【らんま1/2の二次創作小説サイト】| INFORMATION | NOVELS |BOOKMARKS |CONTACTS | HOME |web拍手

3days@

暦の上では、春を迎えていた。
しかしまだ少し肌寒く、早咲きの梅もどことなく申し訳なさそうな態度で小さく花を 咲かせているような、そんなある日。
中国青海省奥地、伝説の修行場・呪泉郷…から少し離れた場所にある、とある海沿いの村にて。

「この風の向きだと、そうだな、日本に出発するのは四日後位がちょうどいいだろうね」
「あいやー、お客さんそれはご親切にどうも」

人民服に身を纏った比較的大柄な中年男性と、 それとは対照的に小柄な老人の間で、そんな会話がなされていた。
小柄な老人はともかく、この人民服の中年男性は、会話をする相手のことを 「お客さん」と呼ぶのが口癖らしく、「おとさん、あのおじいさんとは今さっき出逢ったばかりね。私達のお客さんと違うぞ」 と、傍に立っていた自分の幼い娘にまで注意される始末だ。
「そ、そだたな」
人民服の中年男性は、バツが悪そうに笑って見せると、
「…ということで、お客さん達。日本への出発は、四日後にするよろし」
…と、彼にとっては今度こそ本当の 「お客さん」である、若者達とパンダに笑いかけた。
中年男性に笑いかけられた若者五人とパンダは、この短いやりとりでのその判断にいささか不安げな表情を浮かべつつも、
「世話になったな、ガイドのおっさん」
「本当にありがとうございました」
「この船、ホントに大丈夫だろうな?」
「後四日か…思ったより時間が余ったあるな」
「久しぶりにのんびり出来そうじゃ」
「『やっと帰れる』」
中年男性と、その中年男性とは似ても似つかない可愛らしい容姿をした娘に、礼を述べた。
「とりあえず私は、この船を四日後まで預かってくれるように近 くの村人にお願いしてくるね」
中年男性はそう言って、若者達をその場で待たせ、幼い娘と共にどこかへと行ってしまった。
とりあえずその場に待たされることになった若者達なのだが、
「乱馬!待っている問、私と浜辺でデートするある」
「わっ…こら、離れろシャンプー!」
「乱馬貴様っ!おらのシャンプーを、よくもたぶらかしおったな!」
「『良牙君、これって食べられると思う?』」
「おじさん、それヒトデなんですけど…」
その複雑な人間関係から、決して 「大人しく」その場に留まっていられるわけもなく…あっという間に大半がその場から姿を消した。
そんな中、たった一人だけ。ドタパタと浜辺を駆け回る面々とは少し距離を置き、待てと言われたその場所から見える範囲ではあるが、すぐ傍に転がる大きな岩に腰掛けながら、一人の少女が目の前に広がる海を眺めていた。
…そう。
近隣の村人に日本へ向かう為の船の管理を頼みに行 ったのは、呪泉郷のガイド親子。浜辺を駆け回っているのは、乱馬 ・シャンプー ・ムースで、浜辺でヒトデについて討論をしているのは、良牙とパンダ姿の玄馬。 となれば、必然的にそんな面々から一人離れて海を見ているのは、あかねという事になる。
あかねは、海から時折吹き込まれる強い潮風に髪をなびかせるようにして、海を眺めていた。

そう、それはまさに 「呪泉の水」を賭けた戦いだった。
乱馬達は、自らの変身体質を元通りにするための「水」。 鳳風山の住人にとっては、自分達の生活を守る為の 「水」。その 「水」をお互い守りあう戦いであった。
しかし、シャンプーが洗脳されて連れ去られた事、更に日本にいるはずのあかねまでもが中国に連れてこられた事、そして…乱馬を助ける為に、体内の水分を全て失い 「物言わぬ人形」となったあかねを救う事。やがて乱馬達と鳳風山の住人との戦いは、単なる利益を求めるだけの戦いではなく、もっと大きな戦いへと変化していった。
命を賭けた戦いの結果、呪泉の水もそしてあかねの命も…取り戻す事に成功した。それに加え、激しい戦いのせいで地下水脈に何らかの変化が起こり、呪泉の水を奪わなくとも、鳳嵐山にはそこの住人達が生活できるに充分なほどの水が、湧き出るようになった。
ただその弊害も発生してしまい、なんと呪泉の水が、しばらくの間は浸かれるような状況ではなくなってしまったのだ。
よって、中国、それも念願の呪泉郷にやって来たにも関わらず、乱馬も、その仲間達も…その変身体質を治せずじまいになったのだった。
呪泉の水量が元通りになるのはいつになるのか分からないので、とりあえず乱馬達は、日本へと帰る選択をしたのだが、元々、呪泉郷ガイドの娘 ・プラムの乗ってきた船で中固まで来た乱馬達に加え、強引に中固まで連れ去られてきたあかねとシャンプー。当然のことながら、この面々がパスポートを所持しているわけはない。
正攻法で買えることが出来ない以上は、こうして帰りも行きと同様、一同は船で、日本まで向かう事になったのだった。
その、出発までがあと四日、なのである。

