・・・なんとなく眠れなかった夜は、ベランダで。
俺とあかねは、何のことない話をしては、その手持ち無沙汰な時間をやり過ごす。
俺たちが話す内容はいたって、普通。
何のことない日常会話。
だけど、そんな事を話しているだけでも、俺の(俺とあかね…といいたいが)心は温かくなる。
なんていうか、不思議なんだけど、あかねがいれば、俺の心はいつだって…温かい。
「ねえねえ、乱馬。心理テストしてあげる!」
…と。
あかねが突然そんなことを言って、俺の顔をいたずらっぽい笑顔で覗き込んだ
「心理テスト?何の?」
俺が胡散臭そうにあかねに聞くと、
「いいからいいから!ちゃんと答えてね!
問題。あなたにとって、『太陽』のような人と、『月』のような人をあげてください」
「はあ?」
「もちろん、異性で、よ?」
あかねはそういって、ジーっと俺の顔を覗き込んでいる。
・・・そんなふうにじっと見てられちゃ、上手く頭が回んねーだろーが。ドキドキして。
「ちょ、ちょっと待てよ。今考えるから」
俺は、わざとあかねから目をそらして、じっくりと冷静に考えてみる。
『太陽』と『月』か。
なかなか難しいな。しかも、異性だろ?
…そうだな。
『月』、まずそんな感じなのは・・・小太刀かな。
あ、なびきもなんとなーく『月』っぽいな。
あとは、『太陽』か。
太陽は…
俺は、そこまで考えて、ふと、あかねの方を見つめた。
…そういえば。なんだかあかねって、『太陽』みたいな奴だよな。
俺は、ふと、そんなことを思った。
一緒に居れば心が温かくなる。
一緒に居ると、俺もなんだか明るい気分になる。
それって、まさしく暗闇を照らし出す「太陽」なんじゃねえかな?なんて。
俺はふと、そう思った。
「ねえねえ乱馬、決まった!?」
…と。
あかねが、痺れを切らしたように俺に聞いてきた。
「あ?ああ」
「じゃあね、じゃあね…乱馬にとって『月』は誰!?」
あかねが、おれの腕にしがみつきながら、聞いてきた。
「そうだなあ・・・小太刀とか、なびきとか。かなあ」
俺がボソッと呟くと、あかねは「おお!」と驚いた顔をして、
「…あのね、『月』っていうのは、乱馬にとって苦手な異性なんだって。乱馬、意外にあたってない?」
「…そーだな」
俺はちょっと驚いた。
…うん、当たってる。
なびきはともかく、すぐに小太刀が浮かんだってのは…おお、意外とこの心理テストあ
たってんじゃねえか?
俺は思わず感心してしまった。
「じゃあね、じゃあね、乱馬にとって『太陽』は?」
あかねは続けて俺にせがんで聞いてきた。
「太陽は…そうだな、あかね、かなあ…」
俺が今度は、あかねの方を見ながらそういうと。
「…」
あかねは急に耳まで真っ赤なってしまった。
「な、なんだよ、その反応は」
熱でもあるのか?と、おれがあかねの額に手をやりながらあかねの顔を覗き込むと。
「そ、そうなんだ…へえ」
あかねは、答えを言わないまま急に家の中に戻ろうとする。
「こら。まだ答えを聞いてねーだろーが」
俺が、逃げようとしているあかねの首根っこを捕まえてそういうと、
「離してよーッ」
あかねは、まるで捕まえられた猫のように手足をばたばたさせている。
…ちょっと、かわいい。
「おまえなー。心理テストなのに、答えを教えてくんなきゃ意味ねえだろーが」
「ええー…」
「えー?じゃない」
俺がそういうと、あかねはしばらく下を向いてはひとりでテレテレとしていたが、その内、
「じゃ、耳貸して…」
あかねはそういって、俺を見上げた。
俺は、あかねが届くように、と、少し膝をかがめてやる。
「あのね、『太陽は』…」
あかねはそういって、一呼吸置くと、ちゃんと聞いていないと分からないような小さな声
で、呟いた。
・・・好きな人。
「…じゃ、そ、そーゆーことで!!」
あかねは、そう言い終わるが早いか、ダーっ…とベランダから出て行ってしまった。
「あ!こら!」
俺は、そんなあかねの後ろ姿を、ちょっと赤くなった顔でしばらく見ていたが。
(…なーんだ。やっぱりあたってんじゃねえか、この心理テスト)
なんだかそんなことを思うと、急におかしくなってしまう。
何のことない心理テストだったけど、なんだ、意外とあたってんじゃね−かよ。
あいつ、あんなに照れやがって。
自分で出しといて、そりゃねえだろ?
俺はあかねのさっきの様子を思い浮かべると、思わず吹き出してしまう。
(…だけど、なあ)
俺は、ふと笑うのをやめて、考えてみた。
あかねと一緒に居ると心が温かくなるのも。
いっしょにいるだけで、何だか明るい気持ちになるのも。
やっぱり、あいつが『太陽』みたいだなって…思ってたからなのかな?
どん暗闇でも、
どんな暗い気持ちでも、
どんな冷たい場所でも、
あかねいるだけで、こんなにも俺の心は温かく…そして明るい場所へと照らし出され
る。
…あ。
そういえば…。
「…そいえば、あかねの奴はこの心理テストは自分ではやったのかな…」
あいつはやったのかな、この心理テスト。
俺はふと、そんなことが気になってきた。
俺はあかねのことを『太陽』だとおもったとしても、果たしてあかねは…どうなんだろうな?
…仕方ねえな。
今度は俺が聞きに行ってやるか。
あ、でも答えを知ってってことはやっぱりもうとっくにやったってことだよな?
…あー、くそっ。
そうだとしたら、余計にあいつの答え、聞きたくなっちまった。
このままじゃ俺、今日は寝れそーにねえ!
「ここはやっぱり、確かめにいかないと…な?!」
俺は、いそいそとあかねの部屋へと向った。
そんな俺は、
さしずめ、まるで岩穴にこもってしまった天照大神に会いに行くかのよう
な…そんな感じ、か?
…俺の中に眠る、どんな暗闇でさえも明るく、そして温かく包み込む。
キミハボクノ、タイヨウダ