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その頃。
あかね達と再び別れた乱馬は、自分を追ってきた兵を片っ端からなぎ倒しながら、『銀色の月』を片手に紫苑のいる 教会へと向っていた。
そんな乱馬の頭の中は、どのように紫苑と戦って倒すべきか・・・という作戦と、そして一つの「疑問」でいっぱいだった。
「疑問」・・・それは、今こうして乱馬が手にしている『銀色の月』の事だ。


古の言い伝えどおりに、紫苑の持つ「赤き涙を誘う月」と対等の魔力、そしてその魔力を真っ向から跳ね返す事の出来る不思議な剣・銀色の月を、乱馬は手に入れる事は出来た。
でも・・・
(確かに、剣を見つけることは出来たけど、まだ言い伝えの最後の部分が・・・謎のままだ)
乱馬は、自分がいまだ解明できていない例の言い伝えの最後の部分のフレーズが気になって仕方なかった。


二つの月が交わりしとき、 真実の光そこにさす。
真の宝もそこに現れん


(二つの月が交わりしってことは、二つの剣が刃を交わすときって事だろ?さっき確かぶつかり合ったはずだけど、特 に何にも起こんなかったよなあ・・・)
乱馬は、先ほど一瞬だけ紫苑と件を交じり合った時の事を思い出した。
が、特にその時に何も起こらなかった・・・という印象しか乱馬の中にはない。
最も、その時はあかねの奪還で頭はいっぱいだったのだけど。
(真実の光が差す・・・真の宝も現われる・・・一体何を言っているのか・・・)
「せやッ・・・」
「たあッ・・・」
・・・次々と自分に襲い掛かってくる兵をなぎ倒しながら乱馬はそんなことを考えていた。
そして。
「はあ、はあ・・・」
ようやくはむかってくる兵をすべて倒し、紫苑の待機する教会へと、乱馬はたどり着いた。
(よしッ・・・これでアイツを倒して、あかねにかけたふざけた魔法を解いて・・・・)
乱馬は自分に再度気合を入れなおし、教会の扉に手をかけながら何気なく、自分の手にしている『銀色の月』に目を やったのだが・・・


「でえ!?」

・・・改めて自分の手にしていた『銀色の月』を目にした乱馬は、素っ頓狂な叫び声をあげてしまった。
何と、乱馬が今まで兵をなぎ倒す為に使っていたこの『銀色の月』。
いつのまにか、白く鈍く、そして鋭く光っていたその刃の部分が欠けてしまっていて、妙に細々となってしまってい たのだ。
はじめは「銀色の三日月」を思わせるような美しい弧を描いていたはずなのに、今乱馬の手の中にある剣は、まるで食用のパンを切る時に使うナイフのように細く、ぎざぎざに、そして妙に直線的に なっていた。
紫苑の強力な魔法なんて受け止めたら、容赦なく折れて砕けてしまいそうな感じさえ受ける。
「な、なんなんだよッこの剣は!」
乱馬が思わず情けない声でそう叫んでいると、
「やっと戻ってきたか、外道め!」
乱馬が戻ってきた気配に気がついてしまった紫苑が、教会の中から扉越しに大きな声で叫んだ。
(や、やべえッ)
乱馬が思わず姿を変えてしまったその『銀色の月』を後ろでに隠しながら教会の扉を開けずに入り口から遠ざかる と、
「貴様が教会へ入ってこないのなら、私がそちらに出向いてやろう!」
紫苑が教会の中から大きな声でそう叫んだ。
そしてそれと同時に、
ドオン!
けたたましい爆音とともに、教会の扉が勢い良く吹き飛んだ。
「!」
乱馬はあまりの光景に思わず息を飲む。
「くくく・・・怖気づいたか、外道め。だが・・・わが剣の威力、こんなものではないわ!」
破壊された扉の奥で、紫苑がそう言って笑っている姿が乱馬の目に飛び込んできた。
紫苑は、ゆっくりと「赤き涙を誘う月」を振り上げた。
そして、
「我剣の威力・・・受けてみよ!」
そういって、素早く床を叩きつけるかのように剣を振り下ろした。
とたんに、
ジジジジジ・・・
剣から発せられた紫苑の魔力が、まるで「意志をもった海の波」のように、猛スピードで乱馬の元へと向ってきた。
蒼く、そして徐々に大きく力を蓄えて走り来るその紫苑の魔法に、
「!」
乱馬は本能的に危険を察知し、しかし飛びのける暇もない・・・と、慌てて持っていた『銀色の月』でその魔法を受け 止める。
キーンッ・・・
『銀色の月』で受け止められた魔法は、剣の刃にあたった瞬間あたりにパアア・・・と散ってしまった。
「ふう・・・」
乱馬はかろうじて紫苑のその魔法を食い止めることが出来た、と安心して胸をなでおろしたが、
「でえ!?」
・・・再び、素っ頓狂な声をあげた。
なんと、先ほどの紫苑の魔法を受けた際に・・・・『銀色の月』、見るも無惨に、剣の真ん中あたりでパキっ・・・・と折れ てしまっていたのだ。
「あああああ・・・・・」
あまりの事に驚く乱馬の足元には、小気味が良いくらい真っ二つに折れた刃の片割れが落ちていた。
(な、何て役立たずな剣なんだ!)
乱馬は折れてしまた剣を、ワナワナと振るえながら見ていたが、
「油断大敵、これで決着だ!死ねッ・・・」
紫苑は、そんな乱馬に向って再び容赦なく剣を振り下ろして見せた。
すると、今度は先ほど乱馬に向けられたものよりももっと大きな蒼い光の波・・・そう、まるで蒼い「龍」のようなうねりを持つ魔 法が、乱馬に向けて発せられた。

