【らんま1/2の二次創作小説サイト】| INFORMATION | NOVELS |BOOKMARKS |CONTACTS | HOME |web拍手

3daysD

翌朝、ついにリミットの三日目を迎えた。
「さ、乱馬、今日は私の買い物に付き合うよろしぞ!」
昨日に取り決めたように、今日は街へと買い物に行く事になっていた。プラムお手製の朝食もそこそこ、乱馬達はガイドの運転する車に乗り込み街へと向かっているのだが、その車中、乱馬の隣に座り彼の腕にべったりとくっついてご機嫌なシャンプーとは違い、乱馬も、そしてあかねも、静かに道中をやり過ごしていた。
別に、具合が悪いわけではない、ただ単に、寝不足なのである。
…昨日の風呂場の出来事以降、特に二人は会話を交わすこともなかった。偶然目があっただけで、妙にお互い意識し顔も逸らす始末だ。せっかく、二人が一歩前に出る為のきっかけを掴めたというのに、これでは正直、昨夜の出来事がある前よりも状態が悪い。元々、恋愛に免疫のない奥手な二人だ。すぐに昨夜の事を忘れ気持ちを切り替えろという方が、無理というものなのだが。
「あかねさん、大丈夫ですか?具合でも悪いんですか?」
「う、ううん、平気…」
そんな中、あかねを気遣った良牙が、心配そうに声をかけてきた。
「買い物するのに、車から降りる事出来ますか?なんなら僕が一 緒に車に残って…」
「大丈夫よ、良牙君。心配 してくれてありがとう」
理由は話せない以上、他の者に心配をかけるわけにはいかない。あかねが良牙に笑顔を見せると、
「あかね、無理して車から降りる事ないね。安心して、車で休んでいるよろしぞ?」
すかさずシャンプーがそんな事をあかねに囁いた。無論、シャンプーにしてみれば、あかねは邪魔な存在だ。
「明日の出発に向けて、身体に無理はよくないね」
口では優しい言葉をあれこれと掛けてくるが、面白い程気持ちが入っていないのがよく分かる。
大体、こうしてあかねに語りかけてくるこの瞬間だって、乱馬が寝不足でぐったりしていることを良い事に、「ね?そうあるな、乱馬」と、いつものように抵抗しない彼に頭を持たれかけるようにして、いるのだ。
「…別に、平気よ」
  流石にそれにはあかねもカチンと来ているのだが、
「無理は良くないね。お土産が欲しいなら、私と乱馬が買って来てあげるあるぞ」
「だから、大丈夫だってば」
シャンプーとて、このチャンスと状況をすぐに手放すほどお人よしではないのだ。あかねは、そんなシャンプーの様子に心の中でため息をついた。
あかね達と同様に、シャンプーもこの三日間に「思い出づくり」の期待をしていたのだ。今日の様子を踏まえると、この様子では買い物の間に乱馬とゆっくり話をするなんて出来そうもない…と、そんな予感が頭を過ぎるあかねであった。
…そんな車内の複雑な人間模様をよそに、車は順調に道を進んでいた。
車は、ガイドの家のある山奥から、まず舗装されていない土の道を降りていった。両側に草木がうっそうと生い茂り、そして時折道の真ん中に大きな岩が転がる山道を下りきると、急に辺りが開け、きちんとコンクリートで舗装されている道が姿を現した。ただし最初はその道の両側も、建物が全く建てられていない更地が、続いている状態だった。
車は、その道を少し走り左に一度曲がった。そしてそこからまっすぐ車を走らせていくと、いつのまにか道の両側にあった更地にも、ぽつん、ぽつん、と建物が現れるようになり、初めは一軒二軒とまばらだった建物も、十五分ほど道を走らせた後には、所狭しと道の両側にそれらが立てられている程、様子が様変わりした。
その頃には、建物だけではなく道の所々に、自転車。 そして道を歩く人々の姿も、見えるようになった。
日本ではあまり見慣れない、独特の民族衣装。あかね達と同じ様な格好をしている若者達。日本でいうと、七十年代から八十年代に一斉を風廃した古い形の バイク「カプ」。そのカブが、何台も車と車の聞をすり抜けていくよう走っていくのが見えた。
山間部では設置されていなかった「信号」も、ごく当たり前のように見られるようになった。一車線だった道もいつしか二車線になり、順調に進んでいた車も、時折渋滞に巻き込まれるようにもなった。建物の種類も、民家や商店から、やがて高層ビルやデパートの様な大きな建物へと種類を変えていった。
窓を閉じていても、車のクラクションや街の喧騒が、車内にも充分と聞こえるようになった。 その喧騒で、車内でぐったりと目を閉じていた乱馬も、そしていつの間にか眠ってしまっていたあかねも。ようやく目を覚ました。
時にスムーズに、時に緩やかに。いつしか車は、買い物が出来る繁華街へと到着した。
