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You are, my only shining star

…家族旅行で訪れた、海辺の温泉街。
家族で旅行に来ても、四六時中一緒に行動しているわけでもなく、昼間は皆で観光名所を回っても、夜、晩御飯を食べた後まではその行動を束縛されたりはしない。
お父さんと早乙女のおじ様は、遊戯室で卓球に夢中になっているし、
かすみお姉ちゃんと早乙女のおば様は、売店でお土産を仲良く選んでいる。
なびきお姉ちゃんは、ゲームコーナーで鬼のようにコインを増やして景品をがっつりと稼ぐのに夢中だ。
となれば、必然的にあたしと乱馬が二人きりになるわけで。
そこであたし達は、旅館の裏手にある砂浜へと散歩にやって来た。
シーズンオフの海岸、しかも夜。
人けもないし、これほど寂しいものは無い。
満ち潮の時に沖から運ばれてきた流木とか、整備されていない朽ちたボートとか。
夏に「海の家」でも建っていたらしき建物の跡地に、無造作に置かれている看板とか。
気をつけて歩かないと、それらのものにケ躓いて転びかねないぐらいだ。
唯一の救いは、夜空に浮かんだ黄色い満月。
その月明かりで、足元だけはかろうじて照らしてもらえる。

「転んでもいいぞ。しっかりと抱きとめてやるからな」
「…遠慮するわよ」

わざとあたしを転ばせようとする乱馬の攻撃を避けつつ、あたしは砂に足を取られまいと気をつけながら、砂浜を歩 く。
乱馬に捕まったら、転ばせられる。
そう思って、両手を広げてバランスをとりながら乱馬より一歩前に出て砂浜を歩いていく、あたし。
でもその内、
「よっ…と」
「あ。何よー」
後ろを歩いていた乱馬に両側に広げていた腕をつかまれて。
そしてそのまま、その腕はきゅっと縮められてしまった。
乱馬は片方の手で縮められたあたしの両手首をつかみ、
もう片方の手は腕をにゅっと伸ばしてそのまま、あたしの肩を抱く。
「むー」
あたしがそんな乱馬を腕の中から見あげると、
「捕獲」
乱馬はそんなことを言って、にやりと笑った。
そして、
「波が届かない辺りだったら座ってもいいよな」
…と、濡れたら女の姿になって困るのは自分のクセに勝手にそう呟くと、
サササっと靴で砂を平らにならして、そこにあたしを座らせた。
「引き潮でよかったね」
あたしが、あたしの横に座ろうとしている乱馬にそう声をかけると、
「まあな。満ち潮よりも安心して砂浜には座れるわな」
乱馬はそういって、どす、と砂浜に腰をおろす。

「…」
「…」

…砂浜に腰を下ろしたあたし達は、しばらくは何も会話を交わさずにただ、そこへと座っていた。
耳に入ってくるのは、ザザー…という寄せては返す波の音。
絶えず聞こえるその音は、不思議と心地よいリズムとなってあたし達の耳へと届く。
そして、波が砂浜へと打ち出されるそのたびに、辺りには「潮」の香りが漂う。
ちょっと、鼻にツンとするような独特の香り。
ふう…と胸にいっぱいに吸い込めば、何だか自分の身体も海の中に溶け込んだような錯覚さえ覚える。
あたしは、ふと空を見上げた。
空には、先ほどと同じように雲ひとつかかることなく、満月が浮かんでいた。
そして、白く瞬く幾つもの…星。
空に浮かぶ満月の光は、打ち寄せる波の合間にゆらり、ゆらりと煌いている。
底の見えないような深く、そして暗い闇を照らし出す月の光は、ダークブルーの広い世界へスウっ…と溶け込んでい く。
空から注がれている月の光は辺りを明るく照らすけれど、
一度ダークブルーの闇へと吸い込まれてしまえば、その光を失ってしまう。
闇の中ではきっと、その光を識別する事なんて出来ないような気がする。
でも星だったら…
海の闇へと吸い込まれるほど強い光は出さない。
でも…ちゃんと闇は照らしてくれる。それこそ、きらきらとまばゆい光を放って。
日にちが経てば姿を変えていく月とは違って、
いつもいつも、同じような大きさで。そして、温度が高くなればなるほど白く、瞬く。

「…」
何だかそれって、乱馬みたい。
…あたしはふと、そう思った。
日にちによっては満月になったり三日月になったり。
気持ちもそんな風に波があるわけじゃなくて。
いつも同じ気持ちで、そしてどんどん温度は高まっていく。
「愛しているから殺したい」とか。そんな強烈な愛情表現ではなく、
「好きだ」
そういう真っ直ぐな気持ちで、いつもあたしを包んでくれる所とか。
ふふ、本当に夜空に輝く星みたい。
でも正確にはただの星じゃなくて…
「乱馬って、流れ星みたい」
「…はあ?」
…乱馬が、砂浜にそっと置かれたあたしの手に、自分の手をゆっくりと重ねてきたのを期に、あたしは、今まで考えていた事を、乱馬に話してみた。
すると、
「流れ星じゃあ、一瞬しか目にとまらねえじゃねえか」
乱馬はどうやらそれは不服のようで、むすっとした表情を見せる。
「似たようなもんでしょうが。いつも他の女の子に追いかけられているし」
あたしがそんな乱馬にくすりと笑って見せると、
「似てねえよ。星だって、輝いてみせる人を選ぶんだからな。それに俺はそう簡単には消えねえもん」
乱馬は、妙に自信満々にそう言って、そっとあたしの頬に手を当てた。
あたしは、その手の温かさを感じるように、ゆっくりと目を閉じる。
乱馬は、目を閉じたあたしにゆっくりと唇を重ねた。
長い長い時間をかけて、あたし達はキスをする。
…ああ、本当だ。
こうやって長い間唇を重ねていても、流れ星みたいに消えないね。
唇から伝わってくる乱馬の温度を感じながら、あたしはそんな事を考えていた。




幾千、幾光年の時を経て、夜空に瞬く星のように。
時が経つに連れて、どんどんとその温度も高くなる。
流れ星のようには簡単に目の前には消えないけれど、空が澄んでいないとその輝きは目にする事は出来ない。
たとえばあたしの心が夜の空なら、乱馬はそこに白く輝く大きな星。
幾千もの星のなかから、たった一つだけあたしの心に輝く、大きな星。
You are, my only shining star
願わくば、あたしも乱馬にとってそういう星でありますように。


恥かしくて、こんな事口には出せないけれど…この重なった唇からその気持ちは伝わりますように。
心の中でそっと、あたしはそう願った。


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