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→93.俺に勝てるかな?

「もーッいつもいつも!ちゃんとあたしと勝負しなさいよッ」


せっかく久しぶりに道場で手合わせしようとしても、
「あかねじゃ勝負にならない」とか、
「修行しなおせ」とか。
なんだかんだ言っては、何時もあたしに本気で向かってこない乱馬。
「悔しいー!」
そう言いながら乱馬に攻撃を仕掛けても、
「だーかーら。あかねじゃ俺を捕まえられないって」
乱馬は馬鹿にしたような笑顔であたしの攻撃をヒラリ、ひらりと交わす。
悔しい。
超悔しい。
なんとかして、乱馬をやりこめてやれないかしら。
あたしは道場でかいた汗を流しながらそんなことを考えていた。
…そうか。不意打ち食らわして、ちょっと怒らせてやれば乱馬だって本気であたしに立ち向かってくるかも?
そうよそうよ。
乱馬ってば単純だし、子供っぽいところあるし、
ちょっと怒らせてやれば、すぐに立ち向かってくるはずよッ。
「よーし。絶対に乱馬を本気にならせてやるッ」
あたしは風呂場の中で一人意気揚揚と叫んだ。
…そして。
「…」
あたしは、忍者宜しく、夕食後も一人で道場で稽古している乱馬の背後へと忍び寄った。
「ふう…」
…見ると、ちょうど乱馬は一休みしているところで、
その背中はかなり隙だらけに見えた。
(いまだ!)
あたしはそんな乱馬のすぐ背後へとササササッと動き、
「勝負!!」
勢い良くその背中へ向って拳を突き出した!

…ハズなのに。

「だーから。懲りねえなあ、おめえも」
乱馬は、そんなあたしの突き出した拳をさっとよけた。
「あわわわッ」
もちろん、いきなり標的をなくしたあたしは、前のめりに身体のバランスを崩してしまったのだけれど、
「ホレ、捕獲」
乱馬はそんなあたしの身体をいとも簡単に腕で支えると、
まんまと自分の手元へと納めてしまった。
「あ!」
あたしがその腕の中から逃れようとジタバタとしていると、
「なあ、そんなに俺と勝負したいのか?」
乱馬はおかしそうに笑いながらジタバタしているあたしにそう尋ねた。
あたしは、コクンと頷いて、
「勝負って言っても、本気でよッ。あたしと本気で勝負してよねッ」
必死の形相で叫んだ。
…すると。
「いいよ」
何故か乱馬は、夕方の時とは打って変わってあっさりと、あたしの言う事に承諾してきた。
そして、
「あかねがそんなに言うなら…俺も本気でしょうぶする」
「ホント!?」
「ホント。でもそのかわり」
「?」
「勝負に負けても、文句は言わないこと。いいよな?」
乱馬は、そんな条件を提案してきた。
「当たり前よッ。おんなににごんはないわッ」
勝負をしてくれるなら、もちろんそのくらいの条件は飲むわよ…と、あたしがそういって、乱馬から離れて、
「胴着に着替えてくるッ」
と、道場から出て行こうとしたちょうどその時だった。
「じゃ、…」
乱馬は、その離れようとしたあたしの手をぎゅっとひきよせると、
「ッ…」
…いきなりあたしにキスをした。
「ちょッ…こら!勝負はどうした、勝負はッ」
あたしがそんな乱馬に驚いて、じたばた暴れるけれど、
乱馬は一度掴んだその手を離すどころかさらに力を入れる。
そして。
じたばたと暴れるあたしの手首をがっしりと掴んだまま、
いとも簡単にあたしの身体を道場の床へと押さえつけてしまった。
「ちょッ…いきなり寝技!?」
「違うって」
そう言って笑う乱馬を蹴っ飛ばしてやろうと足もばたばたさせてみたけれど、
…どうやらそれは更に逆効果のようだった。
当然のことながら、乱馬は自分のヒザを使ってあたしの動きを封じ込めてしまった。
「勝負はどうしたーッ」
押し倒されながらそう叫ぶあたしに、
「勝負じゃん、立派な」
乱馬はそう言って、自分の下でわめくあたしににっと笑いかけた。
「あかね」
「何よッ」
「俺に勝てるかな?」
「ちょ、ちょっとー!!あんた、何の勝負だと思ってんのよー!!」
しまった。また乱馬に騙された!…そう今ごろあたしが気がついても後の祭り。
今すぐ離せとばかりにあたしが暴れても、
「勝負に負けても文句は言わないんだろ???あかねがそんなにいうなら、俺も本気で頑張るよ」
乱馬は嬉しそうにそういってはあたしに抱きついている。
「やッ…ちょっと離れなさいってば!何を頑張るつもりだーッ」
「俺が勝負に負けたら、お前の好きにしていいよ。いやあ、それは困ったなあ」
ヒトの話を全く聞かず、そういって嬉しそうな顔をする乱馬に、
「ど、どこが困ってんのよ、その顔はーッ」
あたしは策士な乱馬に押さえ込まれたまま、ジタバタと暴れるだけだった。


「道着に着替えてくるからッ勝負はその後にッ…」
「いいよ、このままで。だって、どーせ裸になるんだぞ?それとも着たまま・・・」
「な、何言ってんのーッばかばかばかッ…離せー!」


教訓。
乱馬と勝負をするときは、まず初めに「何の勝負か」はっきり伝えないとダメらしい。

 

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