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ALL OF ME

乱馬と喧嘩した。


原因は些細な事。今となっては、思い出せない。
でも不思議なもので、喧嘩の原因は思い出せないのに、喧嘩の最中に言われたムカツク言葉だけは鮮明に、覚えている。


「可愛くねえ」
「色気がねえ」
「素直じゃねえ」
・・・

付き合う前も付き合ってからも、言われる文句が変らないって、どうなんだろう。
あまりにもぽんぽんと乱馬の口から出てくるので、


「そんなに気に入らないのなら、あたしとなんて別れればいいのよ!」
「あー、勝手にしろ!」
「勝手にするわよ、ばか!」
「バカとは何だばかとは!」
「バカだからバカって言ったのよ、ばか!ばかばかばかばかばか!」

あたしは乱馬に向かってそう叫んで・・・そう、とりあえず財布だけ持って一人、家の外へと飛び出した。
夕方。夕食前の出来事だった。




「なによ!何よ、何よ、何よ!乱馬のばか!」
・・・絶対にあんな奴、許してやらない!謝ったってもう、許さない!
乱馬なんて大嫌い。
考えるだけでも腹が立つ・・・いや、もう頭の中から全て、乱馬の記憶だけ消し去ってやりたい!
「何よ!」
そんな事を口にしながら勢い良く家を飛び出したあたしは、少し走ってからふと、振り返ってみた。

・・・もちろんだけど、乱馬は追ってこない。


そりゃ、そうだ。
あたしがこうやって乱馬の事を腹に据えかねているんだもの。向うだってあたしに対して同じことを思っているのは必然な訳だし。
となれば、そんなに都合よくあたしのあとなんて追っては来ない事くらい分っているけれど、
でも、今度はそれに対してあたしは、

「何で追ってこないのよ、ばか!」

と、理不尽な怒りも乱馬に対して抱いてしまう。


顔も見たくない、絶対に許さないと乱馬に対して怒っている。
でも、こうやって家を飛び出したあたしを追ってきてくれないのにも、何だか腹が立つ。
支離、滅裂。
収まりきれない怒りを胸に、あたしは自分に向かってそう呟いた。






家を飛び出したあたしは、もう日も暮れて人もまばらになった商店街を歩いていた。
半分くらいのお店はもう店じまいをしているし、普段はスーパーの前に埋め尽くされている自転車も、もう殆どなくなっている。
いつもは気軽に立ち寄る本屋さえも、閉店準備をしているせいか、何となく入りづらい雰囲気だ。
きっとここに乱馬がいたのなら、

「あ、俺、立ち読みする。ちょっと待ててくれよ」
「ええ!?乱馬、もうお店閉めるんじゃないの?」
「かまわねえって」

・・・そんな事を言いながら、本屋の人の堰払いもなんのその、好きな漫画をしっかりと立ち読みして居坐っただろうに。
そう言う時あたしは、乱馬と本屋さんが戦いを繰り広げている隙を見て、こっそりと雑誌を立ち読みしたりして。
何だかんだいって一緒に、時間つぶしをしている。
もちろん今のあたし一人じゃ、そんな事は出来ないけれど。

「な、なによあたしは・・・。乱馬の事なんて今、別に考えなくたって・・・!」
あたしは頭の中に浮かんだ、その乱馬に関する記憶を慌てて打ち消すと、閉店支度をしている本屋を横目に商店街を通り過ぎた。
次に、商店街を歩ききった所にある、ファーストフード店の前で立ち止まった。
とりあえず行くあてもないので、そこに入り飲み物を頼む。
トレーをもってガラガラの二階席へとやって来たあたしは、フロアの真中辺りの席へと座った。
そして、さっそく注文した飲み物を飲もうとストローへ口をつけようとしたあたしだっけれど、
「あ」
その時点になって、ようやく「あること」に気がつく。

・・・あたしが頼んだのは、「メロンソーダ」。
もう高校生だし、しかも甘めのメロンソーダなんて絶対に自分からは頼まない。
以前は、あたし一人で飲み物を頼む時は「アイスティ」か「ウーロン茶」とか・・・比較的味が薄いものだった気がする。
それが急に変ったのは、多分きっと、乱馬のせい。

