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→3.教会

教会。
それは主に祈りを捧げ、そして主の慈悲深い心を改めて感じ取る事が出来る、神聖なる場所。
そんな聖なる場所で、結婚という契約を結ぼうとしている我らに、主が聖なる力を与えてくれようとするならば、
我らもそれに見合うように、
神の前で誓うこの愛を、さらなる深い絆で永遠に繋ぎ止めていけるように、こころから誓おう。


…ある日、居間でTVを見ている時のこと。
それは、とある芸能人の結婚式の中継。二百五十人からいる招待客に祝福されたある芸能人が、結婚披露宴を執り行っている場面。
「この不景気だってのに、豪勢ねえ。さすが、芸能人は違うわね」
・・・披露宴中継がCMに入った瞬間、今までそれを食い入るように見ていたなびきお姉ちゃんが、ホウ…とため息をついた。
恋愛とか結婚式なんて全く興味ないと思ってたなびきお姉ちゃんのその意味深な発言に、
「おねえちゃん、誰かそーいう相手が出来たの?」
とあたしは思わず身を乗り出してしまうと、
「まさか」
なびきお姉ちゃんは、即答で否定。あげく、こんなことを言い出した。
「…ほら、招待客が二百五十人ってことは、少なく見積もったとしても、ご祝儀は一人二万で五百万。もちろん芸能人だから、まさか包むのが二万なんてことはないわよね。だとすると、よ?仲良し同士なら、それ以上。親族だったら、すくなくとも二・三十万は…」
…どうやら、食い入るようにに結婚披露宴の中継を見ていたのは、
その執り行われている披露宴の費用と祝儀のバランスを真剣に考えていたようだった。
お姉ちゃんはポケットから電卓を取り出し素早く祝儀の計算をしていた。
「しかもこの披露宴にきているメンツからして、この結婚式、絶対にモト取ってるわよ」
「…そ、そうね」
あたしは、思わず苦笑いをしながら、テーブルの上のおせんべいに手を伸ばす。
なびきお姉ちゃんも一人で納得して頷きながら、おせんべいをパリっとかじり、
「あたしは絶対に玉の輿を狙うわ。ご祝儀なんて不安定だから、いっそのこと会費制にしようかしら?そうね、一律…五万。いや、金持ち相手なら十万か」
「・・・高くない?」
「いいのよ、だって玉の輿よ?友人もみんな金持ちに決まってるわ。」
なびきお姉ちゃんは、さらりとそう言いのけた。
「あたしは・・・別にご祝儀の額とかこだわらないから、、ひっそりと静かに式を挙げたいなあ…。あ、ほら、外国の教会で親族だけ…とか」
あたしは、昔なにかのTVでみかけた海外挙式の映像を頭に思い浮かべながらぼんやりと呟いた。すると、
「へえ。じゃ、それ乱馬君に言っといた方がいいわよ。今のうちから海外へ行く旅費招待客分ためとくようにって。
あかねが海外で式挙げたいっていうなら、あの乱馬君だって節約するだろうし」
なびきお姉ちゃんは、にやっと笑ってそう言った。
あたしはその言葉に、思わず顔を赤らめてしまう。
「な、何であたしが乱馬と…」
あたしが、あうあう…とあからさまに動揺していると、
「あんたねー。許婚でしょうが。それに、いい加減素直になんなさいよ。誰が見たってあんたたち両思いじゃない。あー羨ましい事」
なびきお姉ちゃんは半分呆れながらあたしにそう言い放った。
そして、「あ、始まった」といいながら、なびきお姉ちゃんは視線をまたTVの方に戻した。
CMがあけて、さっきの結婚披露宴の中継がまた流れ出したのだ。
(も、もうおねえちゃんが変な事いうから)
あたしはさっきの会話の名残が響いて、まだまだ顔が赤い。
そして、その赤くなって火照った顔をごまかすために、ちょっと外へと散歩に出ることにした。
時間はまだ夜の八時だし、人通りもあるかな…なんて思って玄関から外へ出た瞬間。
「あれ?あかね、何してんだ?」
ちょうど道場での夜稽古を終えたのか、玄関からの渡り廊下を歩いていた乱馬が、あたしに声をかけてきた。
「乱馬…」
さっきのなびきお姉ちゃんとの会話のせいもあって、あたしのは何だかまともに乱馬の顔が見れない。
「べ、別に…」
そして、そういってそそくさと門から外へと出て行こうとするあたしを見て、
「…こんな時間に、外に行くのか?」
と、乱馬は怪訝そうな顔をしていた。
素早くあたしの元へ駆け寄り、まるで猫でも取り扱うかのように襟首のところを捕まえてくる。
「もー、離してよッ。散歩に行こうとしているだけなんだからー!」
バタバタバタ…と、まるで本当の猫のようにじたばたするあたし。
「散歩、だあ?」
乱馬は、そんなあたしの顔を急に恐い顔でじろっと睨んだ。
「うッ。な、なによ…」
その顔があまりにも怖かったので、あたしは思わずビクッとなってしまった。
「…・俺も行く」
すると。
乱馬はそういって、そのままあたしをずるずると玄関まで連れ戻し、「さ、いくぞ」と靴を履き替えて、あたしとともに改めて門の外を出た。
そして、門を出てちょっと歩いたところで、今度はあたしの手をそっと掴みながら、
「…・ったく。暗くなってから一人で散歩なんか出かけようとすんじゃねーよ」
あたしに背を向けたまま、乱馬はぼそっと呟いた。
・・・何だ。心配してくれてただけなんだ。
ようやくあたしは乱馬の行動の意味が分かって、すこし申し訳なくなってしまった。
「…・ごめん。稽古で疲れてるのに」
あたしが「悪い事しちゃったなあ」と謝ると、
「いーよ、別に。こういう疲れ方なら」
乱馬はそういって、ゴホンと咳払いをしたりしている。
「・・・ばーか」
あたしは、言葉はぶっきらぼうだけども温かい、なんだかそんな乱馬の気持ちが嬉しかった。
なので、あたしも口では裏腹に憎まれ口を叩きながら、ちょっと歩調を速めて乱馬の隣に並んだ。
そして、手だけじゃなくてからだごと乱馬の腕に絡み付いてみる。
「あー、重ッ。おめー太ったんじゃねえの?」
と、口ではあたし以上に憎まれ口を叩く乱馬だけれど、自分の腕に絡み付いているあたしを見る眼は、とても優しい。
あたしは、そんな乱馬に何も言わず、微笑んでみた。
「…さいきん、急に寒くなったよなー」
すると。
乱馬は、腕にくっついているあたしに、自分の身を寄せるようにしてそう呟くと…やっぱりあたしに向って、笑いかけた。
「…そうねえ」
あたしも、そんな乱馬に更に身を寄せるようにして、また微笑んでいた。

