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A

乱馬と、ちゃんと付き合い始めてから三週間、過ぎた。
とはいえ、あたし達の間で表立った変化があったわけではなく、
付き合う前も後も一緒に登下校しているし、帰る家だって一緒。
名前だって、
「乱馬」
「あかね」
・・・出逢った時からお互い呼び捨て、だし。
しいていえば、道を歩いている時に手を、繋ぐようになった。
それぐらいかも、しれない。
まあ、奥手なあたし達にしてみれば、手を繋いで歩くという行為自体が、それなりの変化・それなりの進歩だとは、思うんだけど。
・・・
「ねえ、あかね」
「なあに?」
「どこまでいったの?」
「何が?」
「何がって。だから、乱馬君とよ!」
「どこも行ってないけど・・・中々デートする時間もないし・・・」
「違うでしょ!もう!」
・・・なので。
放課後、居残りで補習をする羽目になった乱馬を一人、別の教室で待っていたあたしは、
同じく彼氏をその教室で待っていた女の子達に呼び止められ、そんな質問をされてもなかなか、ピンと来なかった。
「あかね、あんたねえ・・・何が悲しくて、あたし達があんたのデート先を質問しなくちゃいけないの!」
「え、ち、違うの・・・?」
「当たり前でしょ!あたしが言ってるのは・・・」
あんたと乱馬君が、どこまでしてるのかってこと。その友達は、言った。
「してるって・・・?」
それでも更にあたしが首をかしげていると、
「ああもう!だから、キスとか・・・」
痺れを切らした友達がそう叫んだところで、
「わ!わ!わ、わかったわよ・・・そ、そのこと・・・」
ようやくあたしは、彼女達が言いたい事を理解。ゴホン、とわざとらしい咳払いをすると、
「べ、別にあたしと乱馬はそんなこと・・・」
と、ぼそぼそと呟く。
「そんなこと、じゃないでしょ。付き合っている二人なら大切なことよ。」
「そ、そうだけど・・・。」
「その様子だと、まだ何の進展もなさそうねえ」
あたしのそんな様子に、皆はすぐにそう感づいたみたい。
あたしはぐっと、言葉に詰まる。
「別に、キスとかしたくないわけ無いんでしょ?」
「そ、そりゃ・・・」
「あんまり渋ってると、『ガードが固い』って、メンドクサイ女って思われちゃうよ?」
「し、渋ってなんか無いわよっ。た、ただ・・・」
「ただ、何」
「な、何か照れちゃって・・・」
…そう。
あたしは別に、乱馬とそういうことをしたくないわけじゃ、ない。
ただ、なんていうか・・・手を繋いだだけでも胸がドキドキしてしまうのに、顔なんて近付けられたに日はどうなってしまうか!
考えただけでも、顔が熱くなってくる。
いつも顔を合わせている乱馬、
一緒にロードワークしている乱馬、
あまつさえ同じ家の中で生活している乱馬と、そんなこと・・・
「・・・」
あたしがそんなことを考えて黙っていると、
「・・・でもさ、あかね。あかねがそう言う風に思っていても、乱馬君はそうは行かないかもよ?」
「え?」
「男の子なんだし。あかねくらい可愛い彼女がいれば、ねえ?チャンスは狙ってるんじゃない?」
「ら、乱馬が?」
「高校生の男の子なんて、頭の中はそんなことで一杯よ。」
友人達はそう言って自分達の彼氏のことをさんざんあたしに叩き込むと、
「付き合って三週間でしょ?いい加減キスくらいはさせてあげなさいよ」
・・・最後に一言そう付け加えて、先に帰っていった。
一人残されたあたしは、しばらくの間ぼーっとその場に動かずに突っ立っていたけれど、
ようやく正気に戻って一つ、小さなため息をつく。
『高校生の男の子なんて、頭の中はそんなことで一杯よ』
何だか、友人達の言葉が頭から離れない。
ホント?
それ、ホント?
誰もいないのが分っているし、自分に問いかけたって答えがわからないというのに、あたしはそんなことを、思う。
一般的な男の子はそうなのかもしれない。でも、乱馬もそう?