四日後の朝には、あかね達はガイドの用意してくれた船に乗り、 日本ヘと帰ることになるのだ。
ようやく、日本に帰ることが出来る。
大好きな家族や、友人。そして、住み慣れた我が家に帰ることが出来る。
そう思えば心は晴れるはずなのだが…浜辺から海を眺めるあかねの心中は、複雑だった。

乱馬とも、再び出会うことが出来た。
失いかけた命も、再び取り戻した。 四日後には、日本に帰ることができる。
これらの事は全て、あかねには、嬉しい事だらけのはずだった。 しかし、それに対して手離しで喜ぶことが出来るほど、あかねは気分爽快ではない。
寧ろ、あかねの心にはまだ、「すっきりとしないもの」が残っているような気がしていた。
いや、「すっきりとしない」というのは正しい表現ではないかもしれない。
物事全てがすっきりとしないわけでもなく、はっきりしないわけでもない。
でも、「進展しない」。
そう、「進展しない」が正しい表現なのだ。
あかねの心のどこかには、その 「進展しない」出来事が、引っ掛かっていたのだ。
すっきりしないわけでもなく、はっきりしないわけでもなく、でも 「進展しない」とは一体何のことなのか。
その答えは、勿論一つ。それは、あかねと、乱馬との 「仲」だ。

『好きだといわせてくれ!』
呪泉洞での決戦後、呪泉の水を浴びても息をなかなか吹き返せなかったあかねを抱きしめながら、確かに乱馬はそう叫んだ…「ような気がした」。
目を覚ませなかった時に感じたそれは、目を開けた後そのまま彼に抱きしめられていた時も、抱かれていた腕からも彼のそんな想いが伝わってきた…「ような気がした」。
そう、「気がした」のだ。
だから 「気がした」それを、あかねの体調も、事も落ち着いた 後にもう一度乱馬に尋ねようとするも、
「さあな」とか、「そんな事言ってねえ」とか。何度聞いても、明確な答えが返ってこない。
…勿論、あんな出来事があったのだから、『好きだといわせてくれ』という乱馬の思いと、それを受け入れたいあかねの心が通じ合った事ぐらい、鈍いあかねでも流石に気が付く。
あかねがあの時感じたものが、実際に声に出して言った台詞ではなく、「心」の奥から伝わった台詞だとしても…それはそれで納得 が出来る。
乱馬は口ではなんと言おうとも、絶対に心は通じ合っている。ただ、言葉でそれをはっきりと示してもらっていないだけ。
…そう、まさに二人はそんな状況になれたはずだった。
でも、せっかくこんな出来事があったにも関わらず、あれ以来乱馬とゆっくり話す機会が残念ながら持てなかった。
側にいるのに、会話すら交わすことが出来ない。あげく、話をはぐらかされてばかりで…何だか今まで以上に乱馬が遠くなってしまったような気さえも、する。
心が通じ合っているのに、なぜ会話をすることがないのか。
いやもしかして、それはこちらの思い違いで、本当に乱馬が言っていたように「そんなこと言ってない」というのが真実なのか。…
そんな状況が続けば、いくら 「心は通じ合っている」と感じた あかねとて、不安になるのは仕方がなかった。
その不安は、実際こうして四日後には日本に帰ろうとしている この瞬間でさえ、あかねの心を占拠する。
このまま日本に帰ってしまったら、中国に来る前と同じ状態に二人は戻るのではないか。
あかねはそう思えて仕方がないのだ。

言葉が、全てだとは思わない。
でも、あとほんの少しでいい。「お互い心が通じ合った」そして 又寸も通じている」という事 を、確信させてくれる 「何か」が欲しい。

この数日、あかねはずっと、そのことばかりを考えていた。
行ったり来たり、それの繰り返し。とどまる事もなく、そして 行ったきりでもなく。ジワジワと押し寄せたと思ったら、また元通りに戻っていってしまう。
終わりがなく、延々と繰り返される。そう、それは今、あかねがこうして眺めている海の波と一緒だ。この海の波はまるで、自ハ在意の間柄を客観的に表しているかのよう。
穏やかに寄せては返す海の波をぼんやりと眺めながら、あかね はそんな事を一人、考えていた。

