「お前って、ホントに素直じゃねえな」
・・・最近よく、あいつに言われる言葉。
ばーか、そんなのあんただって一緒じゃない。
それじゃああんただって、面と向って「好き」っていえる?あたしに対して。
それと一緒よ。あたしだって中々言えないわよ。照れてしまって。
でも、どうにかして、伝えられる方法があればって、いつも思ってはいるのよ?
…そんなことを、最近あたしはよく考える。
どうすれば、アイツに照れずにちゃんとその気持ちを伝えられるんだろうって…。
そんなある日、突然舞い込んできた事件。
アイツは詳しいことを話してくれないけど、
何でも呪泉郷から変な奴らがやってきているらしい。
何度か電話で話したことのある、呪泉郷のガイドさんの娘さんもやってきたりして、
なんだかあたしの周りはすごく騒々しい。
そんな中、シャンプーが敵の手中に落ちて、洗脳されてしまった。
しかも、呪泉郷の地図を持って、連れ去られてしまった。
アイツも含め、ムースやおじさま、あとは友達思いの良牙君で一路中国を目指すことに。
…でも、あたしには何だか嫌な予感がして、結局あいつを送り出すも、ろくに話もしないかった。
大丈夫なのかな…
どうしてだろう。今回の旅立ちには、すごく嫌な予感がしていた。
心配で心配でたまらなかった。
でも、素直じゃないあたしは結局…どうすることも出来なかった。
そんなあたしの心配をよそに。
アイツからは、中国に行ったきり全然連絡がない。
(何よ、電話くらいくれたっていいじゃない…)
出掛けのいやな胸騒ぎも手伝って、あたしの胸には常に大きな不安がある。
だけど…
ある日、あたしの元に、不気味なカラスの大群がやってきた。
あっという間にあたしは中国・呪泉郷へ連れ去られてしまった。
呪泉郷であたしを待っていたのは、アイツが中国に行く前に日本で戦っていた、羽が生えた変わった女。
アイツが、あたしの写真を落としたから、あたしがアイツの弱みなんだろうって、そんなことを言い出した。
…アイツが、あたしの写真を?
あたしの写真をもってたの?
…
…
…冗談じゃないわ。
こんなところで捕まってたまるもんですか。
あたしが捕まったら、アイツに迷惑がかかってしまう。
「あたしは無関係よ!」
あたしはそう叫ぶが早いか、呪泉郷の中を逃げ出した。
ぜったい逃げのびなきゃ!そう思って、必死で逃げた。
でも。
あたしは必死で逃げ回ったけれど…やがて、罠にかかって呪泉の泉に落ちてしまった。
…気がついたら、見知らぬ洞窟。
いつの間にか服も着替えさせられ、あたしは牢獄の中に居た。
「こら!おとなしくせんか!」
鳳凰山の門番はあたしをどうにかしておとなしくさせようとするけど、
あたしはその門番の目を盗んで、牢を脱獄してやった。
必死で洞窟の中を逃げていたら…
「あかねー!」
聞き覚えが有る声が頭上からした。
・・・アイツだ!