乱馬と一緒にお店に入ると、乱馬は絶対に甘い炭酸系のジュースを頼む。コーラとかメロンソーダとか。
骨が溶けるぞ、格闘家。
あたしが助言するも、乱馬は一向にお構いなし。
あげく、

「くれ」
「あんた、自分の頼んだでしょ!これはあたしの!」
「いいだろー」

そんな事を言って、あたしの飲んでいる分まで奪っては、飲んでしまう。
もちろん、
あたしはそんな乱馬に文句は言うけれど、元々そうなる事を予測して、乱馬の好きな炭酸系の飲み物を一緒に頼んでいるわけだから、本気で怒るという事はしない。
むしろ、初めから乱馬に挙げるつもりでいるから、そう言う飲み物を頼むようになったのかも。


「・・・」
・・・でも今日は一人なんだから、そんな風に気を使って、乱馬の好きな飲み物なんてあたしが頼む必要ないのに。
普段のクセって、恐ろしい。
あたしは一人、ため息をつく。


あたしは何気なしにそのまま、店内を見回してみた。
時刻が夕食時、ということもあり、店内に客はまばらだった。
大学生くらいのカップルが二組、塾がえりの中学生グループが一つ、煙草を吸いながらなにやら仕事の相談をしているサラリーマンが二人。
それぞれ、離れた場所に座って思い思いに食事や飲食をしていた。
あたしは、ぐるりと一周店内を見回して、そして最後に自分の席を改めて見つめなおす。

正面の、空いたイス。
普段だったら、絶対に埋まっているそのイス・・・こんな風にガラガラの店内だと、その空席がやけに目立つような気がする。



「・・・」
変なの。周りの席もたくさん空いているって言うのに。
何だか今日は、この目の前の空いた席が・・・何だか妙に大きく感じる。
大きな布に、ぽっかりと空いた大きな穴。
それと同じような、感覚。


乱馬と一緒に来るときは、

「あんた、こういう店に合わないわね」
「うるせーな。格闘家だって、ファーストフードに来る時代なんだよ」
「何よそれ」

そんな事を言っては乱馬を茶化して、遊んでいるのに。
周りに誰がいるかなんて気にしないし、空席の数だって全然目に入らないのに。

・・・たった一つ、目の前の席が空席になるだけで、こんなにあたしの目に映る風景は変ってしまうものなんだ。

「・・・」
変なの。
あたしは、ストローをさしたままのメロンソーダのカップを見つめながら、ため息をついた。






それから程なくして、あたしは店を出た。
外はもう完全に日も暮れて、電燈が無くてはすぐそこまでもが見えないほどの、闇があった。
道を通る人もまばらだし、商店街のそばにある公園なんて、気軽に入れないようなオーラが漂っている。

「・・・」
どうしようか。

いきなり友達の家に行くのも何だか気が引けるし、かといって、素直に家に帰る気がしなかった。
でも、寒いし暗いし、どこかで時間を潰さないと・・・危ないし。
「・・・」
だったら…東風先生のところにでも、お邪魔しようかな。
あたしはそんな事を思い、一路、先生のところを目指した。
でもその道々、何だか複雑な思いというかモヤが、あたしの胸に生まれてくる。


昔は何かあったらすぐ先生のところに行って、時間を潰したり遊んだりしていたのに。
今では、本当にどうしようもなくて困った時、最終手段的選択肢で、先生のところが浮かぶ程度。
今日だって、「そうだ、先生のトコに行こう」じゃなくて、「先生の所にでも、お邪魔しようかな・・・」なんて弱気な提案だ。