だって、あの乱馬よ?格闘技の事ばっかり考えてて、長い休みはすぐに修行に出ちゃうし。
それに、もしも乱馬がそう言うことばっかり考えているのなら、もうとっくに・・・
「・・・」
やっぱり何だか、今いちピンと来ない。
・・・さっきも言った通り、あたしは別に乱馬と「ソウイウコト」をしたくないわけじゃ、ない。
何だか照れちゃって、今のあたし達には手を繋ぐだけで充分くらいなんじゃないかって、そう思っているだけ。
そりゃ、照れて照れて仕方がないあたしだって、時々は焦る時だって、ある。
二人きりでいても、手を繋ぐ以上はしない乱馬に、心配になる時だって、ある。
「そんなにあたし、魅力ない?」
そう尋ねたくなる時だって、ある。
「・・・」
でも。だからといって、乱馬にそれを聞いてみるというのも変な話だ。
第一、学校の皆の前では手を繋ぐ姿だってまだ、お披露目していないくらいだというのに。
だからこういうのって、「ガードが固い」って言うのとは違うと思うんだけど・・・
・・・
「・・・きっと、まだ早いのよ」
・・・結局。あたしは勝手にそんな結論を導き出して、それ以上は深く、考える事はしなかった。


それから数十分後。
「いやー、終わった終わった」
「もー。普段から勉強してないから、こんなことになるのよ」
「わりーわりー」
もう辺りも薄暗くなった頃。ようやく居残りを終えた乱馬が、あたしの待つ別教室へとやって来た。
よっぽど色々なことを詰め込まれたのだろうか。何だか微妙に顔が知的に見えるのがおかしい。
「将来格闘家になる人間が、何で数学なんてやらなくちゃいけないんだ」
「格闘家だって、あまりにもお馬鹿さんじゃ困るでしょ。お金の計算できないと、生活できないんだから」
「そんなの、全部オメーに任せるよ」
「修行に行く時とか困るでしょ」
「一緒につれてく」
「もー、減らず口ばっかり」
あたしはげっそりと肩をすぼめている乱馬の額をぴん、と指で弾くと、「じゃあ、帰ろう」と微笑んだ。
「・・・だな。あー、早く帰って体動かしてえな。身体中、あのわけのわからん数式に侵されて溶けそうだ」
乱馬はそんなことをぼやくと、微笑んだあたしに向かってすっと手を差し出した。
「え?」
あたしが首をかしげると、
「え?じゃねえよ。差し出された手は取るものなの」
乱馬はちょっと呆れたような表情でそう言うと、ぼんやりしているあたしの手を取ってそのまま、教室を出た。
「だ、だって・・・」
「だって、何だよ」
「だって、学校じゃ手、繋いだ事なかったじゃない・・・」
・・・そう。
さっきもちょっと触れたけれど、あたしと乱馬はようやく手を繋いで歩くようには、なった。
でもそれは学校出てからの通学路であったり、外にお使いに行く時であったり。
学校や家の中では、そう言う事はまだ、何となくしていない。
だからこんな風に教室から手を繋いで外に出るなんて、あたしにとっては新鮮ではあるけれど、何だか意外で戸惑ってしまったのだ。
そんなあたしに対して乱馬は、
「こんな時間、殆ど人なんていねえだろ」
ビックリするほどさらりとそう言い放つと、普段と変らない様子であたしの手を引き、歩き出す。
「・・・」
普段はお互い人目を気にして、
乱馬なんて学校の中では、何だかそっけないくらいだけど。
今日のようにこうして、皆の前でも手とか繋いで歩ける日が来るの・・・もしかしたらそう遠くないのかもしれないなあ。
・・・乱馬に手を引かれて歩きながら、あたしはそんなことを、思う。
もしそうだったら、ちょっと嬉しいな。
いや、別に公共の面前でべたべたしたいわけじゃないんだけど、
みんなの前でも普通に「恋人」と呼べる関係なんだって、口に出して宣伝して歩かなくても分ってもらえる雰囲気を、二人から醸し出せたらどんなに素敵なんだろう。
「・・・普段もこう出来たらいいのに」
あたしは、道を歩きながら思わずそんなことを呟いた。
すると、
「別に俺は構わないんだけど」
「えっ・・・そ、そうなの?」
乱馬からは意外な答えが返ってきた。あたしが驚いていると、
「でもさ、まだ周りがうるさいだろ。おめーもまだ恥かしそうだし」
「あ、あたしは別に・・・」
「だったら、明日もこうすっかな」
乱馬は意地が悪い顔で笑いながら、そんなことを言う。
「す、すればいいでしょっ・・・」
あたしがカアッと頬を赤らめながら言い返すと、
「・・・でもなー。その様子じゃやめとこうか」
「な、なによっ。人の所為にしてっ・・・」
本当は自分が恥かしいんじゃないのっ・・・あたしがそうぼやくと、
「ふーん。じゃあ、ホントに明日からそうしようかな」
