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→7.雷鳴

「あ…」

とある日の夜。
ちょっと寝付けなくて、何となくベランダへとやって来たあたし。
ボーっと空を見上げていると、星一つない天空の暗闇の中に、一筋の蒼い筋が走った。
その、目の奥にしっかりと残る光の数十秒あとに、ゴロゴロゴロ…とお腹の中に響くような轟音があたりに響く。
季節はずれの、雷。
「やだなあ…これから寝るのに…」
余計に寝れなくなっちゃうじゃない、とあたしはため息をつく。
幸いな事に雷はこの近くの上空にはいないようだけど、依然として暗闇の中を、一定間隔で蒼く、そして目の奥に残像を残しながらも素早く光っている。
昔から、「地震・カミナリ・火事・親父」って、怖いものを並べるけれど、上から二番目っていうだけあって、やっぱりカミナリは、あたしは怖いと思う。
昔の人はほんと、上手くいったもんだわ。
(あーあ…)
あたしは、時折光る夜空を、不安げに見上げながらそんなことを思っていた。
と、その時。
「珍しいな、雷かよ」
あたしが空を睨んでいるベランダに、乱馬がやって来た。
「乱馬」
あたしが乱馬のほうを振り返ると、
「何でそんな怖い顔して睨んでんだよ?」
乱馬はそんなことを言いながらあたしの隣に並んだ。
「え?あ、ほ、ほらその…綺麗だなと思って…」
あたしは、「実は雷が怖くて」とは言わずに適当にごまかそうとしたけれど、
「雷が怖くて寝れなくなりそうだなんて、ホント子供だよな」
…そんなあたしの浅はかな考えは乱馬はすでにお見通しのようで、隣に並んでるあたしの頭を、ポンと抑えた。
「な、何よッいいじゃない別に…雷怖くたって!」
あたしが、早速あたしを馬鹿にする乱馬にそう言い返した矢先、
カカッ…と、あたし達の近くの上空で、蒼く光がさした。
そして次の瞬間、
…ドォーン!!
ビックリするくらい近くで、雷が落ちた。
「わあ!」
あたしは慌てて耳を抑えてベランダにしゃがみこむ。
「おー、近いな」
乱馬は、そんなあたしをおかしそうに見ながら暢気にそんなことを言っていた。
「もーッ何とかしてよッこの雷!」
自然現象にそんな事いったってどうにもならないことは分かっているんだけれど、
あたしはそんなことを口走っていた。
「あかね、雷がなった時は耳じゃなくてヘソを隠すんだぞ」
「うるさい!」
「そんな怖がらなくたって平気だって。あ、何なら俺が隠してやろうか?」
乱馬がそう言って、耳を抑えてしゃがみこんでるあたしのパジャマをヒラっとめくった。
「こ、こんな時にふざけてる場合じゃなーい!」
あたしは、そんな乱馬に向って渾身の一撃。
空に轟く雷鳴よりも鮮やかなその一撃に、
「ぐえッ」
乱馬は無惨にベランダに崩れ落ちる。
「あーッちょっと!一人だ先に寝ちゃうなんてずるいわよ!」
あたしは、(あたしのせいで)床にのびてる乱馬の胸倉を掴んではカクカク…と乱馬 をゆすってみるけれど、
「お、お前のせいだろう-が」
乱馬はボソッとそう呟いて、カクン、と伸びてしまった。

「ちょっとー!起きなさいよー!」

…雷が光る冬の夜、
天道家のベランダでは、あたしの空しい叫び声だけが響き渡っている。


どうやらあたしは、
乱馬に対しても「雷」を落としてしまった…みたい。
「地震・カミナリ・火事・親父」。
一般的には昔からそういうけれど。
何だかそれを乱馬に話したら、
しばらくの間は、「カミナリ」の部分をあたしの名前に置き換えられて言われそうな、そんな予感がして ならないあたしだった。

 

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