「・・・」
・・・何でかな。

あたしは、道を行くその足をふと、止めた。
先生の所へつく、ほんの数十メートル手前の所だった。


・・・昔あたしが先生の所へよく行ったり、頼ったりしたのは、たぶんあたしが先生の事を・・・好きだったから。
もちろん、昔から良く知っている人だって安心している部分もあったけれど、それ以上に、先生と一緒にいたくて・・・何だかんだ理由をつけて、先生のところに行っていたんだと思う。
でも今は、違う。
今のあたしは、乱馬の許婚。
乱馬と一緒にいたいし、何かがあれば一番に、乱馬に話したり頼ったりする。
真っ先に顔を見たいと、そう思う相手が乱馬だ。
だから、先生のところへと行く回数が、昔に比べて大分減った。そう思う。
それに、乱馬は・・・ものすごく、ヤキモチを焼く。
あたしがお使いを頼まれて先生のところに行くだけでも、わざわざついて来る。
先生とあたしが、二人きりでいる事自体に気に食わないようで、あまつさえ自分の前で、先生とあたしが楽しそうに話をしようものなら、ものすごく不機嫌そうな顔をする。
乱馬は、あたしが昔東風先生の事を好きだったのを、唯一知っている人物だ。
だからこそ、余計に気にいらないんだと思う。
まあ、あたしだってこれが逆の立場だったら・・・やっぱり嫌だなあって思うもん。


「・・・」
だから。
そんな乱馬の気持ちをあたしもわかるからこそ・・・あたしも、意識的に先生の所へみだりに来るのは避けていたのかもしれない。


・・・でも今日は、乱馬と喧嘩しているわけだし。
そんな風に、乱馬の気持ちなんて考えなくたってあたしにはお構いなし。

「・・・」
そうよ。
乱馬なんて、知らない。あんな酷いことばっかり言う奴の事なんて、あたしが考える事はないんだわ。
・・・
あたしは、自分の中に生まれた戸惑いを振り払うべく、再び歩を進めた。
すぐ側に見える、電信柱。まっすぐに伸びるブロック塀。
すぐそこの角を曲がれば、「小乃接骨院」というたて看板が見える。
この時間ならまだ、門は空いているはずだ。

昔みたいに、先生に色んなこと、聞いてもらおう。
昔みたいに、先生に温かいお茶を入れてもらおう。
昔みたいに、昔みたいに・・・

「・・・」
あたしはそんな事を考えながらずんずんと道を進んでいく。
そして、目当ての角を曲がって、その目に立て看板を捉えた。
予想通り、まだ空いている病院の門。玄関灯もまだ、点いている。
中に、先生はいる。
「・・・」
あたしは、道を歩きつづけた。
そしてその看板の前を通り過ぎ、病院の門を・・・くぐらず、結局そのまま通り過ぎてしまった。

あたしの足は、東風先生の病院の前では止まらない。
止まらないままのその足はひたすら動きつづけ、
とうとうそのまま・・・あれだけ帰りたくないと思っていた家のすぐ側まで、あたしを運んできてしまった。




「・・・」
・・・なんでだろう。
今日は、乱馬の事なんて考えなくたって良いのに。
何故なのか。それは、あたしにも良くわからなかった。
頭と心が、全然対応していない。
頭でいくらそう命じても、体が言う事を聞いてくれない。まさにそんな感じだった。



粋がって家を飛び出したのに、結局どこへ行っても、あたしの頭の中には、乱馬の事ばっかり、浮かんでくる。
あんな奴最低で、忘れたくて大嫌いなのに、
「乱馬だったら」
「もしも乱馬がいれば」
「乱馬も嫌だって思うだろうから」
乱馬、乱馬、乱馬。あたしの頭の中は、そればっかり。


「・・・」
・・・あたしは、乱馬が居なければ何も出来ないわけじゃない。
あたしの中では、別に乱馬が「全て」って訳じゃない。
あたしにもあたしの生活ペースや、考えがちゃんとある。
やりたい事だってあるし、趣味だってたくさんある。
アイツがいなければ生きられないなんて、そんなこと思ったこともないし思いたくも無い。
そんな弱い恋愛だけは、あたしも絶対にしたくない。
でも・・・

