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罪と罰

俺がその日家に帰ると、まず一番初めに玄関先で、菓子を片手に歩いてきたなびきに、
「あんた一体、何をしたの?」
と、尋ねられた。

「は?」
その言葉の意味が分からず、俺がろくに返事もしないまま家の中へとあがると、

「乱馬」
今度は、居間の入り口でお袋に、
「乱馬、早く謝ってらっしゃい。母さんも一緒に行ってあげようか?」
と、何故か深刻な表情で諭された。

「な、何だよお袋まで…」
やっぱりその言葉の意味が分からず、俺が居間の入り口で立ち止まっていると、

「らーんーまーくーん」
…と、そんな俺の様子を、
あかねのおじさんが、和室のふすまの隙間からまるで妖怪のような雰囲気を醸し出しながら、おどろおどろしく見
ていた。

「な、何だよ、皆してっ…」
いよいよ焦り始めた俺が、その場で喚き始めると、

「あかね、泣きながら帰ってきたのよ」
「へ?」
「あのあかねが、泣きながら帰ってくるのよ?原因は、あんた以外に考えられないでしょうが」
玄関先から菓子をぽりぽりとかじりながら、なびきが戻ってきてそんな事をぼやいたので、

「ちょ、ちょっと待ってくれよ。俺、本当に何も…」
いきなりふって沸いたような話に、俺は嫌な汗をどっと掻いてしまった。
「ホントに?」
なびきも、お袋も(そしてふすまから顔を出しているおじさんも)俺に対して疑いの眼差しを向けているので、
「ほ、本当だって!それに俺は、今まで良牙の野郎と話をしてたんだって…」
俺は、慌ててみんなに、今日の放課後の俺の行動を説明した。

 

…そう。
今日の放課後、
「乱馬!貴様に話がある!」

…と、そんな手紙を俺によこしてからすでに1週間以上経過していた良牙と、偶然に校内で出くわした俺は、
「仕方ねえなあ…じゃあ、あかね、お前先に帰っててくれよ」
手紙に書いてあったのは、「あかりちゃんとの仲についての相談」だった。
だったら男同士の方が良かろう…と、
また良牙が迷子になってしまわないうちに、俺は良牙を学校の屋上へと連れて行き、そこで話し込んでいたのだ。
その時あかねは、
「男同士がいいの?それじゃしょうがないわね」
と、俺が言った通り、素直に家に帰ったはずだった。
教室を出るときも、全く普通の様子だった。

「本当にそれだけ?」
「そ、そうだよ」
「じゃあ、何であかねが泣いてんのよ?」
「し、知らねえよっ」
「とにかく。とりあえず、何でもいいからあんた、謝ってきなさい。そしたらきっと、解決するわよ」
「何で俺が…」
「…」
「…はい」
…俺は、家族の刺すような冷たい視線に背中を押され、意味も分からず「謝る」べく、あかねの部屋へと向かっ
た。

 

 

「おい、あかね」
ったく。なんで俺が悪くも無いのに謝んなくちゃいけね−んだ?
…俺が、内心ではぶつくさとぼやきながら、ノックもせずにあかねの部屋へと入ると、

「ふっ…えっく…えく…」
そんな泣き声が、俺の耳へと飛び込んできた。

夕方だというのに灯りもつけず、そしてカーテンで締め切られた薄暗い部屋。
その中に、あかねのそんな泣き声だけが響いていた。

「おい…どうした?」
先程から家族に、あれだけ「あかねが泣いている」と言われていたのにも関わらず、
そして、「理由もわからず謝るなんて納得できない」と、あれだけぶつくさと呟いていたにも関わらず、
「おい…あかね」
…実際にこうして、あかねが泣いている場面に遭遇すると、俺の胸は急激に…締め付けられる。
「なあ、どうしたんだ?…」
俺がそんなあかねに、慌てて近づこうと歩み寄ると、

「近づいてこないで!」
あかねはそんな俺に、ぴしゃりと冷たい声でそう言い放った。

「な、何でだよ」
その声があまりにも「刺す」ような鋭さを帯びていたので俺が怯むと、

「…乱馬となんて、話したくない…」
あかねは、俺に背を向けたまま、涙声で呟いた。

「…何で?」
それでも俺が1歩、また1歩とあかねに近づきながら尋ねると、
「…乱馬なんて、もう嫌いっ…」
あかねは俺の方を振り返らずにそう呟くと、また激しく堰を切ったように泣き出した。
「…」
俺は、そんなあかねを見つめてただただ、戸惑うばかりだった。

