「ごめんな」
「…」
「ごめんな、あかね」
部屋の入り口、ドア越しに。
お互いの姿を見ることなく、俺達はそこにいた。
些細な事で喧嘩をし、部屋に飛び込んで泣いているあかねに、俺はこうして謝っている。
ついつい口をでる、酷い言葉。
それがあかねの心をどれだけ傷つけてしまうのか、どうして口から出すときに俺は考えないのか。
あかねを泣かせる奴は許せないと、俺はいつだって思っている。
でも、あかねを一番泣かせている奴は、実は俺なんだ。
そう思うと、俺は自分に腹がって仕方が無い。
「ごめんな、あかね」
「…」
「ごめん…だからここ、開けて、な?」
「…」
口を出る暴言は、勿論本心からの言葉ではない。
でも、俺がそう思っていたって、それが今のあかねに伝わっているとは限らない。
心で思っているだけじゃ、気持ちは全て、伝わらない。
伝わらないから、だから今、改めて言わせて欲しい。
あかねを泣かせた償いを、
あかねに対して思っている気持ちを、ちゃんと俺に言わせて欲しい。
ごめん、とか…そんな言葉だけで済まそうとは思っていないから、
大切なんだ、とか…そんな抽象的な表現で終わらせたりしないから。
だから!…
「あかね…」
返答の無いドアの向こうへ心をはせ、俺は何度もそう問い掛ける。
キミを泣かせる事。
他の誰かがすれば許せなくて、自分だって 絶対にしたくないことだと思っているというのに、
誰よりも一番分かっているはずの自分が、どうしてそれを繰り返してしまうのか。
どうして俺は、いつも。いつもいつもいつも、
いつもこうして、キミを泣かせてしまうのだろう…。