向こう側のこの部屋は、やけに静まり返っていた。
「・・・」
乱馬とムースは、ゆっくりとその石畳の通路を歩いた。
・・・中には、牢だというのに見張りの兵はいなかった。
きっと乱馬達をを探す為に、ここの兵達も狩り出されているのだろう。
乱馬達にとっては、それが唯一の救いだった。
乱馬達は、そんな事を考えながらゆっくりと、その石畳の通路を進んでいった。
・・・と、その時だった。


「・・・そこの青年」


ちょうど、真ん中あたりまで通路を進んだ頃だろうか。
乱馬達は、不意に牢の中から声をかけられた。
「?」
乱馬達が慌てて声のした方を見ると、
「ここじゃ、ここじゃ。この牢じゃよ」
・・・それまでは全くの空の牢ばかりが続いていたのに、乱馬達が通り過ぎようとしていたその牢には、ポツンと一人、老人が座って手を振っていた。
「・・・」
乱馬達がハッと身構えると、
「ああ、安心しろ。わしは別におぬし等を捕まえようとは思っとらんよ。ここの兵みたいにな」
その老人は、身構えた乱馬達に向ってそう言うとからからと笑った。
「・・・」
乱馬は身構えながらも、そんな老人を少し観察してみた。
・・・よく見るとこの老人、牢に投獄されている「罪人」とは思えぬようなきちんとした身なりをしている。
(紫苑の手先じゃないというのか・・・?でも・・・)
乱馬が半信半疑の表情でじろりとその老人を睨んだままでいると、老人はコホン、といちど咳払いをし、そして、
「青年よ。そなたはあの捕われの姫君を助けに来たのではないのか?」
いつまでも自分を信じようとしない乱馬達に痺れを切らせ、そうはっぱをかけてきた。
「なッ・・・あんた、あかねの事を知ってるのか!?」
乱馬がハッと表情を改めると、
「当たり前じゃ。あのお姫さんとは、この牢で話もしたぞ」
「!」
「麗しい見た目とは正反対で、随分威勢のいい姫君だったが・・・あんまり時間もない」
老人ははそう言うと、乱馬達を手招きして牢のすぐ際まで呼び寄せた。
そして、
「・・・わしの名は、翠麗。詳しくは後で説明しよう。だからとりあえず、この牢から出るのを手伝ってくれ。見張りの兵がいなくなるこの瞬間を待っていたのじゃ」
牢に捕われの老人:翠麗はそう言って、乱馬に、
「その・・・牢にかけられている鍵を、鍵穴がこの牢の中に向くように持ち上げてくれんか?」
そう指示を出した。
「・・・」
乱馬は一瞬ためらったが、
(でも・・・今はもうどんな小さなことでもいいからあかねの手掛かりが・・・)
その思いには勝てず、乱馬はこの翠麗、という老人を信じる事にした。
「・・・こうか?」
乱馬が指示されたとおりに鍵穴を牢の内側へと向くようにすると、
「そうじゃ。そのまましばし、そうしていてくれ」
翠麗は満足そうにそう言うと、
「・・・」
何やらモゴモゴと「呪文」のようなものを呟いていた。
そして、
「カ!」
いきなり渇を入れるかのようにそう叫ぶと、左手の人差し指を、乱馬の手にしている鍵の方へと向けた。