覚悟しとけよ、と乱馬は更に意地悪い顔で笑いながらあたしにそう言いきった。
「・・・あたし、乱馬はそう言うのが嫌いなのかもしれないって、思ってた」
それまで学校の中ではそっけない態度を取られていたあたしが、乱馬のこの態度にそう呟くと、
「嫌いじゃねえよ」
「そう見えないもん」
「まー、ちょっと照れてたりするものあるけど。でも、そろそろいいのかなって」
乱馬はそう言って、笑った。
「・・・」
『そろそろいいのかな』
あたしはその言葉にピクリと反応する。
乱馬にとって、あたしとの付き合い始めたこの三週間でようやく、皆の前で手を繋ぐって所まで考えたってことかしら。
『そろそろいいのかな』ってことは、一応乱馬も、友人達が言っていたみたいに色々と、考えていたんだわ。
でも、やっぱり乱馬は他の男の子とは違うんだ。まずは手を繋いで歩くって事を考えていたみたいだし。それ以上の事は、全然頭にないのかもね。
ほら、やっぱり「キスする」とかそう言うのを考えるのには早かったのよ。
あたし達はきっと、他の人よりのんびり、のんびりペースなのね。
・・・
「・・・」
何だか、ホッとしたような。でもどことなく寂しいような・・・?何だかあたしは複雑な気持ちだったけれど、
でも、皆の前で手を繋いで歩けるのは、何だかとても、嬉しい。
「あのね、あのね・・・さっきね・・・」
「さっきって?俺を待っている時?」
「うん。その時にね・・・」
何だか急に心が弾んだというか嬉しくなったあたしは、さっき教室で友人達と話していた事を乱馬に話してみた。
乱馬はそんなあたしの話をずっと聞いてくれていたけれど、
「・・・って言われたの。普通はそうかもしれないけど、人それぞれなのにね。」
『高校生の男の子なんて、頭の中はそんなことで一杯よ』
でも、あたし達は手を繋ぐくらいで今は満足なのにね・・・そんなことを頭に置きながら、その台詞をあたしが乱馬に話すと、
「・・・ふーん」
それまでは色々と相槌を打ったり言葉を返してくれていた乱馬が、
その言葉を言った途端、何だか興味があるのかないのか分らない反応を返してきた。
「あ、ごめん・・・乱馬に失礼だよね、こんな言い方・・・」
そう言えば、「普通は」なんて言いかたしたら乱馬が普通じゃないみたいで失礼だし、
それに条件に当てはまらない人にも失礼な話だな・・・言ってから気がついたあたしが慌てて謝ると、
「そうじゃねえよ」
乱馬は、言葉少なげにあたしにそう告げた。
でも、「そうじゃねえよ」とは言っているのに、それっきり何だか無口になってしまったような気がする。
自分が普通じゃないって言われた事が、気に食わないのかもしれない。
「ごめんね・・・」
失礼な事を言って、機嫌を悪くさせてしまった。
あたしがしゅん、とした様子で暗い表情をすると、
「だから、そうじゃねえって言ってるだろ」
乱馬は、落ち込んで表情が暗いあたしと繋いでいる手の力を、きゅっと、強くした。
「だって・・・」
あたしもその手を握り返しながらそう呟くと、
「・・・やっぱりばれるもんだなって思って。」
乱馬は一言そう呟いて、ふと立ち止まった。
「え?」
乱馬の言葉に、あたしの胸がドキッと鼓動する。
・・・バレるもんだって?
あたしがその言葉の意図を探ろうとしていると、
「・・・さ、家に入ろうぜ。もうそろそろ飯の準備もできる頃だし。」
「えっ?」
「家、着いただろ?」
乱馬はそう言って、すぐ目の前を指差した。
あたしがハッとその方向を見ると、なんとあたし達が立ち止まったのは、家の門の前だった。
あまりにも夢中で話していたし、それに最後こんな会話を交わしていたから、あたしは全く気が付かなかった。
けど・・・
「乱馬、あの・・・」
ねえ、今のどういう意味?
あたしがそのことを再び問おうとするも、
「あー、腹減った」
「乱馬っ」
「今日は何かなー・・・」
乱馬はあたしの問には答えようとせず、繋いでいた手を優しく解くと一人、先に家の中へと入っていってしまった。
「・・・」
一人門のところに残るあたしは、何だか妙に早くなった胸の鼓動を感じつつ、未だ頭を巡らせる。
・・・バレるもんだって、どういう意味?
ばれるって事は、そう思っていたのが明らかになるって、事でしょう?
話の流れからして、乱馬が「ばれた」って思ったのは・・・
「・・・」
手を繋げた事だけじゃ、もしかして乱馬は、満足していないって事?
あたしにはそれだけでも嬉しそうにして見せているけど、本当はもっと・・・って事なのかな・・・
付き合ってから三週間、手を繋ぐ以上は何も求めてこなかったけど、
それはもしかして、ただ乱馬が我慢していただけって事?