…意味も分からず泣かれている事も胸が痛いが、あかねの呟いた「嫌い」という言葉に対し、俺の胸は酷く動揺する

どうして。
どうして、あかねが呟く「嫌い」という言葉には、こうも力があるんだろうか。
「言霊」
まさに、それが込められているような気がした。
ふざけて言ったのではなく、こうして泣きながら呟くあかねのその言葉に、俺の胸は急激にぎゅっ…と締め付けら
れる。

「…何で?」
ちくり、と胸をついた痛みは、じわりじわりと身体中へと染み渡った。
理由を問おうとする俺の言葉さえも、いまやその痛みは遮ろうとしている。

「…嘘つきだから」
と。そんな俺に、あかねがポツン、と呟いた。

「何だよ、嘘つきって」
俺が、小刻みに震えているあかねの傍までようやく近づき、そしてゆっくりとその身体に腕を回して抱きしめなが
ら問い返すと、
「あたしの事、好きだって言ってたくせに」
あかねはそう言って、また涙を流した。
その涙の粒が、あかねの身体を抱きしめた俺の腕へとポツン、と落ちる。

「…好きだよ」
俺が、そんなあかねを抱きしめる力を更に強くしながらそう答えると、

「嘘つき」
「だから何でそれが嘘なんだよ?」
「…心変わりしてたくせにっ…何で、何でそれなら早く言わないのよっ」
「はあ?」
「あたしがこんなに好きになっちゃったの知ってて、二股かけてたくせにっ…ずるいよ、乱馬は…」
あかねはそう言って、俺の腕を振り切って再び激しく泣き始めた。

「ちょ、ちょっと待て!何で俺が二股なんてかけなきゃいけね−んだよ!」
全く心当たりのないことを一方的に言われ、俺が少し掠れたような声で叫ぶと、
あかねは、そんな俺のほうをようやくゆっくりと、振り返った。

…もう大分長く泣いているせいで、真っ赤に腫れ上がった目と、涙が零れ落ちているせいで、きらりと濡れ光る
頬。
そして、小さく震えている唇。
思い詰めたような表情もそれに加えれば、そんなあかねの姿は嫌というほど、俺の目に焼きつく。

「…」
…本来ならば、いわれの無い事、身に覚えの無い事で喧嘩になるのは嫌なので、
「訳のわかんねえ事言うなよ。そんなわけねーだろが」
と、一蹴してしばらく放置しておきたい所だ。
けれど、
こんな顔をして、こんな風に泣いていて、そして震えているあかねを…俺が放って置けるはずなど、あるわけが無
かった。

「二股なんて、かけてるわけねえだろ!何で急にそんなこと思うんだよ」
俺は、そんなあかねの身体を再び抱きしめながらそう呟いた。
「…」
あかねは、そんな俺の身体をゆっくりと押し返した。
そして、
「…聞いちゃったんだもん」
と、俺の顔を見ず、俯いたままであかねがそう呟いた。

「聞いたって?」
何をだ、と俺があかねの顔を自分の方へ向けさせるように頬に触れると、
「良牙君と話してたじゃないっ…」
あかねは首を左右に振りながら俺のその手を振り払うと、再び俺の腕から逃れ、背をむけた。
「良牙との話?おまえ、まさか屋上での話を盗み聞きしてたのか?」
俺が、「物好きだな」とあかねに問うと、
「男同士の話とか言うから、気になったんだもん…そしたら…」
あかねはそう言って、再び肩を震わせて泣き始めた。
「そしたら、何だよ」
「そしたら…良牙君と乱馬が…」
あかねは、そう言って大きく深呼吸をした。
そして、それでも上手く話すことは出来ないようだけれど、必死で自分が聞いた話を俺に伝えようとした。