そのとたん、ひゅッ・・・と、細い「光」が翠麗の左手の人差し指から乱馬の方へと走った。
そして、
・・・・バキン!
その「光」が鍵へと到達したその瞬間、乱馬が手にしていた牢の鍵が、音を立てて粉々に砕け散った。
「うわッ・・・」
・・・突然鍵が飛び散ってしまったので、乱馬が慌てて手をババババッ・・・と払うと、
「いやー、おぬしらのおかげで助かったわ」
そんな乱馬の様子をおかしそうに眺めながら、翠麗がゆっくりと牢から出てきた。
「いや、すまなかったな、青年。この牢には特殊な魔法がかけられていてな・・・。ああやって、鍵穴に直接強い魔法を送りこんでやらないと 鍵が開かんようになってるんじゃよ」
「え?」
「兵は気づいてないが、ワシ位の魔力を持つものならば、簡単に鍵を壊す事は出来る。ただし・・・今みたいに鍵穴を内側に向けてくれるものがいないと、真っ直ぐにその力を送り込むことが出来なくて な。だから、兵がいなくなるこの瞬間を待ってたんじゃ」
翠麗はそう言って、乱馬とムースに頭を下げた。
そして、
「助けてくれたお礼に、あの姫君を助ける手助けをしてやろう。わしに付いて来い」
翠麗は、乱馬とムースに向って改めてそう言った。
だがもちろん、
「付いて来い」といわれて「はい」と気軽に答えられる物でもない。
「・・・付いて来いって言われても、俺たちはまだあんたの事を信用しきったわけじゃねえ」
「そうじゃ。だいたい貴様は、紫苑の手下ではないのか?」
乱馬とムースが、当然のことのように疑問の目を翠麗に向けると、
「わしを信じるか信じないかはおぬしらの勝手じゃ」
翠麗はそう言って、自分を疑わしい表情で見ている乱馬達を見た。
そして、
「じゃが・・・このままいつまでも逃げ回っていては、らちがあかんのではないか?わしはその手助けをしてやろう、と 言っておるのじゃ。それに、あの姫君には、もうそんなのんびりとしている時間はないはずじゃ・・・」
「!?」
その翠麗の言葉に、乱馬はハッと息を飲んだ。
その乱馬の様子を確認したかのように翠麗は頷き、続ける。
「姫君にかけられた魔法が彼女の身体を完全に支配してしまったら・・・姫君はおぬしらの元へは絶対に戻らぬぞ。・・・紫苑を倒さぬ限り」
(こいつ・・・紫苑と同じ事をいってやがる・・・)
乱馬は、翠麗の言葉にブルっと身を奮い立たせた。
「・・・そんな事でおぬしを信じろというのか?」
・・・ムースはそれでも翠麗につっかかっていこうとしたが、
「ムース」
乱馬はそんなムースを手で制した。
そして、
「・・・分かったよ、じいさん。話を聞こう。ただ・・・少しでも妙なマネをしやがったら・・・たとえじいさんだって、容赦はしねえぞ」
乱馬は翠麗に威圧をかける意味で、バシッ・・・と拳を手で合わせる素振を見せた。
「はは、わかっておるよ。・・・さ、こちらへきなされ」
翠麗はそんな乱馬の姿を見て、「いいのう、若者は元気があって・・・」と、笑った。
そして、
「こっちじゃ」
ひとしきり笑うと、乱馬達を誘導して歩きだした。