「・・・」
あたしは、とうとうたどり着いてしまった家の門の前で立ち止まり、ため息をついた。



と、その時だった。



「・・・おかえり」
「!?」
門の前で立ち止まっているあたしに、誰かが不意に声をかけてきた。
あたしが慌てて顔を上げると・・・それは乱馬だった。

「乱馬・・・」
あたしが乱馬の名前を呼ぶと、

「・・・そろそろ帰ってくるような気がしたから」
乱馬はそう言って、門の前に立っているあたしの元へとやって来た。
そして、

「・・・ったく。手袋もマフラーもしないで飛び出してきやがって」
「えっ・・・あ・・・」
「風邪引いたらどうすんだよ」
乱馬はそう言って、自分の部屋から持ってきたのだろうか・・・大きなドテラをぽふっとあたしの身体へと被せた。
背中に大きく、「早乙女乱馬」と名前の刺繍が入っていた。おば様が昔、乱馬の為にと縫ってくれた奴だ。
さすが、雪山での修行用にとおば様が作ってくださった代物だ。被せられただけでもものすごく、温かい。
いやそれよりも・・・

「・・・」
あたしは改めて、自分の服装を見る。
・・・ファーストフード店に入って飲み物まで(とはいっても冷たいジュースだったけれど)飲んだくせに、
自分の今の格好・・・薄手のセーターにフレアスカートなんていういかにも寒そうな出で立ちに、どうして気がつかなかったのだろう。
それが不思議で、ならない。
そりゃそうだ。財布一つで、そのまま外に飛び出したんだもんね。

「・・・」
それに気がつかないくらいあたしは、別のことで頭が一杯だったの?
あたしがそんな事を考えながらじっと黙っていると、


その黙っているあたしの手を、ドテラの下から、乱馬がきゅっと握った。
あたしがはっと息を飲みながら馬の顔を見ると、

「・・・さっきは、言いすぎた」
ごめん。珍しく乱馬が、あたしに頭を下げた。
その言葉にあたしが驚いていると、

「な、なんだよその顔はっ。悪いと思ったから素直に謝っただけだろ」
乱馬は不服そうに頬を膨らませてあたしを睨んだ。そして、

「・・・お前は?」
「え・・・?」
「お前も、俺に何か言う事は無いのか?」
乱馬はそう言って、自分を見ているあたしの顔を、真剣な表情で見つめた。


「・・・」
ごめんなさい。
きっと今、この言葉をあたしが乱馬に伝えるのが適切なのだと思う。
でも・・・


「あたし・・・」
「ん?」
「あたし・・・」
あたしは謝るよりも前に、何故か別の言葉が自分の口から飛び出した。

本当は胸の内だけに留めておこうとした言葉。
だけど、どうしても謝る前に乱馬に伝えたい。何故かそう思った言葉だった。



「あたし・・・乱馬と喧嘩して、家を飛び出して・・・乱馬の事なんて大嫌いって、思ってたの」
「うん・・・」
「乱馬なんていなくても、あたしには、いようがいまいが関係ないって、思ってたの」
「・・・うん」
「でも・・・道を歩いたりお店に入ったり、東風先生のところに行こうとするだけで、何をするにも、何をしていても、いつもいつも、乱馬の事も一緒に思い出す・・・」
「・・・」
「あたしは別に、乱馬が居ないと何もできない訳じゃないんだよ?あたしにだって色々大切なものはあるし、やりたいことだってある。だから、乱馬があた しの全てなの、って訳じゃないの。でも・・・」


あたしはそこまで言って、深呼吸をした。
そして俯き、小さな声でそのまま呟いた。


「でも・・・乱馬が居ないと、あたし・・・何か調子が出ないって言うか・・・変なの」
「・・・」
「何だか分らないけど、乱馬が居ないとあたし、いつもの自分自体もどんなだったかわからなくなっちゃって・・・」
「・・・」
「あたしの中の『全て』じゃないのに、乱馬はあたしの中には必ず居て、だから、居てくれないとあたし・・・変なの。乱馬の事忘れようとすればするほど、そう思った・・・」
あたしはそう言って、きゅっと唇を軽く噛んだ。
そして最後に、

「・・・ごめんなさい」
俯いたまま、小さな声でそう言った。

「・・・」
乱馬はそう呟いたあたしをしばらく黙ってみていたようだけれどその内、どてらを着てもこもこしているあたしの身体に、掴んでいた手を離して腕を回した。
あたしが驚いてはっと顔を上げると、
「・・・俺も」
乱馬が一言、そう言った。
「俺もって・・・?」
あたしが乱馬の言葉に首をかしげると、
「俺も・・・いつも、強くなりたいって考えているし、ふざけた体質を治したいって思ってるし・・・俺の中をあかねが全て、占めているわけじゃないけど・・・」
「・・・」
「でも、あかねは俺の全てじゃないけど、俺が俺でいる為には絶対に必要な一部分だって、思う」
「乱馬・・・」
「あかねがいないと、何か俺、どっかおかしいんだよな」