ゴオオオオオッ・・・・

辺り一体の空気をも飲み込んでしまうその魔力、そしてその勢いに、
(あかねッ・・・ゴメン、俺・・・約束守れないかも知れねえッ・・・)
そんな事思いたくはなかったが、乱馬の心にそんな思いがふいにわきあがった。
乱馬は、折れてしまった『銀色の月』では自分を守りきれない事は分かってはいたが、それでも直で魔法に直撃するよりはマシ・・・いや、どうせ折れた剣なら何もなくても一緒か。
・・・など、色んなことをグルグルと考えながらも覚悟を決めてぎゅっと目を閉じた。

紫苑の放った魔法は、すでに乱馬の目前。
辺り一体、その魔法の威力のせいでゴゴゴ・・・と地面の土やレンガが巻き上がっている異様な光景。
シャアアアッ・・・と、蒼い「龍」さながらの魔法が、乱馬に牙をむく。
(くッ・・・)
乱馬は折れてしまった『銀色の月』をその蒼い「龍」に差し出すかのようにして身を守るべく・・・ぎゅっと自分の身体に 力を込めた。
そして、
キーンッ・・・・
・・・『銀色の月』と、蒼い「龍」がぶつかったと思われる、その瞬間。
カカッ・・・
目をつぶっている乱馬の瞼越しにも振動を感じるくらい、辺り一体に光が生まれた。

「!?」


が。
光は感じた。
グンッ・・・という魔法を受け止めたという衝撃も感じられた。
しかし不思議な事に、それっきり自分自身には痛みや変化が全く感じられない事に、乱馬は気が付いた。
そしてそれを不思議に思った乱馬が、閉じていた目をゆっくりと開けると。



「なッ・・・こ、これは!?」


次の瞬間乱馬の目に飛び込んできたその「光景」に、乱馬は思わず声をあげてしまった。
「!?」
乱馬だけではなく、
「そ、そんなことが・・・!?ばかなッ・・・」
その「光景」を遠くから見ていた紫苑でさえも声をあげている。
(な、何なんだこれはッ・・・)
乱馬は、改めて自分の目の前にあるその「光景」を見た。
・・・乱馬の目の前。
乱馬によって握られていた、折れてしまった『銀色の月』が、紫苑の「蒼い龍」の魔法を受けて更にその刃を粉々に砕け散らせるどころか・・・・
まるで、まるで向ってきた「蒼い龍」を吸収するかのように強大な、「銀色の光」を帯びた刃。
乱馬の背丈よりも長く、そして光り輝く大きな刃を持った三日月の剣に姿を変えていた。



二つの月が交わりしとき、 真実の光そこにさす。
真の宝もそこに現れん



古の言い伝えの最後の部分。
そこにあるように、
「赤き涙を誘う月」と『銀色の月』
その二つの魔力がぶつかり、光が生まれた瞬間に・・・この国に、今一番必要なものを導き出す「宝」が生まれたの だ。
紫苑を倒す為に乱馬が手にしているその『銀色の月』こそが、今この国に一番必要な真の宝であると、証明された瞬 間だった。

 

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