…そんなあたし達が散歩をしがてら、いつもはあまり通らない、隣の町内会の方へと進んでいくと。
クリスマスまであと一ヶ月ちょっとということもあってか、暗闇にぼうっと白くライトアップされた小さな教会が、目に入った。
「わー!きれいねね…」
あたしが思わず乱馬の腕から離れて、その教会の入り口へと飛んでいくと。
「…おや?お客様ですか?」
教会の中で夜の礼拝でもしていたのか、結構年配の、優しそうなシスターが出てきた。
そして、教会の入り口でぼうっとライトアップされている建物を見あげているあたしに声をかけてくる。
「あ・・・いえ、その…」
あたしがその答えに困って、シスターの前でオロオロとしていると。
そんなあたしを迎えに、乱馬もゆっくりとあたしとシスターの元へとやってくる。
シスターは、あたしと乱馬が並んだのを見るなり、なぜかにこっと微笑んだ。
「あの…?」
あたしがシスターに話し掛けると、シスターは笑顔のままこう言った。
「今日はお祈りをしにきた…というわけではなさそうですね。もしかして、お若いけれど、教会で式を挙げようと思われているのかしら?」
…そんなシスターの言葉に、
「そ、そんなわたしたちな…!」
「はい」
答えるあたしたちの声が、全く違う回答をしたために、奇妙な不協和音となって辺りに響く。

・・・え!?