「…好きなんでしょ?あかりさんの事」
「良牙がな」
「違うわよ!乱馬だって…好きなんでしょ?!あたし知ってるもん!」
「はあ!?何でだよ!何でそうなるんだよっ」
「だって、言ってたじゃない!俺もお前も、同じ女が好きだって!良牙君も、その人の事好きで、それで乱馬とラ
イバルだったって…良牙君も好きな人っていったら…あかりさんしかいないじゃない!」
「はあ?」
俺は、あかねのその言葉にしばらくはぽかん、と口を開いてしまったが、
「…あのなあ」
…なんと言って説明したらいいのだろうか。すこし頭を抑えながら、俺はまずため息をついた。

 

今日の放課後、屋上で。
確かに俺は、良牙とあかりちゃんの話をしていた。
内容としては、「あかりちゃんの誕生日にデートに誘うつもりだけれど女の子はどんな場所へ誘われるのが嬉しい
か」と、そんなの本でも買って調べろ、とでも言いたいような内容だったが、俺はそんな良牙に、
「そうだな…」
と、俺があかねを誘って喜んでくれた場所の話を、丁寧にしてやった。
もちろん、ずっとそんな話ばっかりしていたわけじゃなく、確かにあかねが言ったように途中、「俺もお前も、同
じ女が好きだったんだよな…」とそんな昔話にも花を咲かせたりした。
でもそれは…あかりちゃんのことではなく、他ならぬ、そう、あかねの事だ。
良牙の奴、今はあかりちゃんと「お付き合い」をしているけれど、昔はあかねの事を本気で好きだった。
勿論俺は、大分前からあかねの事を好きだったし、それで、「同じ女を好きだった」と話をした訳だ。
…どうやら、それが裏目に出てしまったようだ。

さてさて。
これは一体どうやって説明したらよいのか。
「あれはお前の事だ」というのは簡単だけれど、それでは、「良牙があかねの事を好きだ」というのをばらしてし
まう事になる。

「あれはあかりちゃんの事じゃないし、それに俺は二股なんてかけてねえよ」
とりあえず、俺があかねにそういうも、
「嘘つきっ…」
あかねは、そんな俺の言葉など取り付く島も無い。

「あかね、あのな?」
俺がそんなあかねに優しく諭そうとするも、

「…あたしに気持ちが無いくせに、優しくなんてしないでよ」
あかねは小さな声でそう呟き、耳をふさいでしまった。

「…」
俺は、そんなあかねに大きくため息をついてみせると、耳をふさいだあかねの身体ごと軽がると抱き上げて、ベッドの上へとドサッと寝かせた。

「やっ…!やだ!今日はやだ!」
不意に身体を抱き上げられた事にも驚いたようだが、ベッドに身体を運ばれた事に抵抗を示したあかねは、
そのまま覆い被さった俺の身体を全力で突き飛ばしてきた。
俺は、そんなあかねの暴れる手や足を上手く押さえ込むと、

「じゃあ、俺の話ちゃんと聞くか?」
そう言って、今にも泣きそうな顔で睨んでいるあかねをじっと見た。
あかねは、そんな俺からふいっと顔をそむけた。

「話、聞かないのか。じゃあ、このまま続けるぞ」
俺はそんなあかねの手や足を押さえ込んだまま、顔を思いっきり近付けて耳元で囁いた。
「やだっ…」
耳に息が掛かってくすぐったいのか、あかねがビクン、と身をよじる。
「だって、話聴いてくれないんだろ?」
俺がそんなあかねにそう囁くと、
「わかったっ…分かったから、今日はやだっ…」
あかねはそう言って、首を左右に振ってみせた。