「今、昼の十一時ね。私とプラム、食材の買出しに行く。お客さんたちは、繁華街で好きに買い物するよろしぞ。そだな…二時間位あれば、買い物も出来るかな?」
繁華街の入り口にある駐車場に車を停め、早めの昼食を皆でとると、店を出る前に一人一人に繁華街の地図を渡しながら、ガイドが言った。
「二時間…充分ね」
シャンプーが、乱馬の腕を掴まえながらそう答えると、
「地図を見れば分かるが、繁華街は大きな広い道の両側にお周が並んでいるあるよ」
「へー…」
「所々に細い路地があるけれど、その路地も皆裏側では繋がっているね。もしも道に迷ったら、とりあえずは広くて大きい道に出ればよいね」
分かったか、お客さん。ガイドは、特に良牙に向かってそう話す。
「ふっ…こんな単純な道、俺だって迷うわけが…」
「…あるから、心配しているね。お客さん、出来るだけ誰かと一 緒に行動するよろしぞ?」
ガイドはもう一度良牙にそう念を押すと、
「集合場所は、先程の駐車場の車の前ね。皆さん、わかたか?」
「ああ」
「それでは、皆さん、また二時間後に。プラム、行くあるよ」
ガイドはプラムを連れて、さっさと食材の買出しへと行ってしまった。
…ガイド達が買い物に出かけたので、その場にはそれ以外の五人が残った。
「乱馬は、何を買いたいあるか?私が選んであげるあるぞ」
「え、い、いいよ別に…」
「遠慮は要らないね!」
早速シャンプーが、そんなことを言いながら乱馬の腕にしなだれかかる。
あかねは、そんな二人の姿を横目で見ながらため息をつきつつ、
「ここは…?」
ガイドに渡された地図をテーブルに広げ、ある部分を指差した。 そこには、繁華街とされている大きな道の端、出入り口に立てられている赤い門から少し離れた場所にある区画だった。
広い道には、所狭しと店の名前が描かれている。食べ物 ・雑貨 ・衣服…取り扱う品物によって、親切に「赤」「青」「黄色」と店舗の色分けされているので便利で良いのだが、広い道の先にも、その道と垂直になるように真っ直ぐに引かれた、青い線があった。それは海なのだろうとはあかねにも予想は出来るのだが、あかねが指差した一角だけは、それらとはまた違って、その地図の中で他にはない色・「緑」色が塗りこまれている。
あかねが首をかしげていると、
「そこは店ではない。公園じゃ」
その地図を横から覗き見たムースが、あかねにそう教えてくれた。
「公園?」
「そうじゃ。この繁華街は、海へと繋がっているようじゃから、凡そそこは、その海を望める公園にでもなっているのだろう」
「へー…」
海が見える公園。あかねがその説明を受けて興味深そうな表情をすると、
「何ならあかね、ムースとその公園に行くと良いね!晴れた日に、異国の地の海の見える公園で、ムースとデート。あいやー、なんともロマンチックか」
すかさずシャンプーが、そんな事を言い出した。
「な、なんで私がム!スと…」
「そうじゃ、シャンプー。どうせだったらおらとシャンプーでそこに行くだ」
あかねとムースが慌てて反発するも、
「私は乱馬と買い物しなくてはいけないある。それに、行くなら乱馬と行くね」
シャンプーは頑として、譲らない。あげく、
「それより、早く買い物に出ないと時間がなくなってしまう」
と言って、乱馬を引きずり店から出て行った。先手必勝、力技で強行策発動である。
「シャンプー、待つだ!」
そんなシャンプー達を追い、ムースも店の外へ飛び出して行く。
「あかねさん、あかねさんはどうしますか?」
そんな一連の様子を見ていた良牙が、これ幸いとあかねにすり寄った。そして、
「よ、よ…」
よかったら、俺と一緒にその公園に行きませんか?…良牙はあかねを誘おうとしたのだが、
「良牙君は、あかりちゃんへのお土産、選びたいでしょう?あ、そうだ!おじ様一緒に行ってあげてください」
勿論あかねが、そんな良牙の気持ちを察する事が出来るわけもなく、
「『別にいいけど』」
「良牙君が迷子にならないように、お願いしますね」
悪意ない優しさは、時として残酷な刃となる。あかねは笑顔で良牙を玄馬に託し、席を立った。
「あ、あかねさんは?」
良牙はそんなあかねを追って自分も席を立とうとするも、
「あたしは、地図もあるし、お土産を探しながら、散歩してみる。じゃあね良牙君。また後で」
あかねは良牙に笑顔で手を振ると、そう言って早々に店から出て行ってしまった。
「あ、あかねさん!」
良牙は、慌ててあかねを追うべく店の出入口へと向かった…はずであったが、
「あ、あれ?」
「『良牙君、そっちは厨房だよ』」
…やはりガイドの予想通り、道はおろか満足に店の外へも出る事は出来ず、
「『さ、わしらもそろそろ行こうか』」
「…はい」
結局は泣く泣く、玄馬と共に繁華街へと向かったのだった。