と、その時だった。

「残念 乱馬に逃げられてしまた!」
一人ぼんやりと海を眺めていたあかねの横に、そんなことを言いながらシャンプーがやってきて、ドサリ、と腰を降ろした。あかねがシャンプーに対して、苦笑いをしていると、
「あかねは、何をのんびりしているあるか?」
そんなあかねに対し、シャンプーが少しムッとしたような表情を浮かべそう言い捨てた。
「のんびりつて?」
あかねが、首をかしげると、
「日本に帰るまで、あと四日しかないあるぞ?しかも、四日目は もう船に乗り込んでしまう」
「そうだけど…」
「日本に帰ったら、乱馬にちょっかい出してくる右京や小太もいるね。船に乗ってしまったら、船を日本まで運ぶ事に皆、一生懸命ね。と言う事は、乱馬と楽しい思い出を作り楽しく過ごせるのは、四日後に船に乗るまで、今日を含めて正味三日日本に出発するまでの今しかないあるぞ?」
「…」
「ならば私は、それまでに乱馬と思い出を作る為に努力するある。あかねには負けないね」
シャンプーはそんなあかねに対し挑戦的な笑みを浮かべ、そしてあかねを見た。
あかねがそれには答えずに黙っていると、
「…この間の戦いで、私は乱馬とあかね、もう私なんて入り込む隙がないくらい、お互いを思いあっていると。私は見た」
シャンプーは、真っ直ぐにあかねを見つめる。もともと美しい容姿を持つ、シャンプーだ。「捕らえたものは逃さない」…そんな強い思いが垣間見える力強い瞳が、いつも以上にあかねの心をもぐっと捉えて離さない。

「でも、戦いが終わっても二人、ろくに会話も交わさないね。私があかねだったら、乱馬の気持ちが伝わってきたら、すぐに夜這いをかけるある」
「よ、夜這いって…」
「それぐらい、当然ね。乱馬は意外に奥手あるから、私がリードしてなくてはダメある」
シャンプーは、フン、と何故か得意に鼻を鳴らした。
…美人でスタイルも良くて、積極的。そんなシャンプーが本気で色仕掛けをしてせまったりしたら…よほどの事がない限り、どんな男性とて、その手に落ちるのではないか。
あかねは心がざわつくのを隠せない。
「でも、あかねは朝まで起きる気配もないし、乱馬もあかねに夜這いに来る様子もない」
夜中に乱馬が、私とあかねが眠っている部屋に忍び込んできて、あわよくば私とあかねを間違えても良いように…と、私は毎日期 待をしているのだぞ?と、シャンプーは真剣な表情で呟く。
「あ、あんたって…」
あかねが驚く、というより呆れた様子でシャンプーを見ると、
「だから、私はやっぱり乱馬の事、諦めない。この邪魔者のいない三日間で、絶対に乱馬と思い出を作るある!」
「邪魔者って…ムースは?」
「ムースは関係ないね。これは私と乱馬の問題。ムースには最悪、 アヒルにでもなっていてもらうある」
シャンプーはさらりと酷い事を言いのけると、
「さ、私はもう一回乱馬を捜してくるね!」
「あ…ま、待ってよ!まだ話は…」
あかねがそんなシャンプーに慌てて声をかけようとするも、シャンプーは既に走り去った後。
一人、また浜辺に残されてしまったあかねは、大きなため息をついた。
…乱馬の、心の内は分かっている。でも、あんなことがあってもやはり何も変わらない二人。
ここから一歩動き出すには、一体どうすればいいのか?何をすればいいのか。
積極的なシャンプーの存在に焦燥感を覚えつつも、頭の中に具体的解盗用を描き出せないのあかねは、気ばかりが焦ってしまう。
旅立ちの日を抜かせば、あと三日。
「三日間…」
一体、自分は何をする?
まるで異国語で書かれた呪文を呟くかのように。あかねは、再び大きなため息をついた。


RUMIC'S NOVELS LINK

パラレル
糖度2
糖度3
糖度4
糖度5
企画

OTHER CONTENTS

■オリジナル作品(外部サイト)
お仕事情報

THANKS!

TOTAL: HITS(Y:)