・・・
「・・・」
何だかそんなことを考えている内に、カアっと頭に血が上る。
慌てて自分の顔に手で触れると、驚くほど熱い。
胸も、もしかしたら着ている制服を突き破ってしまうんじゃないかと思う程、激しく鼓動している。
・・・さっきまでは、乱馬とあたしは他の人よりスローペースなのねなんて思っていたけれど、
スローペースなのは、あたしだけなのかもしれない。
「・・・」
乱馬も、普通の男の子なんだ。
そんな事は誰もが知っている当たり前のこと。
それなのに、今まで以上にそれを知ってしまったような気がして、
あたしは真っ赤な顔の熱い温度を下げるように触れながら、小さくため息をついた。




「あら?あかねちゃん、もうご飯いいの?」
「えっ、あ、は、はい・・・」
「具合でも悪いの?お薬飲んだ?」
「あ、だ、大丈夫です・・・」
・・・その日の夕食のメニューは、皆が無難に好きな鳥の唐揚げだった。
でも、さっきのことがあって何だかご飯が喉を通らず、あたしの箸は進まない。
食欲がないあたしを心配した早乙女のおば様が、色々と気遣って声を掛けてくれるけど、あたしはそれを笑顔で交わしながら、お茶を啜っている。
「具合悪いのか。貰うぞ」
「・・・」
具合が良かろうが悪かろうが、人の唐揚げを皿から奪って食べる乱馬は、あたしの様子をさほど心配してはいないかの様子で、
あたしにしてみればその暢気さが、少しだけ恨めしい。半分は乱馬のせいだというのに。
・・・
「今日はお風呂にゆっくり入って、温かくして寝ようね。もし明日も具合悪いようだったら、おばさん一緒に病院に行ってあげるからね」
ああ、それなのに・・・早乙女のおば様の、この菩薩のような笑顔と優しさはなんなのだろう。
もう、本当に乱馬のお母さんとは思えないほどの優しさだ。
「ありがとうございます。そうします」
あたしは心配してくれたおばさまにもう一度御礼を言って、居間を出た。
そして、皆がお風呂に入った後、言われたとおり長風呂に入り身体を温める。
・・・別に風邪を引いているわけでも、本当に具合が悪いわけでもないので薬は飲む必要は無いかなと思っているけれど、
お風呂に長く入るだけで、気持ちがリラックスするというか。
ぐちゃぐちゃした頭を整理するにもちょうどいい。
ブクブクブク・・・とお湯に顔の半分まで浸かって、この三週間の事とか、夕方の乱馬との会話とか、色々と思い浮かべる、あたし。
それにしてはそっけなかった、夕食の時の事とか。
学校でも手とかは繋ぐって約束した割りには、それでもいつもそっけない態度を取られる事とか。
前よりも頻度は少なくなったけど、相変わらずまだ、「色気がねえ」とか「可愛くねえ」とか言われるなあ、とか。
うーん、そう考えると付き合い始める前と後じゃ、本当に手を繋ぐ事ぐらいしか変ってないな、とか。
・・・
別にあたしも、乱馬と色々としたくないって訳じゃなくて、
ほんの少しだけど、何かどこかで期待しているあたしも、体の中の一パーセントくらいはいるわけで。
でも、まだ早いのかなって。
ああでも。早いと思っているのはあたしだけであって、乱馬はもっと・・・
「・・・」
頭の中が、混乱する。
指で、パチャン・・・とお湯を弾いてみた。
もちろんそんなことをしたところで、あたしの頭の中のモヤは消えてくれたりはしないんだけれど。
「・・・」
・・・ふー。何か急に、乱馬の事、意識しちゃいそうだなあ。
あたしはそんなことを思いながら、それからしばらくの間湯船に浸かってはあれこれと考えていた。
おかげで、あたしはお風呂に計一時間半も入っていたことになり、
入り始めた時は夜の十時半だったのに、出てきたときには深夜零時。
うかうかしている内に、日付を越えてしまっていた。
さすがに一時間半もお風呂に入っていると、体が温まるを通り越して、熱い。
このまま蒲団に入って眠る事は出来なさそうなので、あたしは体の温度を下げるべく、涼むにはちょうどいい道場へと、向かった。
ガララ・・・と入口のガラス戸を引くと、フッ・・・とひんやりした空気が、あたしの身体を包み込むように流れ出てくる。
あたしは一瞬ぶるりと身を震わせながら、そのまま中へと入った。
戸についている鍵は・・・一瞬考えたけれど、別に閉める必要は無いかなと、そのままにしておく。
深夜零時だ、別に誰かがやってくることもないだろうし、
逆に薄暗い室内で鍵をかけて篭っている方が、気持ち悪い。
あたしは、ゆっくりと道場の真ん中へと歩き始めた。
裸足の足に、ヒンヤリとした床の感触が伝わってくる。
床に直接座ったら、床の温度が伝わりすぎて腰が冷えすぎてしまうだろうか。
かといって、立ったままでここにいるのも何だかおかしい。
だったら部屋に行って毛布でも持ってこようかしら・・・あたしは、一度部屋に戻ろうと道場の入口へと戻ろうとした。
すると、
ガラっ・・・あたしが入口に戻ろうと振り返ったのと同時に、道場の戸が開いた。
深夜零時だ。一瞬あたしがギョッとした表情をすると、
「寝ないのか?」
そんなあたしの目の前に現れたのは・・・乱馬。
しかも手に、あたしが取りに戻ろうとした毛布を、持っている。
「ど、どうしたの・・・こんな時間に」
「どうしたの、はコッチの台詞だろ。一体いつまで風呂に入ってんだよ」
乱馬はそんなことを言いながら、自分も道場の中へと入り、戸を閉めた。直後、かちゃん、と音がする。
「・・・」
もしかして乱馬今…鍵、閉めた?