乱馬の答えにあたしが驚いて、思わず乱馬のほうを見てしまったが、乱馬のヤツは、涼しげな顔ですまして立っている。
「まあまあ、それはおめでとうございます。だったらどうぞ、お入りなさい。そういう人たちに中でゆっくりしてもらうのは大歓迎です。我らが主も、きっとお喜びなるはずですわ」
シスターは嬉しそうにそういいながら、胸の前で十字を切って、ちょっとお祈りをすると、あたしたちを教会の内部へと誘ってくれた。
そして、
「帰るときは、入り口にあるそのブザーを押してください。鍵を閉めに着ますから」
そういってあたしたちにブザーの位置を教えると、姿を消してしまった。
「…」
あたしたちは、月明かりに照らされた薄暗い教会の中へと、足を踏み入れた。
正面に飾られたステンドグラスと、左右に配置されたオルガン。
通路をはさみ、規則正しく左右対称に並べられた、木製の腰掛け。
そして、入り口から教会の最奥部へとまっすぐに伸びている、広い通路。
…それらが統合された、この夜の教会は、
なんだかちょっと、神秘的。
「・・・夜の教会って、初めて」
あたしは、そんなことをいいながらふらふらと、教会の奥へ奥へと進んでいく。
乱馬もあたしの後をゆっくりと付いてきながら、夜の教会をボーっと見学している。
「…」
あたしは、そのうち適当な位置に腰掛けた。
そして、ボーっと教会を見ている乱馬の顔をじっと見つめる。
乱馬は、あたしが自分の事を見ているのに気が付いたのか、
「なんだよ」
といいながら、あたしのすぐ横に腰掛けた。
だけどあたしは何となく…わざと一人分くらいあけて席を座りなおしてみる。
「…こら。なんで逃げてんだよ」
乱馬は、そんなあたしの洋服の袖をぎゅっとひっぱって、それ以上あたしが離れないように捕まえた。
「何で…・」
あたしは、ちょっ照れながら、思わず乱馬に聞いてしまった。
「あん?」
「だから、何で、あんな返事したの」
…あたしは、さっき乱馬がシスターに返事をしたときのことを思い出していた。
『「今日はお祈りをしにきた…というわけではなさそうですね。もしかして、お若いけれど、教会で式を挙げようと思われているのかしら?」

「そ、そんなわたしたちな…!」
「はい」』

「あー…あれね」
乱馬はそういって、天を仰いだ。
「…」
あたしは、そんな乱馬をドキドキしながら見つめた。
が、乱馬は特に考え込む事もなく、すぐにあたしに答えた。
「だって、あーでもいわなきゃ中に入れそうに無かっただろ?」
「…は?」
その答えに、あたしはちょっとあっけに取られる。
「だからさ。こんな時間だし、あーでもいわなきゃ中に入れてくれなかっただろ?」
「そ、そうだけど…」
「ライトアップされた教会の中も、見てみたかったんだろ?」
「うん…」
あたしは、乱馬のその答えを聞いて、ちょっと…がっかりしてしまった。
・・・まあ、そりゃたしかに。
乱馬があんな事言うなんて、おかしいなって思ってたわよ。
だけど、
ちょっとだけドキドキしてたあたしがなんだか一人、情けなくなっちゃうわ。
なびきお姉ちゃんとなまじ海外教会挙式の話をしていただけに、いつも以上になんだか落ち込んでしまう。