多分、一番おかしいのはココ。
乱馬はそう言って、抱きしめていたあたしの胸の部分を、指でつっついた。

「今日も喧嘩して、頭に来て、それで気晴らしに何かしようと思っても・・・何をするにもあかねの事が頭に浮かんできてさ。絶対にあかねが謝るまでは俺からは頭を下げないって思っていたのに、結局さ、こうやって門の前まであかねを迎えに来て、俺から謝っちまった」
「・・・」
「同じこと考えてたんだな」
喧嘩してたくせに、何だかどうしようもねえな、俺たち。乱馬はそう言って、照れくさそうに笑った。


「・・・」
その言葉にあたしは・・・何だか胸が、急に熱くなった。
片方が家を飛び出すくらいの激しい喧嘩をして、頭に来て。それなのに考える事はお互い相手のことばっかりで。
あげく、全く同じことを考えて相手を思っていただなんて・・・


・・・喧嘩していたって事自体がもう、何だか馬鹿馬鹿しく思えるじゃない。

「・・・変よ」
「は?」
「乱馬、変だよ。変。変、変・・・」
あたしは、乱馬の胸にぎゅっと自分の顔を押し付けながらそう呟いた。
何だか、おかしくて恥かしくて、嬉しくて・・・複雑な感情が胸の中を過って涙が込み上げる。
「俺も変だけど、お前も変だろ」
乱馬はそう言って、自分の胸に押し付けているあたしの顔をそっと自分から離した。
そして、少し身を屈めて、ふわり、とあたしの唇に自分の唇を押し付ける。
「な、何よ・・・」
あたしが涙声でぼそっと呟くと、
「仲直りのキスに決まってんだろ」
乱馬はそう言って、もう一度唇を押し付けた。

あたしより背の高い乱馬は、あたしが少し顔を上に向けない限り、結構身を屈めないと、あたしにキスすることは出来ない。
身長差、十五センチ以上。便利な時もあるけれど、不便な時も時にはある。

「・・・もう、さっきの喧嘩はこれで終わりな。仲直りしたんだから」
「うん」
「・・・だから、この次からのキスはちゃんと、少し顔、上げてくれよ」
乱馬はそう言って、もう一度あたしの身体を抱きしめた。
「・・・」
うん。あたしは、その腕の中で黙って一度、頷いた。
そんなあたしの態度に安心したのか、乱馬はぽんぽん、とあたしの頭を軽く叩いた。
そして、

「・・・家の中、入ろ。どてら着てても、寒いだろ」
「うん」

しばらくしてからそう呟いて、あたしの身体から離れた。
あたしは、今度は素直に返事をして、そう呟いた乱馬の腕を自ら取った。

「ったく。こんな冷たい身体しやがって」
「だって・・・」
「こんな寒いのに、メロンソーダなんて飲むからだぞ」
「な、何でそれ・・・!?」
「・・・味がした」
「あ」
「ったく、いつも俺が半分飲んでやってるから、こんなに身体が冷えなくて済むんだぞ」

感謝しろ、感謝。
・・・仲直りしたとたんに、いつものように態度がでかくなる乱馬。あげく、心配性の父親のような言葉を発するも、
「良く言うわよ、勝手に取っちゃうくせに」
あたしも負けず劣らず、応戦。
「生意気なー」
「何よー」
それでも、もちろんお互い本気で罵り合っているわけではないから、そこから喧嘩に発展する事は、もうない。



仲直りまで、数時間。
喧嘩をしていたくせに、相手のことばっかり考えて考えて・・・そして改めて相手の大切さを知ったという、あたし達の妙な喧嘩。
でも、何だか少しだけお互い、大人になれたような気がして・・・ようやく幕を引いたのだった。

 


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