「乱馬、今・・・」
あたしがその事を尋ねようとすると、それにわざと被せるようなタイミングで、
「風呂入ったのに、何でこんな寒い所にいるんだよ」
乱馬がそう尋ねる。
「・・・お風呂に長く入りすぎちゃったから、少し涼もうと思って・・・」
何だか話を逸らされたような気もしつつ、あたしが乱馬の質問に答えると、
「・・・毛布、持ってきた」
乱馬が、あたしに毛布を持ち上げて見せるような素振を見せ言った。
「どうしたのよ、この毛布」
「だから・・・具合悪そうだって夕飯の時に話してたから、風呂上がったら様子でも聞こうかと居間で待ってたのに。上がったらそのまま道場に行っちまうから、それじゃ体が冷えすぎるだろうと思って、もって来てやったんじゃねえか」
乱馬はそう言って、あたしに一歩、近づく。
そして、毛布をあたしには渡さず床にふわりと置くと、そっと、頬に触れた。
「っ・・・」
あたしがかあっと頬を赤らめると、
「・・・もう、いいのか?」
「え、な、何が・・・」
「だから。具合、悪かったんだろ?もう大丈夫なのか?」
乱馬はそう言って、大きな手であたしの頬を撫でる。
手のひらだけで、あたしの頬を殆ど覆ってしまう大きな手。
格闘技をやっている男の子だから、指だってごつごつしているのに、手つきだけはビックリするほど優しい。
あたしの真っ赤な頬を、さらに紅く温度を上昇させそうな、温かい手。
こんな風に乱馬に顔を触れられたの、もしかしたら、初めてかも・・・あたしはそんなことを思う。
「あ・・・へ、平気・・・平気・・・」
恥かしい。道場の灯り、ついてなくて良かった。心からそう思った。
顔を触れられているあたしは、かくかくと自分でも震えているのが分った。
触れられている頬に全ての温度を取られてしまったみたいで、何だか床に立っている感覚が、ない。
さっきまで、「手を繋ぐ」とか「キスする」とか・・・そんなことを考えていたくせに、
こんな風に顔を触れられただけで真っ赤になったり震えたりする、あたし。
これじゃやっぱり、キスどころか顔を近付けられるのだって、耐えられそうもない。
もちろんそれは、「嫌だから」と拒絶しているからではなく・・・「恥かしいから」「照れるから」なのだけれど。
・・・でも。
もちろんあたしのそんな思いは、口に出さなければ乱馬には伝わらない。
「顔、熱いな。熱でもあるの?」
乱馬は、あたしの真っ赤に火照っている頬をグッと自分のほうへと近づけると、そのまま自分の額を、あたしの額へとくっつける。
「あっ・・・」
目の前に、いつも見ている乱馬の顔。
でも、こんなに間近で見た事なんてない、乱馬の顔。
ちょん、と小高い鼻の先が触れ合う。くっついた風圧で、洗い立ての前髪がふんわりとなびいた。
乱馬が、すっと目を閉じる。あたしの額の温度を感じようとしているのだろうか?
・・・結構長い睫毛と、割りと整った顔。
ドキドキしてリズムが乱れているあたしの呼吸とは違う穏かな呼吸を、あたしは間近で感じている。
今までは熱があるときは手で、額を触るだけだったのに。
こんな風に、額で触れてくれたことなんて初めてだ。
「・・・」
どうして言いのかわからず、あたしはぎゅっと目を閉じた。
でも、目を閉じても胸の鼓動だけは鮮明にあたしに伝わる。
ちゃんと口を閉じてないと、妙に乱れた呼吸が乱馬に分ってしまう。
収まれ、心臓。戻って、呼吸。必死に自分にそう言い聞かせてみる。
「・・・熱は無いみたいだけど」
と。
その内、乱馬が離れた。
「・・・」
その声に反応して、あたしはぼんやりと目を開けて乱馬を見る。
「熱は無いけど、何か熱いな。そんなに風呂、熱かったのか?」
「・・・」
心配して声をかける乱馬に、あたしは左右に首を振った。
そしてまるで乱馬から逃げるようにしゃがみ、床の毛布を拾うと、
「・・・少し涼んでから部屋に戻る」
そう言って、壁際に寄り毛布をかぶって座り込んだ。
「おい」
頭まですっぽりと毛布をかぶって急に座り込んだあたしに、乱馬がひたひたと近寄ってくる足音が聞こえた。
「ね、熱は無いの・・・ただ熱いだけなのっ」
あたしが毛布の中から小さな声でそう叫ぶと、
「・・・」
乱馬は何も応えず、あたしが頭からかけている毛布をくいっと引っ張った。
そして、強引にその毛布を自分にもかけるようにしながら、あたしの横へと腰掛ける。
「っ・・・」
あたしが驚いてひょっこりと毛布から顔を出すと、
「・・・」
乱馬はあたしの方は見てはいなかったけれど・・・毛布の中に隠れていたあたしの片手をまさぐり、きゅっと、握った。
まるで、『じゃあ、俺もここにいる』・・・言葉には出さずとも、そう言っているかのように。
手を握られた瞬間、自分でも驚くくらいに体が、びくんと跳ね上がった。
手を握られるなんて、毎日手を繋いで歩いているんだから初めてじゃないのに・・・なのに、どうしてこんな体が反応するんだろう。
