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→88.はい、終わり

「なーッ。たまにはそうやって食べてもいいだろッ」

…そんな乱馬のワガママを受けて、あたしはしぶしぶと「ポッキー」を口にくわえて乱馬に差し出していた。
「もー。何でこんな手の込んだ事して食べたがるわけ?普通に食べた方が手間かかんないし美味しく食べれるじゃない」
あたしがぶつぶつと文句を言うと、
「いいだろ、一回くらいは。TVでみてたらなんか試したくなったんだよ」
乱馬はそんなあたしをなだめるようにそう言うと、「それじゃさっそく…」と、あたしが加えている反対側から、パクっだとポッキーを咥えた。

夕食後にたまたま居間で見ていたお菓子のCM。
『大好きな人と食べたい!』そんなキャッチフレーズで、カップルが仲良くポッキーを反対側から食べてたCMだった。
それを見た乱馬が、こうしてほぼ恒例のように寝る直前にあたしの部屋へときて、
「試したい!」と駄々をこねたわけだ。
「ポッキーなんてあるの?」
あたしが素朴な疑問を乱馬にぶつけると、
「ある!」
乱馬は意気揚揚と、ポッキーの箱をあたしに差し出した。
…どうやら、わざわざコンビにまで行って買って来たらしい。
「…あんた、そうまでして試したいわけ?」
あたしが少し呆れながら乱馬に言うと、
「うん」
乱馬は子供のような表情で明るくそう言いきった。
「…もー。しょうがないなあ」
…こうして。
あたしはしぶしぶと乱馬のわがままを聞く羽目になったんだけど…
そんなあたしの心内とは裏腹に、ニコニコしながら反対側からポッキーを食べてく乱馬。
その顔があんまりにも嬉しそうなので、何だかあたしも思わずそんな乱馬のワガママを許してしまう。
でも。
「はい、終わり」
ポッキーも大分短くなり、あたしと乱馬の距離があと数センチくらいに近づいたところであたしがそう言って乱馬を手で制すると、
「何で!?」
…乱馬が妙に悲しそうな表情をした。
「何でって…あんたこそ何でそんな悲しそうな顔すんのよ」
あたしが怪訝な表情をすると、
「これからが醍醐味じゃねえかッ」
乱馬が更に駄々をこねた。
「何よ、醍醐味って。さっきのCMもこうやって食べてるだけだったじゃない」
あたしがそう言うと、
「それじゃダメなの。最後までちゃんと食べさせてくれよ」
乱馬はそう言って、ぱくッぱくッ…とあたしの意志とは裏腹に更にポッキーを食べ進めていく。
そして、
「あッ」
あっという間にあたしの唇の直前まで食べ進んで、そして、そのままチュッ…とキスをしてしまった。
もちろん、あたしが口に咥えていたポッキーを素早く自分の口に吸い寄せる事も忘れはしないで、だが。
「ごちそうさま」
…しばらくして。
乱馬が唇に触れるか触れないかの距離まで顔を離し、あたしにそう言った。
「…目的は、コレか」
あたしが、頬を赤らめながらそうボソッと呟くと、
「あかね、まだまだ袋にはいっぱい残ってるからな」
乱馬が嬉しそうな顔でそう言って、開いたばかりのポッキーの袋をゆらゆらと揺らして見せた。
「…寝る前に甘いものを食べ過ぎると太って仕方ないんですけど?」
あたしがため息をつきながらそう呟くと、
「じゃあ、俺たち世界一の肥満カップルになっちまうかな」
乱馬が暢気にそんなことを言いながら、次のポッキーを口にくわえ、ニヤッと笑った。
「…責任,とってよね」
あたしはため息をつきながらも、再び反対側の部分をパクッと咥える。
「俺以外に、誰が責任取んだよ」
乱馬は嬉しそうな口調でそう言うと、また反対側からばくッぱくっとポッキーを食べ始めた。
若くして、糖分取りすぎ。
もはや、恋愛糖尿病?
いやッそんなのやだーッ…いやなんだけど、あたしもやっぱりやめられない。
・・・
明日から、ロードワークの距離を少し長くしよう。
うん、そうしよう。
そしたら、乱馬とこうやって食べる甘いお菓子の量が、もっと増えても平気よね?


…何だかんだ言いつつ、やっぱりあたしも乱馬と一緒の思考のようだ。
あたしは、そんなことを思いながら乱馬と一緒に「ポッキー」を食べ続けたのだった。

 

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