あたしは必死で手を伸ばし、アイツの手を掴んだけれど、
運悪く岩壁にぶつかって、再び離れ離れになってしまった。
呆然としているあたしは、偶然そこで呪泉郷のガイドさんに出会った。
この洞窟の中のことに詳しいガイドさんは、やつらが何をしようとしているのか、どうしてこんな事になったか…なんかをあたしに話してくれた。
なんでも、「鳳凰山」という場所の住人達が、呪泉郷の水を全てお湯に替えて、何かしようとしているもたい。
このままだと、呪泉郷の水は全てお湯に変えられ、枯れてしまい…アイツ達が完全な体に戻る手段もなくなってしまうみたい。
あたし達が黙ってその様子を見ていると、さっきあたしと離れ離れになったあいつらが、そこに飛び込んできた。
だけど…
繭みたいなもので体を包み始めた鳳凰山の王が、アイツの体を、その繭からでる糸のようなもので捕らえてしまった。
なんでも、お湯に触れることでその繭は力を増すらしい。
どうやら、アイツをその繭の養分にしようとしているみたいだ。
側にいたムースや良牙君が何とかして必死でその繭をはずそうとするけど…どうにもならない。
このままだと、ほんとに、アイツは繭の養分になってしまう…。
「お湯…お湯を止めなくちゃ!」
次の瞬間。あたしは無意識で走り出していた。
アイツは、いつだってあたしに弱いところを見せようとしなかった。今回だって、あたしには詳しい事を何にも言わないまま中国へ旅立つし。
「お前は足手まといだ!」とか「さっさと帰れ」とかいつもいつもそんなことばっかリ言ってあたしの助けなんて借りようともしない。
…確かに、あたしは無力よ。アイツに比べて力も無いし、喧嘩も弱いし、役立たずだけど。
でも。
でも、そんなあたしにだって、お湯を止めるために蛇口をひねる事ぐらい出来るわよ!
あたしは、呪泉郷のガイドさんが止めるのも聞かずに走り出し、お湯の蛇口に刺さっている「金蛇環」という武器を触ると、思いっきりひねった。
「邪魔はさせぬ!」
繭の主・鳳凰山の皇子が、あたしに向かった繭の糸を向ける。
あたしはそれを上手く避けて、なんとか凌いだ。
…と。
その瞬間、お湯が止まった!
ぶちぶちぶち…と糸がちぎれる音がして、あいつの体が繭から離れる。
その瞬間、良牙君が床をぶち抜いてお湯の量が減り…繭の力が弱まった。
…ああ、よかった…あたしもちょっとはあいつの役に立てたかしら…
あたしがちょっと安心してそんなことを考えていると、
「あかね!お前無事で…」
アイツが、何か叫んだのが聞こえた。
「え?」
あたしは、金蛇環を掴んで、「何?」とアイツの方をみた、丁度その瞬間だった。
…
バチバチバチ!!
ものすごい閃光と衝撃が、あたしの体を襲う。
(え…?)
一瞬の、出来事だった。
「あかね!」
アイツの声が聞こえた。
…意識が朦朧とする。
体に受けた、この衝撃。
何が起ったのか、あたしにはよく分からない。
でも、コレだけはいえる。
あたしの体に、何か大変な事が起こったんだ。
だって、
だって、
あたしの目の前で…アイツが泣いている。
「・・・」
…あんた、何泣いてんのよ。
男の子でしょうが。
今まで何があったって、泣いたことなんか無かったくせに。
何泣いてんのよ。
そんな顔されたら、あたしだって泣きたくなるじゃないの。
…
あたし、素直じゃないし、不器用だし、力も弱いし、いいトコなんて無いかもしれないけど、
やっと、あんたの為に出来る事を見つけられて、それを実行しただけでしょ。
それなのに、そんな顔されたら…あたしの方が悲しくなるじゃない。
…
いつも、一生懸命あたしのことを守ろうとしてくれていたから、
今度はあたしが、助けてあげたいって…そう思っただけじゃない。。
それだけのことでしょ…
体中の水分が蒸発して、人形のようになってしまったあたしの前で泣いているアイツ。
水分が蒸発しているから、あたしは涙を流すことも出来ない。
…あたしはもしかしたら、このまま死んでしまうかもしれない。
物言わぬ人形になったまま、命を落とすかもしれない。
でも、あたしの命と引き換えでも構わないから、
あんたがあの鳳凰山の皇子と戦う時は、助けてあげるわ。
好きよ、乱馬。
もう、この言葉は言えないかも知れないから。
でも、この言葉を言うのと同じくらいの勇気で、同じくらいの力で、あたしはあんたを助けてあげる。
絶対に勝って、無事に日本に帰って欲しいって。
心からそう思ってるの。
だから…