「ふーん」
あたしは、思わずそう呟いて乱馬から目をそらし…改めて、正面を向いて座った。
「なんだよ、その反応は」
乱馬はそんなあたしの様子が気にかかるのか、あたしの事をしきりに見てるみたいだったけど、あたしは何も言わずにただ、教会のステンドグラスに差し込む月明かりを眺めていた。
・・・思う事は、いろいろある。
前に確か乱馬は、「寸胴女は和服が似合う」とか言ってあたしにぶっとばされたことがあった。
もしかしたら乱馬は、和風の結婚式とか和装が好きなのかもしれない。
…でも、
あたしだって女の子だし、やっぱりドレスだって着てみたいな、なんて。
なびきお姉ちゃんにも言ったとおり、ハワイとかどっかの教会でひっそり親族だけで式を挙げたりするってのにも…憧れる。
…だけど。
きっと乱馬はそんなことまで考えてなくて。
あたしがなんで教会にすっごく惹かれてしまってるかとか全然考えてなくて。
それどころか、まあまだ高校生だから仕方ないけど、結婚式とかそういうことには無頓着で。
中に入る手段の一つとして、「結婚予定です」とさらりと嘘を言いのけてしまう…確かにそれが一番手っ取り早いかもしれないけど、
でも、なんだかちょっと…ショックだな。
「…ねえ?かすみお姉ちゃんは、やっぱり教会で式を挙げたりするのが似合う感じよね?」
…あたしは、そんな自分の情けない気持ちをごまかすために、何の関係も無い事柄を乱馬に振ってみた。
「は?…ああ、かすみさんか。そうだなあ。東風先生のタキシードも意外に似合うかもな」
「そうでしょ?きっと東風先生ならきっと似合うわよ!
ねえねえ、じゃあ、次!なびきお姉ちゃんは?」
あたしが次にそう聞くと、
「なびきー?あいつ結婚できんのかー?」
乱馬は「何て恐ろしい事を」とでもいいたげな顔をする。
「せ、世間は意外と広いものよ、乱馬」
あたしが、そんななびきお姉ちゃんをフォローしたようなしないような発言をすると、
「あいつは…うーん、どっちかっていうと和服のイメージだな。日本風の結婚式の方がいいんじゃねえか?」
乱馬はそういって、ケケケ…と笑った。
恐らく乱馬が思い浮かべている「和服」のイメージというのは、結婚式の和装の衣装ではなく、ばくち打ちの人々が着るような、着崩れした粋な着物なんだろう。
あながちその想像が間違ってないような気がして、あたしは思わず苦笑い。
そして、今度はまた気を取り直して乱馬に続けて聞いてみる。
「そうねえ…お姉ちゃんもそうだけど、右京とかあかりさんも、和服の方が似合う気がするわ。小太刀とシャンプーはやっぱウェディングドレスの方が似合いそうだけど」
あたしはそういって、座っていた席を立ち、教会の最奥部へと、進む。
そして、中央にある祭壇の前に立ち…そこにおいてあった聖書を手にとってパラパラ…とめくってみる。

天井からは、柔らかな月の光が差しんでいる。
月明かりの他に照明がないのも手伝って、
天窓からステンドガラスを通して差し込んでいるその月明かりが、その真下に立っているあたしを、まるでスポットライトで照らし出しているように見える。

「…女優になった気分」
あたしが笑顔でそんな冗談を言うと、
「単純なヤツ」
乱馬はそんなあたしを見て、ちょっと笑っていた。
そして、祭壇で聖書をパラパラと見ているあたしのすぐ近くまで歩み寄ってきた。
あたしは聖書を見る手を止め、思わず乱馬のほうを見てしまう。
乱馬は、そんなあたしに向って、
「…・で?」
と、突然口を開いた。
「何?」
あたしがきょとんとしていると、
「だから、あかねは?」
「だからって?」
「だかあかねは自分ではどっちが似合うと思ってるかな?ってさ」
乱馬はそういって、ぼーっと自分を見たまま話を聞いているあたしの髪に、ちょっと触れた。
突然髪に触れられたこともあって、
あたしは思わずビクッと身を竦めてしまう。
「あ、あたしは別に…」
あたしがそんなことを言うと、
「寸胴には和服がよく似合う」
乱馬はそんなことを言って、あたしの頭を優しくなでた。
「・・・悪かったわね」
あたしがふくれっ面でそう答えると、
「でも」
乱馬はそういって、ちょっと背をかがめた。
そして、あたしの耳元に口を近づけ…こう言った。
「でも…あかねが教会でひっそり式を挙げたいって言うのなら…俺それでもいいよ」
「へ!?あ、あんた何言ってん…」
「でも、暑い時期は辞めようぜ。そーゆー海外の教会って、たいてい暑い所にあるんだろ?」
乱馬はそれだけ言って、あたしから離れた。
「あうあうあう…」
あたしは、思わずそんなことを口走りながら、頭の中はパニック状態だ。
・・・何よ。
何で知ってんのよ!
何であたしが海外ででひっそり式を挙げたいって思ってたことがあるって知ってんのよ!
いやそれより、
あんた、何であたしと一緒に式を挙げる事を前提に話を進めてるわけ!?
「・・・」
あたしがそんなことをぐちゃぐちゃと思いながら顔を赤くしていると、
「だーかーら。わかんねえやつだな。シスターにもさっき言っただろうが。あの時ああやって俺達のことちゃんと話さないと、こうやって教会の中には入れなかったんだぞ!照れずにちゃんと答えた俺に感謝しろよな」
乱馬はそういって、真っ赤な顔をしておろおろしているあたしの額を、ピンと指ではじいた。
「痛い」
頭がパニック状態で、でこピンの痛さは半減しているものの、なんだかまだ頭がボーっとしている。

