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→19.恋の行方

あたしは、東風先生が好き。
東風先生はお姉ちゃんが好き。
そしてお姉ちゃんは…?

いつまで、こんな関係が続くんだろうって。
そんなことばかり毎日毎日思っていた。
…結論は、分かりきっていた。
それなのにあたしは、「この恋は一体どうなるの?」…あの頃はいつもいつも、そう考えていた。
叶うはずのないこの恋の行方を、勝手に心配しては一人で胸をいためていた、あたし。


乱馬はあたしの許婚だった。
でも、ひょんな事でなびきお姉ちゃんと喧嘩した時に、「お姉ちゃんにあげる」といったら、
「じゃあもらうわよ」
なびきお姉ちゃんは、あっさりとあたしから乱馬を貰い受けてしまった。
「借りるんじゃないからね、貰うんだからね」
なびきお姉ちゃんは、発言を撤回しないあたしにそう言ってにやりと笑っていた。
ちょっとした姉妹喧嘩のあげく、許婚交代。
ベランダから落ちても受身を取れるようなあたしとは違って、乱馬自身も「姉ちゃんはかよわい」と言ったように、お姉ちゃんは普通の女の人。
…そんなこんなの喧嘩の仲、
あたしを置いて、「許婚」のなびきお姉ちゃんの手を引いてズンズンと歩いていく乱馬の後ろ姿を見ながら、
「この恋はどうなるんだろう」
…あたしはそう思った。
結局最後は、あたしとお姉ちゃんも、あたしと乱馬も仲直りはしたし、そして乱馬はまたあたしの許婚に戻ったのだけれど、
もしもあの時あのまま、なびきお姉ちゃんと乱馬が許婚同士のままだったら。
…そう思うと、何だか胸がすっきりしない。
もしかしたら、あたしは高校卒業と同時に家を出ていたかもしれない。
あの時不安に感じた恋の行方を思い出しながら、あたしはそんな事を考えた。


あれから、少しだけ時間がたった。
…色んな事があった。
怒ったり、泣いたり、笑ったり、悔しがったり。
追いかけたり、追っかけられたり。
あまつさえ、命を落としかけたこともあった。
そうやって色んな事があって、色々こじれて…でもようやくあたしたちは、お互いの気持ちを素直に表せるようになってきた。
…今のあたしは、乱馬が好き。
話題の映画を見に行って、そのデート先の映画館の中、映画を見ながらも、
暗がりの座席の、膝の上に置かれたコートのその下で、しっかりとお互い繋いだその手の温もりを感じながらあたしはそんな事を思った。
今まであたしがしてきた恋のように、誰かが誰かを好き。だけどその相手は…そんな一方通行の恋じゃなくて、
お互いがお互いを好き。
そう感じる事が出来る恋は。
そうやて、お互いの想いを感じあう事ができるこの恋の行方はどうなるんだろう?
あたしは、そんな事を考えた。
…でも、不思議。
今までの恋とは違って、この恋の行方を予想するあたしは、不思議と心が弾んでいた。
今まで見たいに、ちょっと苦しくなったり胸が痛くなったりはしなくて、先が見えないこの恋の行方を、明るい方向に想像するようになっていた。

「あれ?あの外人、さっきのシーンで死ななかったっけ?」
「おかしいな。王の帰還って事は、王は初めはそこにいなかったのか?」
…映画の最中、そんな事をぼやきながら必死に映画を見ている乱馬の横顔を見つめながら、あたしは自然と微笑んでいた。
ホントは映画なんて興味ないくせに。
でも、あたしが「見たい」っていったから来てくれて。
そんでもって必死に映画を見ようとスクリーンと格闘している、乱馬。

やっと、出会えた人。
そしてやっと手に入れた幸せな「恋」。
今度は、その恋の行方を想像するのもとても楽しくなりそうだ。

「…やっぱ、乱馬にはシリーズものを途中から見せるのはだめね。結局映画、最後まで基本設定すら理解できてなかったんじゃないの?」
「じゃあさ、ビデオ借りてきて見ようぜッ。なびきならビデオデッキ持ってんだろ?」
「いいけど。お姉ちゃん、DVDなら持ってたよ、確か。でも、お姉ちゃんの部屋で見せてくれるかしら?」
「何言ってんだよ。それを借りて、お前の部屋で見るに決まってんだろー?」
「…あんた、何でそんなに嬉しそうなの?言っとくけど、この映画のシリーズ以外のDVDは借りない わよ」
「安心しろ、すでに手は打ってある」


映画館からの帰り道、レンタルビデオ屋さんに向って手を繋いで歩きながら。
妙に嬉しそうな乱馬に若干呆れつつも、あたしはこっそりとそんな事を思った。



繋がれた手を、じっと見る。
The future is in of this sort.

…未来は、この手の中に。
この繋がれた手の温もりが、あたし達のこれからの恋の行方を物語る。
きっと、今までとは違った明るい行く末を歩いていけるような気がする。
でも、予定は未定。
いけるような気がする、じゃダメなんだ。
「歩いていく」。
これからは、そう言いいきろう。
明るい恋の行方を祈るのなら、そう言いいきろう。
あたしは、繋がれた手の温もりを感じながら強くそう思った。

 

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