 

「わっ…すごい!」

…あかねが地図を片手に繁華街入口の赤門の下に立つと、思わずそんな台調が口から出てしまうような光景が、あかねの目に飛び込んできた。
数十メートルほど道幅のある繁華街のメインストリートは、両脇に並んでいる店の入口が全く見えないくらい、人で埋め尽くされていた。
通りに入れば、その密集度の高さ故簡早に立ち止まる事すら許されない。そんな気すらする。それに加えて、店舗と歩道の間にさえも、出店の様なものも聞かれていた。
ブワッ…と道の中央まで流れ込んでくる白い湯気が立つ出店では、甘栗が売られていた。ふわり、と鼻孔擽る甘ったるい香りにつられそちらに目をやると、ココナッツミルクが混ぜられた何やら見た事もない飲み物が、出店のカウンターに幾つも並べられていた。その店の横では、飲み物とセットで何かの焼き菓子…チュロスと外見がよく似ている菓子が売られていた。
その店には、あかねと同じ年頃の若者達が群がっていた。どうやらその出店、この繁華街でも人気の店舗なのかも知れない。
そのはす向かい側では、この近くの海で獲れた員殻に絵を描いたのか、貝殻細工の出周が出品されていた。立てかけられた板には、鈴がついた貝殻細工。地面に寝かせるように置かれた板には、イヤリングや指輪、プレスレツトやアンクレツトなどが並べられていた。
そこには、年配の女性が群がっていた。貝殻細工は、若者より年配女性に人気があるようだ。
繁華街の入口に立ち、そこから見える範囲でしばらくは色々な店を眺めていたあかねであったが、その内その目は数ある店々ではなく…自分より先に繁華街へ行った乱馬と、シャンプーの姿を捜すようになっていた。
しかし、なんせ人がごった返しているこの状況。人が溢れているこの中で、そう簡単にお目当ての二人の姿を見つけることが出来るほど、世の中甘くはない。時にはジャンプをしながら人ごみから二人の姿を見つける努力をしてみるも、やはりそう簡単に上手くはいかない。
ても、何を言っているのか分からない。
それならば、時間もない事だしとりあえずは土産を買いに出た方が利口。
あかねは心残りではあるものの二人の捜索は諦め、買い物を始めるべく気持ちを切り替えた。

「えっと…青い店は…」

…あかねは再び地図に目券落とした。そして向かう店を決めると、人ごみに飛び込む前にまず、地図を広げてみた。
ガイドから渡された、色鮮やかな地図。店の種類ごとに、色分けされているのがここにきて本当に助かる。
「食べ物・雑貨 ・衣服…そうね、まずなびきお姉ちゃんに、痩せる石鹸かなあ」
だとしたら、「青」色の店舗を目指さなくてはならない。