自分でもよく、分らない。
あたし達の触れ合っている手は、道場のヒンヤリとした床に置かれているけれど、
あたしの胸の鼓動と比例して、手の温度も、冷えるどころか上がっていく。
体の温度だって、一向に冷えてはいかない。
手を繋いで歩く距離と、こうして今、座っている距離。
あたしと乱馬の距離はいつもと一緒のはずなのに、何だかドキドキして落ち着かない。
灯りもつけず薄暗い道場の中、壁に架けられた時計の針が進む音だけが、カチッカチッ・・・と静かに響いている。
言葉も交わさず、ただ手だけ握り合って座っているあたし達。
同じ毛布を二人でかけて、ただ座っているあたし達。
『高校生の男の子なんて、頭の中はそんなことで一杯よ』
・・・その時ふと、あたしの頭の中に例の言葉が、浮かんだ。
乱馬、今何考えてるの?・・・何故だか分らないけど、それを思い浮かべたと同時にあたしは、この台詞を口から出す事が出来ない。
聞いて見たい。でも、聞いて答えが返ってくるのが・・・もしかしたら、怖い。
お風呂の中で色々考えていた事が、一気に頭へと甦ってきた。
普通の人よりスピードが遅いのよ、あたし達。
でも待って?遅いのはあたしだけ・・・?
・・・
あたしがそんなことを考えていると、
「・・・なあ」
不意に、それまで黙っていた乱馬が口を開いた。
「あ、う、うん・・・」
びくん、と一度体を跳ね上げらせ、あたしはそれに応える。
「・・・ビックリした?」
乱馬は、あたしにそう尋ねた。
主語がない、唐突な質問。あたしが何を応えてよいのか迷っていると、
「他の奴らと俺、同じこと考えてるって知った時・・・どう思った?」
乱馬はもっと分りやすく説明しながら、もう一度あたしに尋ねた。
「っ・・・」
ようやく質問の意図がわかったあたしがびくん、と体を跳ね上がらせると、
「・・・汚らわしいって、思った?」
乱馬は、それまで握っていた手にもっと力をこめ、あたしの手を握る。
「そ、そんなこと・・・」
・・・ああ、やっぱり乱馬はそう思ってたんだ。
あたしがそれを確信しながらそう応えると、
「・・・」
乱馬はそれに応えず、ふっとあたしへと目線を移した。
薄暗いけれど、距離が近いから乱馬の表情ははっきり見える。
とっても、真面目な顔。どくん、とあたしの胸が鼓動した。
「・・・手、繋げるようになってすげえ嬉しくって」
「うん・・・」
「最初はそれだけで満足してたけど、でも・・・」
「うん・・・」
「皆の前で手を繋いで歩くのと同じくらい、俺、もっと・・・」
乱馬はそう言って、少しだけ・・・あたしの方へ体をにじり寄らせた。
それまで離れていた距離が近づき、あたし達の肩が触れ合う。
「あっ・・・」
肩が触れ、一瞬乱馬の感触があたしの体を流れて伝わった。
あたしが反射的に体を離そうとすると、それより一瞬早く握られていた手が離れ、
その代りにしっかりとした両腕が、あたしの体を捕らえた。
「・・・」
一瞬、頭の中が真っ白になった。
でも冷静になろうと努力しつつ、自分の置かれている状況を確認する。
・・・背中に、大きな手の感触。体には、毛布とは違う温もり・・・そう、包み込むような。
目の前に、乱馬の髪と首筋と、背中に垂れるお下げ。
ああ、正面からでは見ることが出来ない光景がそこにはあった。
「・・・」
・・・そうか、あたし今、抱きしめられているんだ。
全身を覆う温度と、目に映るそれが、あたしの今の状況を物語っていた。
「・・・」
と。ぎゅうっ・・・と、体に回された腕の力が強くなった。
あたしの体は、乱馬の胸に押し付けられる。
・・・ビックリするほど、広い胸。あたしの柔らかい体が、容赦なくむぎゅっとしなる。
触れ合っているその部分から乱馬の温度と、そして少し早く感じる胸の鼓動を感じるたびに、あたしの胸の鼓動は加速していく。
「・・・」
このままこうして抱かれていたら、もしかして胸の鼓動が暴走して、あたし、どうにかなっちゃうかも・・・
あたしは、ゆっくりと乱馬の胸を手で押し返し、少しだけ距離を取った。
そこで、乱馬の腕があたしからふっと、離れた。
「・・・やっぱ、嫌だよな。ごめん・・・」
その仕草を、あたしに「拒絶された」と思ったのだろうか。
乱馬はあたしに対してそう、謝った。
「ち、違うの・・・」
「え?」
「ちょっとビックリして・・・」
あたしは乱馬にそう応えると、胸の前でぎゅっと自分の手を握り合わせる。
そして、
「あたし・・・あたし達は皆に比べてスローペースなのかなって・・・」
「・・・」
「手を繋ぐだけでも、前に比べてすごい進歩かなって思って・・・でもみんなに言われていろいろ考えちゃって・・・」
「・・・」
「乱馬もきっとあたしと一緒でスローなんだってそれまでは思ってたけど、でも本当は違うのかなって・・・だから・・・」
・・・抱きしめられて、それがはっきりしたから戸惑った。驚いた。
