夜中にふと目を覚まし隣を見ると、俺にぺったりとしがみついて眠っているあかねが涙を流していた。
一瞬、ギョッとした。
今日は喧嘩もしていないし、眠る前だってたくさん、たくさん愛を感じあったはずだった。
眠る直前まで、手とか繋いでいたはずだったけれど・・・今日に関しては、本当に心当たりがない。
「・・・」
俺は、目を閉じて眠ったまま涙の跡を顔につけているあかねの頬をそっと指で触れた。
絹のようにつるつるで、そんで柔らかくてシナヤカな頬。
俺にくっついて眠っているのだから本当は温かいはずなのに、涙が枯れ果てて冷え切っている。
手の平でそっとあかねの頬ごと触れると、小さな顔がすっぽりと俺の手の平にはまってしまった。
「・・・」
・・・俺の手の中で、じんわり、じんわりと温度が上昇する頬。でも、俺の手の温度だけでは、あかねの心の中までは暖められていないのかもしれない。
「・・・」
何で、泣いていたんだろうか。もしかしたら死んじまったお袋さんの事、思い出してたのかな。
それとも・・・
「・・・」
俺が、また知らず知らずの内にあかねを傷つけてしまったのだろうか。
その可能性が全く無いとは言えないので、俺は何だか急に不安に駆られる。
・・・普段から俺は、照れ隠しでついつい心無い事を言ってしまう。
負けず嫌いの性格が、事を悪化させる手伝いをする。
勿論、あかねの事が憎いとか嫌いとかそういうわけではない。むしろ、その逆だ。
大事で、どうしようもなく大切で、守りたくて・・・でも、そう思えば思うほど余計に酷く、傷つけてしまう事もある。
今日だって、俺にしてみれば喧嘩もしていないし何事も無く過ごしてきたつもりだった。
でもあかねは・・・違っていたのか。
どんなにお互いを求め合っても愛し合っても・・・こんな風に泣かせてしまう愛し方を、俺はしてしまっているのだろうか?
・・・
愛は、理不尽だ。理屈だけではどうしても理解することが出来ない。
思う気持ちの強さで、あかねを大切にしている、傷つけずにいられる事が推し量れたらどんなに良いだろうか・・・
「・・・」
あかねが涙を流して、悲しそうな顔をしてようやくそれに気づく俺は、本当にまだまだだと思う。
・・・せめて、明日の朝起きた時には笑顔を見せてくれますように。
俺は、あかねの頬に何度も自分の頬を摺り寄せながらそう小さく呟き、そして再び眠りについた。
君の心を壊す事。俺は、気づかずにそんな事をしてしまっているのだろうか。
君が欲しいもの、足りないもの、求めるもの・・・それらを全て望むのならば、この命をかけてでもそれを君に与える為に努力する。
君に対して、ありとあらゆる能力を持ちたい・・・それで君の心が独占できるのならば、君を手に入れられるのならばそう思う。
でも願わくば・・・君の心を壊すと言う、そんな能力だけは持ちたくないと願っている。