「あ、すみません」
「不在乎」
「あ…あ、はあ」

時折人にぶつかって、一応は日本語で謝りながら、あかねはその人ごみの中を進んでいった。
ぶつかった事を謝ろうにも、何と話したらよいかわからない。 更に、それに対して言葉を返されても、良くわからない。
ようやく人ごみを進み、お目当ての店舗の前に到着したあかねであったが、『小小賓部』…そんな中国語の看板を掲けられた店の中に一人で入るのは、勇気が必要だった。
中に、雑貨が売られている事は分かる。でもよく考えると、あかねは海外で買い物をした事がない。当たり前だ。まともに海外に出た事など一度もないのだから。
先日、自販機で煙草や缶ジュースは購入した。しかし、自販機と対人購買では訳が違う。しかもあの時は、ムースがそれを操作してくれていたのだ。
店の入口から、あかねは店の中を覗き見てみた。店の中には、まばらな人々。その中で、誰が中国人で誰が日本人かなど、もちろん人目では見分ける事は出来そうもなかった。いや、例え見分けられたとしても、見知らぬ日本人に買い物の仕方を尋ねるなど、非常に勇気がいることだ。
「…どうしよう」
こんなことなら、良牙や玄馬と一緒にいるべきだっただろうか。このまま引き返えそうかとそんな事さえ考えたが、でもここで怖気づいていては、いつまでたっても土産など、買うことなどは出来ない。
一向に入ることの出来ない店の前で、あかねは途方にくれてしまっていた。

と、その時だった。
ガシッ…あかねは不意に、地図を握っている手を掴まれた。

「えっ…?」

突如強い力で腕を掴まれ、その予想外のことにあかねは身を震わせる。
手を掴んだ人物を見ると、あかねよりも少し年上の若い男性だった。しかも、その男性の傍には、もう一人いる。どうやらこの繁華街をうろついている青年達が、みるからに観光客、そして見るからに無防備なあかねに目をつけたようだ。二人は、嫌な笑みを浮かべてあかねを見ている。その笑みが何を意味するのか…それは鈍いあかねでも理解できた。
声を出さなくては…とあかねは咄嗟に考えるも、中国語でなんと叫べばそれが悲鳴になるのか、あかねにはわからない。語学に疎い自分を、あかねは酷く恨んだ。
「は、離して!」
とりあえず日本語で叫び、あかねは掴まれた手を必死で振り解こうとするが、青年はその手を離そうとはしない。それどころか、何やらあかねに分からない中国語でもう一人の青年と会話を交わしながら、あかねの手を引いて歩き出そうとする。傍にいたもう一人も、あかねの肩を抱くようにして、あかねが逃げ出そうとするのを阻もうとしていた。
「やめてってば!だ、誰か…!」
あかねは、彼らから逃れようと必死に日本語で叫ぶも、ここは中国だ。それが周囲に早々通じるわけもない。その上、この繁華街の喧騒にあかねの叫ぴ声など、すぐに飲み込まれてしまう。
それをいい事に、青年達は強い力であかねを引っ張り、広い道から脇の路地へと引きずり込もうとしていた。
…薄暗い路地になど引っ張っていかれたら、無事で済むわけがない。そんなこと、子供でなくとも分かる事だった。
「い、嫌!」
引きずられないように…あかねは必死で足を踏ん張るが、それでも男性二人の力は強い。更に、
「痛っ…」
そんなあかねの手を、青年が更に掴む。あまりにも強い力にあかねが顔をしかめると、二人はいよいよ本格的にあかねを路地へと引っ張りはじめた。
「だ、誰か!」
あかねは再び、精一杯の声で助けを求めた。が、無情にもこの異国の土地では、「助けて」という言葉が聞き入れられる事はなかった。
ああ、中国語が解らなければ、英語で叫べばよかったのか。確か「ヘルプ」だと忌み嫌われるから、こういう時は「ファイヤ」と言えって、何かの本で読んだ覚えが…後になってそれに気が付いたあかねであったが、時、既に遅し。あかねは徐々に広い繁華街から路地の方へと引き摺り込まれ様としていた。


RUMIC'S NOVELS LINK

パラレル
糖度2
糖度3
糖度4
糖度5
企画

OTHER CONTENTS

■オリジナル作品(外部サイト)
お仕事情報

THANKS!

TOTAL: HITS(Y:)