あたしが素直にそう言うと、
「・・・俺もきっと、他の奴らよりはあかねの言う通りスローペースなんだと思う」
「え?」
「俺も、手、繋いでるだけで幸せだと思ってたし。今日だって、学校の中で手を繋げた事が嬉しくてしょうがなかったし」
「乱馬・・・」
「でも・・・それ以上の事を考えているってのも、嘘じゃなくて。その・・・俺も男だし」
乱馬はちょっと困ったように笑いながら、そう言った。
そして、あたしの頬に再び軽く手をあてる。
あたしが再びビクッと身を竦めると、
「・・・こっちも、そろそろいいかなって」
乱馬はそう言って、あたしの頬をそっと撫でた。
その台詞に、胸がドクン、と高鳴った。
・・・「こっちも」ってことは、その・・・
「・・・」
・・・人前で手を繋いで歩くって事では、ないよね。
話の流れからして、「こっち」ってやっぱり・・・
「・・・」
あたしがどう応えてよいか迷っていると、
「・・・だめ、かな。まだ・・・」
あたしを見つめる乱馬の表情が、ふっと動いた。
普段見た事のないような、不安そうな瞳。あたしはそれにはっと息を飲む。
「・・・」
あたしは慌てて首を左右に振って見せた。
「顔、近づくだけでもドキドキするんだもん・・・もっともっと近づいたらどうなっちゃうのかなって、想像が出来なくて」
「あかね・・・」
「・・・だめじゃ、ない」
あたしは小さな声でそう呟いて、今度は頷いて見せた。
そしてそのまま、俯いている。
・・・本当は、まだダメとかもう良いのかなんてよく分らない。
手を繋いだだけでも進歩したって思ったり、嬉しくてしょうがなかったあたし。
でも、心の奥底では、いつも何かを期待していたあたし。
あたし達がそれより先に進むのは、スローペースがゆえにもっと先なのかなって、強引に思い込もうとしていた。
それが、こんなに早くその時がくるなんて思っていなかったから、本当に驚いた。
このままいけば、きっといつかはこういう日が来る事ぐらい、わかっている。
それが、今日なのかそれとももっとずっと先なのか。それだけの事なんだろう。
あとは、あたしの乱馬への気持ちの問題。
乱馬とコウイウコトしていいかって…あたしの中での割り切りの問題。
だったら…
「・・・」
と。
俯いて黙り込んでいるあたしの頬に触れ、乱馬があたしの顔を少し、上に向かせた。
そして、さっきと同じように額を、あたしの額へとくっつける。
「っ・・・」
さっきと同じく、グッと近づいた距離にあたしが小さく息を飲むと、
「・・・」
乱馬が、唇を少し動かして一言呟いた。
殆ど息だけで、何を言っているのか聞き取るのに苦労するほど、小さな声。
きっと側に誰がいたとしても、この乱馬の声は絶対に聞き取る事が出来ないんじゃないかと、思った。
そう、あたし以外は誰も。
・・・
「キス、したい」
今乱馬は、最後の意思確認かあたしにそう呟いた。
あたしは、それに小さく頷いた。それが、あたしの答えだった。
「・・・うん」
乱馬も、小さく頷いた。
何だか、少しだけぎこちない、緊張した空気があたし達の間に流れた。
額をくっつけたまま、目だけお互いを捕らえて離さないあたし達。
ドクン、ドクンとお互いの胸の鼓動だけが、何だかすり合わせている額から伝わってくるような気がした。
その緊張した空間にあたしが耐え切れず、
「乱馬・・・」
その内乱馬の名を呼び、何かを話そうと口を開いたその瞬間、
「しっ・・・」
乱馬が、そんなあたしの唇に指をそっと、くっつけた。
「えっ・・・な、何・・・」
ふわり、としたその感覚にあたしがびくんと身を竦めると、
「・・・夜中だし、鍵はかけたけど」
「ら、らん・・・」
「・・・誰か来たら、嫌だから」
乱馬は小さいけれどはっきりした声でそう呟き、唇に触れていた指をそっと外した。
そしてその代りに自分の唇をぎゅっと、あたしに押し付ける。
・・・指と同じでふんわりしているけど、温かい。
その温かさが、触れ合っている唇を通じてあたしの中へと溶け込んでくる。
ぎゅっと押し付けられて、少し離れて。また強く押し付けられる。
何度も何度も角度を変えて、まるで吸い寄せられるように唇が重なった。
いつの間にか乱馬の腕も、あたしの体にしっかりと回されていて、
あたしの腕も、そんな乱馬の体にしっかりと回っていた。
「ん・・・」
呼吸を奪われるくらい苦しさも時折味わいつつ、それでも唇が離れてくれない。
まるで、キスと言う媚薬でも飲まされたみたいだ。
体にかけていた毛布が、するっと・・・身体の下のほうへとずれていく。
ヒンヤリとした外気の所為で、体は冷えてしまうのか・・・そう思いそうだが、お互いの体に回している腕の所為で、そしてぎゅっと抱き合っている所為で、体が冷える事は無い。
当初あたしはこの道場に、お風呂で熱くなった体を冷やしに来たんじゃなかったっけ・・・?