こうして、牢で出会った不思議な老人「翠麗」と行動を共にする事になった乱馬達であったが、乱馬は一緒に通路を歩いている内に気が付いてしまった。
・・・どうやらこの翠麗という老人、この国にいる兵達とは「少し違う」魔法を操る事が出来る人物のようだ。
兵達が「火」「水」「風」などの自然の力を駆使した魔法を操るのに対して、翠麗は、
「この方が移動しやすいじゃろう?」と、「短時間だが、他のものに姿が見えなくなる魔法」を自分を含め乱馬達にかけ たのだ。
・・・そういえば、さっきも「紫苑は気がつかないがワシ位の強い魔力の持ち主は」と、翠麗は口にしていた。
(これは・・・俺たちにとって有利な味方かも知れねえな)
偶然であった、紫苑の手下ではない強力な魔法の使い手。
乱馬は、あかね奪回への突破口を開けたような気がして少しだけ心が弾んだ。


「さ、ここじゃここじゃ」
・・・それから、五分くらい城の中を歩いただろうか。翠麗がそう言って、不意に立ち止まった。
「ここって・・・廊下の突き当りじゃねえか」
乱馬は、思わずそう呟いてしまった。
・・・翠麗が乱馬達を案内したのは、城の最上階に近い石畳の廊下が続く階の、突き当たりだった。
「おい、ふざけてんのか?これじゃ前に進めないだろ?」
乱馬があきれた口調で翠麗に向って言うと、
「見た目はな」
翠麗はそう言ってニヤッと笑うと、その突き当たりの壁に左手の人差し指をスッ・・・と向けた。
その途端に、
ぐにゃ・・・
その指で触れた部分が、まるで水でも張っているかのようにゆらり、ユラリと揺れた。
そして、
「さ、入れ」
翠麗はそう言って、そのゆがめられた場所へと身体を進めた。
翠麗の身体は、壁にぶち当たることなく、そのゆがめられた空間へとするりと入り込んだ。
「!」
その「非現実的」な光景に乱馬達は一瞬驚いたが、
「・・・行くか」
「そ、そうじゃな」
このまま、ここで躊躇しているわけにもいかない。
二人は思い切って、そのゆがめられた空間へと入り込んだ。
「よし、じゃあ一度空間の入り口を閉じるぞ」
・・・乱馬達が自分を追ってきたことを確認した翠麗はそう言うと、再びその歪んだ空間へと左手の人差し指を向け た。
そのとたん、ヒュンっ・・・と音を立て、歪んだ空間は姿を消した。
乱馬達が通り抜けてきた場所は、ただの「壁」とかしていた。
「じいさん、ここは・・・」
乱馬が翠麗に尋ねると、
「ここは、ワシが紫苑の父・・・先代の王に与えられた、秘密の研究室じゃよ。ワシも時々しか利用しておらん。それにここの存在は、紫苑も知らないはずじゃ。安心せい」
翠麗はそう言って、乱馬達に「とりあえずそこに座れ」と、部屋の中央にあるソファを指差した。
「・・・」
乱馬たちは、指示されたとおりにソファへと座った。
そんな乱馬達と対峙するように、翠麗も座った。
そして、
「さて・・・青年達よ。そろそろ本題に入ろうかの?改めて紹介しよう。わしの名は翠麗。この亜空の城の宮廷魔導士であり、唯一の学者じゃ。
 それと今までは紫苑の世話係も兼ねておった」
「おった?」
「そうじゃ・・・。わしは今、紫苑にとって、不穏分子以外何者でもない」
「不穏分子・・・」
「ああ。そもそもこうなったのには訳があってな・・・」
驚いてる乱馬達に、こうして翠麗はまず、先刻牢であかねにしたのと同じ説明を乱馬達にした。
・・・



・・・乱馬はそんな翠麗の話を聞きながら、
「銀色の月・・・あ!どっかで聞いたことあると思ったら・・・」
不意に思い出したことがあり、ポケットの中から一枚の紙を取り出した。


「それは?」
「これは・・・紫苑が残した雷の媒体にうっすらと残されてた文字の写しだ。中途半端で何を言ってるか分からないような文だと思ってたけど・・・・そっか。この続きだったのか」
乱馬は紙を握り締めてしきりに頷いてみせた。
そんな乱馬の為に、翠麗は再び『銀色の月』のありかを示す文を読んでくれた。



赤き涙を誘う月、選ばれしものを守りたもう。
その月、人魅了しては次々と赤き涙、誘わん。
選ばれしもの道迷うときあれば、
九時の方向より光さすとき、古の扉の向こうに銀色の月あらわる。
二つの月が交わりしとき、 真実の光そこにさす。
真の宝もそこに現れん