…それは、何?
あたしは、あの時乱馬がああやって答えたのは、「あーでもいわなきゃ中に入れてくれないだろうと思ったから口からでまかせで…」とおもっていたけれど、
乱馬は、「仕方ないからあーやって自分達の事をちゃんと言って分かってもらえないと中に入れてもらえない」と思ってたって事…?
ちょっと。
ちょっと、ちょっと。
な、何いってんのよー!

あたしはそんなことを考えて、更に顔が真っ赤になってしまう。
乱馬はそんなあたしの様子をしばらく見ては、おかしそうに笑っていた。
けれど、そのうち。そんなあたしの腕を、不意に引っ張った。
「…・」
あたしは、その力に吸い込まれるように、すっぽりと乱馬の腕の中に納まってしまった。
「…ま、でもおれどっちでもいーや」
乱馬はそういって、自分の腕の中に収まっているあたしの顔をみて、笑った。
「あかねが教会がいいって言うなら教会で。和装がいいって言うなら、和風で」
「…ばーか」
「馬鹿で結構。それにおれは和装も洋装もたぶんどっちもにあうからな。あかねと違って。ほら、なんせ俺、元がいいし」
「ナルシスト」
「うるせーな」
あたしたちは、月明かりが差し込む教会の中、
抱き合いながらそんな会話を交わしては、お互いの顔を見て…・笑う。
…そうよね。
あたしもさっきまでは「海外の教会で親族だけでひっそりと…」なんて考えてたけど、
あたしも、乱馬が隣にいれば…どっちでもいーや。
相手が乱馬だったらそれでいーや。
「ねえねえ、和装で教会で式挙げるって言うのはやっぱ…ダメなのかな?」
あたしの素っ頓狂な考えに、乱馬はすっごく笑っていた。
「…出入り禁止になりそうだよな」
「そうだね」
結婚式を挙げて出入り禁止になる教会って、ありえるのかしら?…そんなことを思って、あたしもまた笑ってしまった。
…そして。
あたしたちはその場で一度だけ、長いキスをして、教会を出る事にした。

「またいらっしゃい」
ブザーによって呼び出され、あたしたちを笑顔で送り出そうとしているシスターに、
「はい!」
今度は二人揃ってクリアな返事を返す。



教会。
それは主に祈りを捧げ、そして主の慈悲深い心を改めて感じ取る事が出来る、神聖なる場所。
そんな聖なる場所で、
結婚という契約を結ぼうとしている我らに、主が聖なる力を与えてくれようとするならば、
我らもそれに見合うように、神の前で誓うこの愛を、さらなる深い絆で永遠に繋ぎ止めていけるように、こころから誓おう。
そして、主よ。
今夜この教会に訪れた若い二人が、いずれ迎えることになるこの「契約」を結ぶその瞬間から、確実にその愛を永遠に誓っていけるように……温かく見守り給え。

 

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