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髭-ヒゲ-

「ん…」
ある日の朝。
あたしは、目覚し時計よりも先に目を覚ました。
いつもは自分でも分かっているほど眠りも深いのに、
なんとなく今日は体がだるいせいもあって、眠りが浅かったのかもしれない。

そんなあたしの体には、掛け布団とは違う暖かいものが、まとわりついていた。
腰の辺りにしっかりと回された、腕。ずっしりと、重い。
そしてぴったりとくっついては、規則正しい寝息を立てて眠っている。
生暖かく、そして柔らかい。この感触は…乱馬だ。
「…」
あたしは、まだ寝息を立てている乱馬の顔を、腕の中から見上げた。
乱馬はそんなあたしには全く気が付かない様子で、依然として眠りつづけている。
「…」
…いつもなら、乱馬の方が必ず先に目を覚ます。
面白い事に、目覚し時計が鳴る少し前に、自然と目を覚ますようだ。
今はまだ、目覚ましがなる予定の三十分も前。だから乱馬は目を覚まさない。
乱馬は、不思議な事に前日にどんなに疲れようとも、その時間にきっちりと目を覚ますようだ。
「…」
…乱馬の方が疲れているはずなのに、ある種、ものすごい体力だ。
でも、目覚しいらずなのは羨ましいなあ。
「…」
あたしはそんな事を思いながら、腕の中からずっと乱馬の寝顔を見つめていたけれど、
ふとその内、あたしは「あるもの」に気が付いた。


「…」

乱馬の顔の、顎の部分。
なんとなーく、なんとなーく、そしてうっすらと、…
「…ヒ、ゲ?」
そう。
こんなにもゆっくりと、乱馬の顔を朝に見る事は珍しい。
目をこらさないとちゃんとはっきりとは見えないけれど、乱馬の顎の部分。
そこに、うっすらとそしてひっそりと。髭が生えているような気がしたのだ。
「…」
ドキ。
目を凝らさなければ分からない程薄いものだけど、その髭の存在に、あたしは何だかドキドキとする。
…乱馬は元々、そんなに毛深い方ではないと思う。
腕だって体だって、脛だって。別に気になる事はない。
でも、
「…」
こうして改めて間近でみると、何だか胸がドキドキとする。
改めて、乱馬は「男の子」なんだと、実感だ。
「…」
あたしは、乱馬の「うっすらとした少ない髭」を見つめながら思わずそんなことを考える。
へえ…朝って、乱馬にも髭、生えるんだ。
でも、学校に行く時にはこんな髭ないし。
あ、もしかして顔を洗うときに、洗面所で剃ってるのかなあ。

「…」
修行とかで同行しても、家族で旅行に行っても、
そういえば、乱馬と一緒に並んで顔を洗ったりする機会なんてないから、よくは分からないけれど…
「…」
あたしは、そろり、そろりと手を伸ばして、乱馬の顎部分へと指で触れてみた。
チクっ…
思ったより、堅め。
でも何だか程よい堅さというか、何というか…可愛らしい。
「えへへ…」
その程よい指への刺激を感じるように、あたしが何度も何度も、その髭を指でつついたり撫でたりしていると、
「…」
もちろんそんなことをされれば、深く眠っていようとも目を覚ますもの。
「…」
そんなあたしの仕草のせいで、乱馬が、しょぼしょぼと瞬きをさせながら目を開けてしまった。
「あ、ご、ごめん。起こしちゃった…」
あたしが慌てて触れていた指を引っ込めようとすると、
「…なに?」
その指を素早くきゅっと握り締めながら、寝起きの掠れた低い声で乱馬がそう呟いた。
「…」
ドキっ。
聞きなれている声のはずなのに、ちょっと掠れただけでドキッとする。
背中がぞくぞくとするようなその声に、あたしが思わず赤くなって黙り込んでいると、
「…そうか、もー、しょうがねえなあ」
「え?」
「恥ずかしくて言い出せないなんて、でもそういう所が俺も可愛くて好きなんだけど…」
乱馬はあたしに対して、急に嬉しそうな表情をしながらそう言うと、
「もー、朝から疲れちまって、学校で眠くなっても知らねえからな?」
とかなんとか、いきなりそれまで回していた腕の力を強めてあたしをぎゅっと抱き締めると、突然唇に軽くキスをした。
「ち、ち、違うわよっあたしは別にそういうつもりじゃっ…」
その仕草で、ようやく乱馬が何を言いたいか理解したあたしは、慌てて乱馬の胸を押し返すも、
「何がっ」
「何がって、だからっ…べ、別にそういうつもりじゃっ…」



これは、まずい。
かなり、まずい。
あたしの中の第六感が、危険を告げている。



「乱馬、違うからね。あたしは別にそういうつもりじゃ…」
あたしは慌てて乱馬から離れようとするも、
「誘ったくせにっ」
「さ、誘ってなんてないわよっ」
「もう遅いっ。そ、それに俺はもう我慢がっ…」
一体何が「もう」なのかは分からないけれど、乱馬も何だか必死だ。
「ちょ、ちょっと待ってっ。違うのっあのね、あたしは乱馬の髭をっ…」
あたしは事情を説明しようと、のしかかってきた乱馬の身体を押し返し、
「あのねっ…乱馬が髭を剃っている所とか見た事がなかったから、だからどんななのかなって思って…」
と、必死に説明をした。すると、
「髭?ああ、俺は元々毛深くねえからなあ…」
乱馬は一瞬動きを止め、そんなことをぼそっと呟いた。
その様子に、「ああ、あたしの言いたい事が伝わったんだ」とあたしは一瞬安心するも、
「あかね…お前まさか…」
なぜか、急にはっとしたような表情であたしを見た。
な、何が「まさか」なんだろう。
「え、な、なに…?」
危険を告げる第六感が、異常なまでに反応する。
妙な胸騒ぎを感じつつ、あたしが乱馬に尋ねると、
「それはつまり…あれか?」
「え?あれって…?」
「俺と一緒に風呂に入って、色々な仕草や姿を見てみたい、と」
「はあ!?」
「喜んでー!」
どこをどうやったら、そういうポシティブシンキングになるのだろうか。
乱馬はこの上ないような笑顔であたしに抱きつくと、すりすりと、頬擦りをしている。
「な、何考えてんのよー!」
あたしが頬擦りをしている乱馬をべりっと引き剥がすも、
「でもさ、さすがに朝から一緒に風呂に入ってたりしたら、皆も起きちまうしっ」
「あんた、人の話聞いてんの?」
「風呂はさ、今度皆が留守の時にな!?な!?」
…人の話を聞くために、その顔の横に付いている耳は機能するものではないのか?
乱馬は、あたしの話や言い訳を全く聞き入れず、挙げ句の果てに、
「お前の気持ちは嬉しいが、今日はとりあえずこれだけで我慢しろ。なっ?俺、頑張るからっ」
と、
あたしが一切何も頼みしないというのに、妙に張り切り、妙に笑顔で、あたしの上へとのしかかってきたのだった。
「ああああ…・」
こうなるんだったら、思い切ってあの髭、引き抜いてやればよかった!
「…」
今更そんな報復を思いついたところで、もちろん後の祭りだ。
「…」
見える。
あたしの上にのしかかっているこの男に、あたしは耳と尻尾が見える。
日本語なんて、絶対に通じないわ。
「…」
妙に嬉しそうな顔で尻尾を振っているように見える乱馬を見つめつつ、あたしは大きなため息をついて観念したのだった。

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