「赤き月は既に充分と言っていいほど、紫苑を魅了しておる・・・。そんな紫苑と、そして赤き月によって増長された魔力に打ち勝つ為には・・・」
「この、古の扉とやらの向こう側に隠された『銀色の月』が必要って事じゃな」
ムースが、翠麗の言葉に相槌を打った。
「じゃが・・・学者である翠麗どのでも何もわからんのじゃろ?その、銀色の月が隠されてるっていう古の扉 は・・・」
「そうじゃ。この国の書物を片っ端から調べてみたが、そんな記述はなかった」
翠麗はそういって、ため息をついた。
「・・・打つ手、ねえのかよ?じいさん」
乱馬はそんな翠麗を責め立てるようにつめよった。
と、
「・・・書物には、確かに何の手がかりもなかった。だが・・・」
翠麗はそんな乱馬を落ち着かせるように手で制すと、
「この亜空の城で一番長生きしている晶ババならば、何か分かるかもしれん・・・・」
そう言って、改めて乱馬達の顔を見つめた。
「晶ババ?」
「どんな人なんだ?その晶ババって」
乱馬とムースが「亜空の城で一番の長生き」という言葉に反応し、思わずゴクリ・・・と唾を飲み込むと、
「なあに、年齢の割に結構おちゃめな婆さんでな?見た目は若く見えるようにわざわざ魔法をかけてるんじゃが・・・実際は三百年、もうこの空間で生きておる」
「三百年?!」
「・・・おばばの外見が、シャンプーみたいなもんかのう?」
・・・乱馬とムースは思わず顔を見合わせてしまった。
「とにかく晶ババに話を聞いてみるしかなかろう・・・」
翠麗はそういうと、 自分が身にまとっている衣服の下から、ふいにペンダントのようなモノを取り出した。
「それは?」
乱馬が尋ねると、
「これはな、わしら亜空で生活する者が、魔法を使う時その力を増幅させたい場合に使うものなんじゃ」
翠麗はそう言って、そのペンダントのペンダントヘッド部分を乱馬達に見せてくれた。
・・・・ペンダントヘッドの部分をよくみると、
そこには、真珠のつぶ程の大きさの鏡がフレームにはめ込まれていた。
「わしが持っているものはこんな豆粒程度のもんじゃが、紫苑が先代から受け継いだ魔力増長の鏡は、もっと大き い。それだけ、紫苑の魔力は強いという事じゃが・・・」
翠麗は、乱馬達に軽く説明をしてくれがてら、そのフレームにはめ込まれた小さな鏡を、握り締めた。
そして何やら鏡に向ってぶつぶつと呟いていた。
「・・・わかった。では一時間後に」
翠麗はしばらくブツブツと呟いた後、そんなことを言って、やがて口を閉ざした。
「じいさん、頭は大丈夫か?気は確かか?」
・・・鏡を握り締め、一人ぶつぶつと呟いている翠麗に急に不安に覚えた乱馬が思わず翠麗に声をかけると、
「平気じゃって。別に気が触れたわけではないぞ?わしの魔力を一時的に増幅させて、晶ババの心へと直接魔法で語りかけたんじゃよ」
翠麗は、「失敬じゃな」と苦笑いをしながら乱馬に答えた。
「へぇ。魔法の力っつーのはそんなことまでできんのか」
便利なんだなー、と乱馬が感心していると、
「便利は便利じゃが、この魔法は力をちと消耗する・・・」
それまで苦笑いをして乱馬とやり取りをしていた翠麗が、急にふらふら・・・とソファへと倒れこんでしまった。
「おい、じいさん!」
「大丈夫か!?翠麗どのッ」
乱馬達は慌てて翠麗の身体をソファから起こそうとするが、
「大丈夫じゃ。少し横になっていればすぐ治る」
翠麗は慌てた乱馬達にそう言って聞かせると、
「一時間後に、城の厨房の奥にある、ババの専用の部屋へ会いに行く約束をした。それまでお主らも少し休んどけ」
そう言って、目を閉じてしまった。
・・・・乱馬達と地下牢で出会って以来、翠麗は自分と、そして乱馬達を助ける為に魔法の力を連発していた。
それに加えて、更にその力を消耗するような強力な魔法をも使った今、どんなに「強力な」魔法の使い手である翠麗でも、一時的にその体力にも限界がきたのだろう。
「・・・」
・・・城中を逃げ回っている今、 乱馬達が頼れるのはこの翠麗しかいないのだ。
乱馬とムースは、そんな翠麗を起こさぬように気を使いながら、約束の時間までを静かに過ごした。





そして、一時間後。
ようやく体力を復活させた翠麗とともに、再び「短時間姿を消す魔法」で城の厨房へと向かった乱馬達は、そこで待ってた晶ババの姿を見て思わず声をあげてしまった。
「あら?どこかであったことある?」
もしや、軟派?
・・・そう言って笑うその晶ババの顔は、乱馬達が教会の祭壇の陰に身を潜めている時、妙に大雑把に掃除をしたあげく、乱馬達に水をぶちまけた・・・あのメ イドだったのだ。
「なんと!あのとんでもないメイドがのう・・・」
「外見は俺らと変らないのに・・・三百歳」
乱馬とムースがそんな晶ババの顔を見ながらぼそぼそと囁きあっていると、
「失礼な若造達ね。挨拶もなしに」
晶ババは、にっと笑いながら乱馬達にそう言った。
「あ・・・」
乱馬達が慌てて自己紹介しようとすると、
「うそうそ。一時間前に翠麗から軽く聞いたわ。それよりも・・・君達、あんまりゆっくりしてる時間ないんじゃない?」
晶ババはそういって、乱馬達が話し出そうとするのをせき止めた。
「時間?」
「そうよ。君らが助け出そうとしているお姫様と紫苑坊ちゃんの結婚式・・・明日の夜執り行うって、さっき発表があった のよ。おかげで城の厨房は明日の夜の準備と今晩の前夜祭の準備で大賑わい」
「!」
乱馬は、思いのほか事態が深刻な方向へと進んでいる事を改めて思い知らされ、身体中の血が一気に引いたような 衝撃を受けた。

 

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