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打算計算、数の内

「ねえ、あかね。これなんてあかねに似合いそうじゃない?」

とある日曜日の午後。
珍しく一緒に出掛けた先で、通りがかった店のショーウインドウに飾られている『あるもの』を指さしながら、なびきお姉ちゃんがそう言った。

ショーウインドウに飾られていたのは、某若者に人気のメーカーの、ピンクのナイトウェア。
昔風に言えば、ネグリジェというやつだ。
向こう側まで透けている、ピンクでヒラヒラの生地。
胸元もV字に際どく切り込んでいて、覗きこまなくても胸の谷間がはっきりと見えることは、間違いない。
飾られている値段をみると、セール品現品一点限りで五千円。七割引きだそうだ。

「あかね、買ったら?」
なびきお姉ちゃんはそう言って、ウインドーの中のナイトウェアを指差している。

「買ってどうするのよ」
経済的に余裕がないわけではないけれど、でも買ったところで使い道もなさそうだ。あたしがそう思いながら答えると、

「乱馬君の前で着てあげたらいいじゃない。喜ぶわよー?変態だし」
なびきお姉ちゃんは、悪びれもせずそう言って退けた。

「よ、喜ぶわけないじゃないっ。…って、それより何、その変態だしって」
「乱馬君、こんなのあかねが着てたらさ、喜んで脱がしにかかりそうじゃないの」
「なっ…」
「乱馬君、すぐに発情するからねえ」

なびきお姉ちゃんは、妙に真面目な顔でそんな事を呟いている。
まるで、あたしと乱馬の普段のやり取りを知っているが如く、うんうん、と一人頷いている。

「…」
妹の彼氏を、ここまで言う義姉というのは世界中を捜してもお姉ちゃんくらいしかいないだろう。
だいたい『発情』って。お姉ちゃんの中では、乱馬はすっかり「動物」扱いなのかもしれない。
でも、あながち否定しきれないのが悲しいところ。あたしがそんな事を思いながら黙り込んでいると、

「そうだあかね、あれ、あたしが買ってあげるわ」
ふと、なびきお姉ちゃんがそんなことを言い出した。

「え!?買ってあげるって…あれ、五千円だよ!?」
なびきお姉ちゃんが、あたしと乱馬の為に五千円も投資をするなんて…とあたしが驚いていると、

「いいのよ、投資って言うのは、その先の利益を見込んでするものだから」
お姉ちゃんはにっこりと微笑みながらそう言って、
「すみませーん、あのショーウィンドウにあるナイトウェアなんですけど…」
と、あたしの答えを聞く間もなく店の中へと入っていってしまった。

「…」
先の利益を見込んでする投資って、何の事だろう?
五千円以上の利益って、どういうこと?

…なびきお姉ちゃんの考えている事は全くわからないのだけれど、
こうしてあたしは、「ピンクでスケスケ」のナイトウェアを、お姉ちゃんから送られる事になった。
そして。

 

「ねえ、乱馬。あたし、ナイトウェア貰ったんだけど…」
その日の夜。
夕食後に、勝手に人の部屋に来てはくつろいでいる乱馬に、あたしはそう話し掛けた。
すると、

「俺は着ねえぞ」
…なぜか乱馬はそんなことをぼやいた。

何が悲しくて、自分の彼氏にあんなスケスケのナイトウェアを着せなくてはいけないんだろう。
たとえ、乱馬が女の子に変身するからとはいえ、あたしだって別にらんまのそんな姿を見たいわけでもない。

「誰も、あんたに着せるなんて言ってないでしょうが。あたしが着るために、って、お姉ちゃんが買ってくれたのよ」
「なーんだ」
「着るのはあたし。でもねー…」

ちょっと薄手なのよね。あたしがそんな事をつぶやくと、

「ふーん」
…もっと何か反応するのかな。そう思っていたあたしの予想を反し、乱馬は、何だか興味がなさそうにそう呟く。
お姉ちゃんが言っていたみたいに、乱馬は特に喜んだりはしていないみたいだ。
それどころか、興味なさそうにふああ…とあくびなんてしている始末だ。
あたしはあまりの乱馬のそっけなさに、少し肩透かしを喰らったような印象を受けた。

この様子からすると、乱馬の奴…あたしが何を着ようがどんな格好をしようが、興味はないんだろうか。
大いに興味をもたれるのもどうかとは思うけれど、全く興味をもたれないのは、それはそれで寂しい。
「…」
乱馬、そんなに興味ないのかな…あたしがそんな事を思ってじっと乱馬を見つめていると、

「…どうせすぐ脱がされるのに、ナイトウェアなんて着るだけ無駄なのに」
…そんなあたしに向かって、乱馬がボソッとそう呟いた。

…今、なんて言った?

「…」
あたしの聞き間違い?いや、聞き間違いであってくれ。あたしがそんな事を思いながら、ごくり、と唾を飲み込むと、

「とりあえず、着てみろよ。な?せっかくなびきが買ってくれたんだろ?俺、見てやるよ」
乱馬は再び先ほどの言葉を言う事はなかったが、妙に笑顔、そして妙に親切に、あたしにそのナイトウェアの着用を勧めてきた。

一見親切で優しそうなこの笑顔、しかし何故だろう。床に映る乱馬の影に、あたしは見える。
狼の尻尾をパタパタと振りながら、てぐすね引いている乱馬のもう一つの姿が、はっきりと見える。

「…」
お姉ちゃんに買ってもらったあのナイトウェア…あたしは何秒、着ていられるかしら。
何故だろう、背中に妙な汗をあたしは掻いている。

「…見たいの?」
あたしが笑顔の乱馬に尋ねると、
「うん」
乱馬は間髪いれずにそう答えた。ソワソワしているその姿は、もうどうにも止める事は出来なさそうな勢いだ。

だめだ、こりゃ。
観念したあたしは、ため息をつきながらそのナイトウェアに腕を通し、乱馬にその姿を披露したが、
やはり予想通り、

「きゃー!」
…十秒もしないうちに、そのナイトウェアはするっと脱がされてしまった。
ぽいっと投げ捨てられたナイトウェアは、ちゃっかりとベッドから遠い場所へと落ちている。
「見てやるよ」なんて言っていた割りには、全然見てはくれなかった乱馬。
彼の目にはナイトウェアよりも、ナイトウェアの奥に見えるあたしの身体しか映っていなかったのかもしれない。
「…」
裸の王様じゃないんだから。あたしは、嬉しそうに抱きついている乱馬に、ため息をついた。

 

 

一方。
「そろそろ始まる頃かしら?」
じゃあ、小一時間ばかり、居間にでも行くか。
あたしの隣の部屋では、なびきお姉ちゃんがそんな事を言いながら、座っていた椅子から立ち上がったようだった。
その手には、ポラロイドカメラがしっかりと握られている。

「あのナイトウェアは五千円だけど、アレにまつわる写真が取れれば、まあ間違いなく九能ちゃんには一万円で売れるわね。
乱馬君に素敵なメモリーとして売りつければ、もっと高値かしら?あかねの写真を他の人に売りつけるって言ったら絶対にお金だしそうだし」
うん、充分元が取れるわ。

天道なびき、十七歳。乙女心は全くなし。

利益を確信したなびきお姉ちゃんは、数枚だけ隣の部屋の写真をパシャパシャと撮った後、
「それじゃあ二人とも、ごゆっくり」
鼻歌交じりにそう呟いて、トントントトン…とリズミカルに階段を降りていったようだった。


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