![]()
![]()
ムース「ん……?」
(ムース、眼鏡をかけてなびきの顔を覗き込むが)
ムース「カ、カネゴン……」
なびき「…。」
(笑顔のなびきにファイルの角で頭を殴られる)
ムース「な、なにするだッ。…って、お主は確か天道あかねの…」
なびき「優しいお姉さんのなびきよ。それより何か悩んでるみたいね。相談に乗りましょ。ここは無料で迷える小
羊が集う場所なのよ。」
(なびき、ムースに席を勧める)
ムース「なんとありがたい事じゃ。」
(ムース、感謝しながらイスに座る。)
以下、なびき→な・ムース→ムと表記します。
な「で?何を悩んでるの?」
ム「シャンプーは、なぜあんなにおらに冷たいんじゃ…。おらはこんなにシャンプーを想っておるのに。」
(肩を落すムース。)
な「愛し方が足りないんじゃないの?」
ム「なッ…そんなことはねーだッ。おらは乱馬の何倍も何十倍もシャンプーの事を…ッ」
(ムース、涙ながらに苦労話を話すが、なびき、全く聞いていない。)
な「愛し方が足りないんじゃなかったら、きっと…そうね、願掛けが足りないのよ。」
(なびき、話の途中のムースをせき止めて、とある置物をドン、と机の上に置く。)
ム「なんじゃ、それは?」
な「これはね、恋愛に不憫なムースの為に私が用意した、日本流の願掛け箱ね。
ほら、神社にお賽銭箱ってあるでしょう?あれと一緒で、願をかけてお賽銭を入れると恋愛が成就するのよ。」
ム「なんと!それはありがたい。
ありがたいが…どうもおらの目には、豚の形をした貯金箱にみえるのじゃが…」
な「全くもって、気のせいよ。」
ム「気のせいかッ。それじゃあ、さっそく…」
(ムース、嬉々としてお賽銭の小銭を穴から押し込もうとするが、)
ム「おい、天道なびき。」
な「なあに?」
ム「このお賽銭箱、この入り口の厚さ…小銭が全く入らないのじゃが…」
な「え?あら、本当だ。じゃあ、入る薄さのものを入れたほうが神様も喜ぶってもんじゃない?」
(なびき、そう言って笑顔で微笑む。)
ム「入るもの…。」
(ムース、財布から千円札を取り出して入り口から押し込む。そして、)
ム「シャンプーがおらの事を好きになりますように…おらに振り向いてくれますように…ちょっと優しくなりますよう
に…」
な「ムース?一つ言い忘れてたんだけど。」
ム「なんじゃ?」
な「この神社の神様ね、一回のお賽銭に一つのお願いごとしか対応してくれないんですってよ。
つまり、お賽銭一回に願い事は一つなの。だからー、三つ願う場合は?」
ム「三回お賽銭を入れろというのじゃな?何ともワガママな神様じゃのう。」
(ムース、ため息をつきながら、千円札をさらに一枚いれて願掛けをする。なびき、その様子を笑顔で見守りつつ)
な「ムース?もう一つ言い忘れてたんだけど。」
ム「今度はなんじゃ。」
な「この神社の神様ね、お賽銭に描かれた人物が同じ人ばっかりだと、飽きてしまって願い事
を叶えてあげるやる気を無くすんですって。」
ム「何!?何ともワガママな神様じゃのう。」
(ムース、そう言って五千円札を一枚入れる。)
な「きっと、これで神様も大喜び。お札…じゃないけど、あんたにこれをあげるわ。」
(なびき、涙をそっと影で拭きながら、ムースに一枚の封筒を差し出す)
ム「なんじゃ?これは。」
な「この封筒を黙ってシャンプーに渡しなさい。キッと大喜びであんたに抱きついてくるはずよ。」
ム「なんと!本当か!?本当にこれを渡すだけでシャンプーがッ…」
な「ええ。ま、それからあとはあんたの腕次第ね。恋愛の神様もそう言ってるわ。」
ム「ありがたいことじゃッ!!さっそくシャンプーにこれを渡してみよう!」
(ムース、お賽銭を入れた豚の貯金箱に手を合わせて頭を下げ、部屋から飛び出していく))
![]()
…あーあ、行っちゃった。(鼻歌交じりで貯金箱を割り、)
あらあら。こんなにお賽銭をくれたら神様だって大サービスね。
え?渡した封筒の中には何が入っていたのか…ですって?
あの中にはね、男の乱馬君が誰かを見てすっごくいい顔で笑ってる時の写真よ。
誰を見ていたかは、もちろんご想像どおり。
でも、言わなきゃわかんないわよ、こんなこと。とにかく、そんな写真を何も知らずに渡されたシャンプーなら喜んでム
ースにでも抱きついちゃいそうな勢いだわ。
ムースにとっては、タナボタって奴かしらね〜。ちょっとの間だけいい夢みれて、幸せになっときなさいよ。
「カネゴン」だなんて呟かなければ、もうちょっと長い間いい夢をみさせてあげたのにねえ。ご愁傷様。
|
||||||||||||||||||||||||||