ふと、そんな言葉が頭を掠める。
・・・深夜の薄暗い道場。
誰にも気付かれないように、乱れた呼吸と弾む鼓動を隠すように、唇を重ねるあたし達。
こんな二人だけの秘密の行為に、初めは顔を近付けるだけで照れていたそんな羞恥心さえもふっ飛んでしまう。
スローペースな二人に一気に拍車がかかってしまうと、こんなことも出来ちゃうんだ・・・あたしは、そんなことを思う。


と。
乱馬の唇があたしから、離れた。
「あ・・・」
急に唇が離れたがゆえに、それまで押し付けられ重なっていた感触が急に愛しくなったあたしが小さく声を洩らすと、
「・・・まずは、ここまで」
乱馬が少し困ったような笑みを浮かべてそう呟き、指であたしの唇に触れた。
何だか、物足りないような。でも、一歩先に進めたその事は嬉しいような。
そんな表情だ。
「・・・うん」
でも。
いくら唇の温もりが愛しくても、初めてキスをした日にそのまま続けて・・・とはいくらあたしでもそれは嫌だ。
まずは、ここまで。今日はここまで。
あたしが小さく頷いて、あたしの唇に触れている乱馬の指をきゅっと指で握ると、
「・・・やじゃない?」
乱馬が、その指を今度は自分の唇へと引き寄せて、触れながらそう尋ねる。
「・・・うん」
キスするまではあれほど戸惑ったり困ったりしていたくせに、今のあたしは驚くくらい、素直だ。
スローペースな二人に一気に拍車がかかってしまうと、やっぱりこんなに変るもの?・・・あたしは自分自身に問い掛ける。
「・・・じゃあさ、これから時々さ」
「うん」
「・・・ここでさ、待ち合わせしようか」
乱馬は、そんなあたしにそんなことを提案してきた。
同じ家の中に住んでいるのに、その敷地内の一角で待ち合わせって言うのも何だか妙な話だ。
でも、壁に耳あり障子に目あり、背後に天道一家あり。
例えあたしの部屋で過ごしたとしても、隣がなびきお姉ちゃんの部屋だし、聞き耳立てられてたらたまらない。
深夜、皆が寝静まった道場なら・・・鍵をかけて静かにしてれば、大丈夫かなあ。
そしたら、これからは今日みたいに・・・
・・・
「・・・」
あたしは、乱馬のその提案に小さく頷いた。
乱馬はぱっと嬉しそうな、でもどことなくほっとしたような表情であたしに微笑むと、
「・・・よかった」
嬉しそうな声でそう呟いた。
あたしはもう一度乱馬に頷いてみせると、こてん、と目の前の乱馬の体に頭をもたげる。
・・・夕方までは手を繋ぐ事だけが精一杯だったのに、あたし、驚くくらいの成長ぶりだ。
やっぱり、スローペースの人間に拍車がかかると恐ろしい。
「・・・」
乱馬はそんなあたしの体を覆い包むようにもう一度ぎゅっと抱きしめると、ずれて床に折り重なっていた毛布を、あたし達の体へとかける。
ふんわりとした、毛布の暖かさ。
でも、乱馬の腕に抱かれている温度のほうが、言いようのないくらい、温かい。
「・・・」
あたしと乱馬は、しばらくの間そのまま、毛布に包まってその夜を過ごしていた。









皆の前で、手を繋いで歩く事。
そして、皆に隠れてキスをすること。
付き合い始めて、三週間。
「そろそろいいかな」
そんな思いを胸に、人より奥手で、スローペース。
そんなあたし達が、それまで以上に一歩、前へと進み始めた日の出来事

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