俺は、抑えていたあかねの手足の束縛を解いてやった。
あかねはすぐにベッドから起き上がり、俺に背を向けて座った。
俺はそんなあかねの背中にゆっくりと抱きつくと、

「俺は、二股なんてかけてねえよ」
そんなあかねに言い聞かせるように呟いた。
「…」
あかねは、そんな俺の呟きに首を左右に振った。

「あれはな…そう、シロクロの事だ」
それでもガンコなあかねに、俺は、イチカバチかの苦しい嘘を、あかねについた。

…そう。俺と良牙が共通で「好き」な女といったら。
あかねじゃなければ、コイツしかない。
咄嗟に思いついた事だった。

「し…シロクロ?」
…さすがに、まさかここで良牙の飼い犬「響シロクロ(メス・四歳)」が出てくるとは思わなかったのか、あかね
はきょとんとした顔をしていた。

「俺も良牙も、シロクロの事、すげえ好きだったんだよ。あれだって犬とはいえ、一応『女』だろ?」
「そ、そうだけど…」
「昔っからシロクロの事は知ってたし。俺は動物なんて飼った事無かったし…可愛くって仕方なかったんだ。良牙
は今でもシロクロをすげえ可愛がってるけど、俺は最近シロクロの事は見かけねえ分、昔ほど好きだとは思ってな
いくて…」
「信じられない、そんなの」
もちろん、あかねはそんな話を全て鵜呑みにしようとはしなかったが、

「じゃあ、俺と良牙が共通で好きだった女なんて、本気でほかにいたと思うか?」
俺は、そんな怪しさを感じさせまいとあかねにぐっと詰め寄る。

「…あかりさんは…」
あかねはなおもまだそう呟くので、

「本気でそう思ってんのか?そんなに俺が、おまえとあかりちゃんを二股かけて好きだったって…思ってんの?」
俺は、少し低い声で真剣に、あかねにそう説いた。

「…」
するとあかねは、顔を俯かせたまま、首を左右にゆっくりと振った。

「…だろ?だから、もうそんな妙な勘違いして一人で泣くな。な?」
俺が、あかねの頭を抱えるようにしてそう囁くと、

「ホントに、シロクロ?…」
あかねは、泣きはらした顔で俺の顔を見上げながら、おずおずとした口調でそう呟いた。

「ホントだよ」
ホントはお前の事だけど…とは口が裂けてもいえないので、そこはぐっと堪えた俺。

「ホントにホント?」
「ホントにホントだ」
「ホントにシロクロの事好きだったの?」
「そうだよ。でも今はあかねの方がいいや」
俺は、泣きはらした顔をして尋ねてくるあかねの頬に軽くキスをした。

「…犬より好きって言われてもあんまり嬉しくない…」
あかねは、そんな俺にボソッと不服を申し立ててきた。
減らず口をたたくようになった所を見ると、どうやら俺のとっさの嘘を信じてくれたようだ。
単純な奴でよかった。俺は内心ホッとしつつ、

「…ったく。ちゃんと俺に確認もしないで一人で勝手に泣いて」
「ごめん…」
「しかも、俺が二股かけた、とか。濡れ衣まで着せやがって。完全な冤罪だな」
ようやく少し元気になったあかねの額に、自分の額をぶつけてやった。

「だって…まさかシロクロの事を話してるだなんて思わないもん」
あかねが、ゴチ、とぶつけられたその痛みに顔を少ししかめながらそう呟くので、

「俺の事を疑った挙げ句に、”二股かけた”って濡れ衣まで着せた罪は重いぜ?」
俺はそう言って、一度あかねの身体を自分からはがし、そしてゆっくりとベッドに寝かせた。

「…だって」
今度は先程みたいに「嫌だ」と拒まないにしろ、
尚もあかねが言い訳を言おうとするので、

「言い訳は、認めません。俺に濡れ衣をかけて困らせたあかねは、有罪決定」
俺はそう言って、横たわっているあかねに覆い被さった。

「何よ、有罪って」
一応は、そんな俺の身体を押し返しつつあかねがそんな事を言うので、

「だから。俺にあらぬ疑いを持った罪」
「なにそれ」
「しかも、有罪決定したって事は…刑も受けなくちゃいけねえんだぞ」
「刑?どんなよ」
「そうだなー…」
俺は、ほおを膨らませて俺を見ているあかねのその頬をそっと撫でながら少し考え、そして言った。

 

「男同士の話」って言ったのにも関わらず、勝手に盗み聞き。
更に、俺が「あかりちゃんとあかねを二股かけている」と勝手に思い込んで泣き出した。
家族にも心配かけて、俺にも迷惑をかけた。
そして何より…俺の事を「嫌い」と言って、俺の心を苦しくさせた事。
それが、今日のお前の一番の大罪だな。
よって。

「主文。天道あかね」
「ん」

 

汝、俺が決めたルールと罰則に従ってもらうものとして…本日、「溺愛」の刑に処す。


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